「アジアの熱気と異国感が相まって熟成された一作」ただ悪より救いたまえ マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
アジアの熱気と異国感が相まって熟成された一作
本作は予想外のことが重なって上手くストーリーがかみ合うようなストーリーラインだったと思う。行き当たりばったりの偶然が重なっていく先々で化学反応が起こりそれが面白く作用している。うまくいっているようで随所随所でハプニングが起こり全編にわたる追いかけっこがとにかく面白い。
またキャラ立てが良く、みんないいキャラで味が出てる。主人公はスーツの似合う孤独な殺し屋で、日本で活動しているから日本語もちゃんと話せる。見る前は韓国が中心なのかなとは思ったが、撮影はちゃんと日本でしている感じで、思った以上に日本の街並みが多く出てきてそこはとても意外だった。ちゃんと日本語も話すしそこはとても興味深い。一般の人から見れば気さくなおじさんといったように見えてとても良い。
自分の兄を殺されたことでとにかく追跡するレイはとにかく素性からしてやばい奴オーラがプンプンしている。行く先々で人を殺しまくる姿はノーカントリーのシガーを彷彿とさせ、その巧みなナイフさばきでたくさんの人間を切り伏せる姿はとても秀逸な演出だったと思う。
ひょんなことから主人公を助けるニューハーフの子は本当に巻き込まれるのが嫌だと伝わるし可哀想なキャラなのだが、彼女がいなかったら主人公はここで死んでいるだろうなと思えるくらいなくてはならないキャラで、「しょうがないなあ~・・・」といいつつ決して見捨てないところが本当に好き。自分の娘だが面識はない。でもそんな女の子を何としてでも逃がそうとする話は少し役は違うが「レオン」のジャンレノとナタリーポートマンの関係性(最後の車での手りゅう弾はレノと悪徳警官のゲイリーオールドマンだなあ)や「新感染」の主人公の父と娘を思い出す。
韓国映画特有のバイオレンスの荒々しさ、肉を断ち切るときの切断する悲鳴、アジアを舞台に臓器売買、子供を売り買いする闇の深さがバンコクの熱気と相まって画面から匂ってくるようで思わず目を覆いたくなるがそこにある現実も同時に浮彫しているので思ったよりも踏み込んだ作品なのだなと思った。