「心、共に踊る」名付けようのない踊り 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
心、共に踊る
あの朱色なハイエースは、尖った時代の生き証人を物語るに相応しい。見えない謎に包まれていた、いや、深く理解が出来ていなかった私にとって、田中泯の生き方の正体をやっと知り得た作品となる。“言葉より先に踊りがあった”ー。印象的な言葉の数々は、森羅万象の連なりを言い当てている様で、自由な時の流れを生み出し、場内を包んでいた。生立ちと出立ちとは静かに物語る。畑仕事で作られた身体を利用し踊るという考え方は、物事の前後が如何に矛盾に満ちているかも体現しているのだ。新しい発想は求めるが、新しい物質は不用。削ぎ落とされた美に、神秘は宿る。名のなき芸術表現こそ究極なのだ。
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