「バカは死ななきゃ治らない。 映画は時代を映す鏡だ!」ドント・ルック・アップ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
バカは死ななきゃ治らない。 映画は時代を映す鏡だ!
彗星の衝突による人類滅亡の危機を前にして、人々がどのような行動を取るのかを描き出したポリティカル・ブラックコメディ。
主人公である天文学者、ランドール・ミンディを演じるのは『タイタニック』『インセプション』の、オスカー俳優レオナルド・ディカプリオ。
ミンディの助手である大学院生、ケイト・ディビアスキーを演じるのは『X-MEN』シリーズや『ハンガー・ゲーム』シリーズの、オスカー女優ジェニファー・ローレンス。
アメリカ合衆国大統領主席補佐官、ジェイソン・オーリアンを演じるのは『ナイト ミュージアム2』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョナ・ヒル。
反大統領の姿勢を取る不良青年、ユールを演じるのは『インターステラー』『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ。
ワイドショー番組の司会者、ブリー・エヴァンティーを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の、レジェンド女優ケイト・ブランシェット。
アメリカ合衆国大統領、ジャニー・オーリアンを演じるのは『プラダを着た悪魔』『マンマ・ミーア!』シリーズの、レジェンド女優メリル・ストリープ。
作中に登場する映画『万物破壊』の主演俳優デヴィン・ピーターズとして、「MCU」シリーズや『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』のクリス・エヴァンスがカメオ出演している。
Netflixオリジナル作品。
これを観てはっきりわかったけど、やっぱり良質なコメディはバカには作れない。
バカばっかり出てくるコメディ映画だけど、不条理に満ちた現代社会を批評するその眼差しはどこまでも鋭い。
あまりのバカバカしさに吹き出してしまうのだけれど、映し出される衆愚政治のリアリティには背筋が凍りついてしまう。
まさに、笑っちゃうくらいに混沌としている現代を映す鏡のような映画。
本作の監督/脚本を務めたアダム・マッケイさん、めちゃくちゃ頭いいんだろうな〜🙄
オーリアン大統領が豊かな世界を作ると信じる人や、そもそも彗星など存在しないと主張する人々による「Don’t look up」運動。
そんなオーリアン陣営へのカウンターとして、現在迫っている脅威をきちんと見つめようという「Just Look Up」運動も展開される。
これはもちろん極右的なトランプ支持者と、それに反発するリベラル層との対立を比喩的に描いたものであるが、右も左もバカばっかりだとして描いているところが本作の白眉な点。
右がバカ丸出しなのは当然として、左側の奴らも結局何も考えてない。
「ライヴ・エイド」を思わせる大規模なコンサートも、結局ただの馬鹿騒ぎに終始してしまっており、何の効果もない。こういうイベントにありがちな口だけ番長感をここまで露悪的に描くとは…😅
それだけではなく、右にも左にもつかないという政治的なイデオロギーを放棄しているヤツもバカにしている。
全方位に向かって喧嘩を売りまくっており、とにかくパンク精神に溢れてる。
要するに、右につくにしろ左につくにしろ、政治家だのIT企業のCEOだの有名人だの、そういう第三者の意見を鵜呑みにせず自分の意見を持とう。そうしないとマジで地球終わっちゃうよ、ということをコメディという誰にでも理解できる形式をとって伝えようとしているという、ものすごく真面目な映画なのです。
本作を観ていると「コロナはただの風邪」的なことを言ってやがった人たちのことが頭をよぎるが、本作の配信開始が2021年12月ということを考えると、コロナが流行る前から制作が開始されていたのかな?
そう考えると、まるでコロナによる混乱を予知していたかのような映画ですよね…。先見の明が凄すぎる。
彗星衝突ものということで、もっとSF的な見どころがたくさんあるのかと思っていたが、それはほとんどない。
そのため、全体としてはちょっと地味目な印象を受ける作品となっている。
また、前半の予想のつかない展開は面白いものの、中盤から終盤にかけては割とダラダラしており、正直中弛みを感じる。90分程度のランタイムだったら前半の勢いを保ったまま最後まで突っ走れたのだろうが、この内容で128分はちょい長いっすわ。
総評としては、傑作と呼ぶにはあと一歩足りないが、非常に知的で笑いどころも満載な良質なコメディ映画、と言ったところでしょうか。
ロシアのウクライナ侵攻によりますます社会情勢は不安になっており、人類の分断も進んでいます。
今こそこの映画を観て、自分の考えをしっかりと持つことの大切さを学ぶべきではないでしょうか?
じゃないと世界滅んじゃうよ、いやマジで。