劇場公開日 2021年12月10日

「仰天エンドに深い衝撃」ドント・ルック・アップ ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0仰天エンドに深い衝撃

2021年12月14日
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鑑賞方法:映画館

 観終えた時、ふと「マーズ・アタック!」を思い出した。不条理で壮大な人類の危機、コミカルなタッチであぶり出される人間の愚かさ、それと豪華キャスト。大好きな作品だ。

 中盤までは結構グダグダなノリが続く。ミンディ博士とケイトが訴える巨大隕石の警告を、大統領は政治の道具にしようとし、ワイドショーはゴシップネタと同列の扱い。一向に隕石襲来の危機感が伝わらない。
 そもそも博士とケイトもすぐ取り乱したり不倫に手を出したりと、ちょっと余計な挙動が多い。そんなことしてる場合じゃないでしょう。6ヶ月のタイムリミットは、見ていてじれったくなるほど無為に過ぎてゆく。
 アルマゲドンのパロディっぽいネタやらGAFAのCEOを何人か混ぜたようなスマホ会社社長やら出てくるのは単純に面白かったが、基本的にはどこまでも皮肉たっぷりの描写で冷笑を誘う感じだ。アリアナ・グランデが朗々と歌うあたりまでは、正直ちょっと盛り上がりに欠けるなーなんて思っていた。台詞や会話の呼吸の途中でばっさり切って次にいく、という編集が多かったせいもある。

 それが終盤、まさか本当にマッケイ監督、やってしまうのか!ディカプリオもいるのに!(?)てな空気になってからの飛ばし具合は、痛快の一言。愚かな人間達の末路。比較的良心的な人達はある意味救いがある。一方メリル・ストリープの扱いが本当に酷すぎて(誉め言葉)爆笑。
 ラストで私の本作への評価はジャンプアップした。エンドロール後のおまけもあります。

 この作品で描かれた人間達の反応は、よく考えるとかなりリアルだ。
 誰もが正常性バイアスの中にあって理解出来ないものを軽視し、隕石を自分の目で見るまで危機感を覚えない。見えた時はもう遅いのに、手遅れになるまで現実を直視出来ない。
 権力者は危機をも政治の道具と捉えて「上を見るな」と言い、群衆はそれに簡単に扇動される。確実な方法を取らなければ命に関わる局面で、資産家は隕石のレアメタルに目が眩む。
 似たような状況は、既に過去の別の危機の中で断片的に現出していたのではないか。
 「上を見るな」この言葉をタイトルにしたのは強烈な皮肉だ。真実から目を反らせ、とでも言い換えられそうだ。鋭い諷刺の刃の切先は、登場人物の愚かさを他人事のように笑っていた私にも向けられている気がした。
 隕石とは限らないがいつか本当に世界が終わるとしたら、こんな風に混沌として人類がバラバラなままの、終わる覚悟が出来ていない雰囲気の中で終焉を迎えるのかもしれない。

 それにしても、役作りだろうが(…だよね?)すっかりだらしない体型になってオーラを消し朴訥とした研究者と化したディカプリオ、クセが強い話なのにこれだけ豪華メンツでやたらお金のかかりそうな絵面の作品を撮ってしまうNetflix、相変わらずすごい。

ニコ