劇場公開日 2022年2月11日

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「「ワン・デイ」×「メメント」的な」ちょっと思い出しただけ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「ワン・デイ」×「メメント」的な

2022年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

松居大悟監督の2012年のデビュー作「アフロ田中」をはじめ、「男子高校生の日常」「スイートプールサイド」「アズミ・ハルコは行方不明」など好きな作品は漫画や小説の映画化が多い。もちろんそれらの原作の魅力に依拠するところも大きいのだろう。それでも、松居監督が自身のオリジナル舞台劇を映画化した昨年公開の「くれなずめ」には、着想のユニークさも確かにあり、お気に入りの一本だった。それにしても、この10年ほどで監督作13本、それ以外に商業監督デビュー前から続けている舞台劇の作・演出、テレビドラマ、PVなどなど、その多作ぶりには圧倒される。

さて、ジム・ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」に、着想を得た尾崎世界観が作ったクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」に、触発された松居が脚本を書いて監督も務めたという、創作と他者への刺激の幸福な連鎖によって生まれた「ちょっと思い出しただけ」。物語の構造としては、アン・ハサウェイ&ジム・スタージェス共演作「ワン・デイ 23年のラブストーリー」と同じように男女の長い年月の経過を特定の日付の一日を切り取って提示することで見せていくが、これにクリストファー・ノーラン監督作「メメント」と同様シークエンスを時間に逆行する順に並べていく手法を掛け合わせている。「メメント」のブルーレイディスクにはシークエンスを時間に順行する流れに再構成して鑑賞できる特典機能があったが、この「ちょっと思い出しただけ」もパッケージ化の際に採用するといいのでは。きっと作品をより深く楽しむのに役立つと思う。

淡々とした雰囲気は悪くないが、本当は心の奥深くにある重く激しい感情に迫ることなく、表層的な感傷をさらりとなぞったような印象も受ける。それも仕方ないか、“ちょっと思い出しただけ”なのだから。

高森 郁哉