「生きることと食べることと、そして輪廻」土を喰らう十二ヵ月 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることと食べることと、そして輪廻
<映画のことば>
人間は不思議な動物で、匂いや味覚で、とんてもない暦の引出しが開く。
口に入れるものが土から出た以上、心深く、暦を経て土地の絆が味覚に絡みついている。
いうまでもなく、人間の体は口から入ったものから出来上がっている訳ですし(ごく一部の栄養素を除いて、人間が自分の体内で生成することはできないらしい)。
そして、本作からは、その人間が口に入れる素材の多くが土から生まれること、そして土から生まれた素材の「素朴さ」「自然さ」を大切にすることの「本物の豊かさ」をたっぷりと教えてもらうことができたように思います。
亜熱帯から温帯、そして亜寒帯と、幅広い気候帯にに属する日本は、春夏秋冬の季節の移り変と、わりがハッキリとしていて、その季節ごと季節ごとの食材の豊かさにも、心を奪われます。
改めて「生きることは食べること」なのであり、「食べることは生きること」なのだという思いをいっそう強く感じました。
本作を観て。評論子は。
同じく料理を素材とする作品として、他作『大統領の料理人』を同時期に観たのは、ほんのたまたまなのですけれども。
同作にたくさん登場する美味しそうな料理とはまた違った「素朴さの豊かさ」みたいなことを味わうことができたことは、幸いだったと思います。映画ファンとしての評論子としては。
「100年フード」を始めとして、食文化の振興に旗を振っている文化庁が配給会社とタイアップしたということで、公共施設等に大々的にボスターが張り出されたりした作品なので、「どんなものだろう」と食指が動いて鑑賞してみることにした一本でした。
文化庁の能書き(ウェブサイト)では、「今回のタイアップを通じて、我が国の豊かな食文化への理解と関心が深まり、四季の食文化を体験するために各地域へ足を運ぶ機会が増えるなど、食文化がより身近なものとなることを期待しています。」とされていたものです。
まずまずの佳作であったと思います。評論子は。
(追記)
邦題は「土」にかかわる事柄で、文字どおり土から産み出される食材の話なのですけれども。
しかし、本作でもツトムが急病で生死の境をさまよいましたが、その土から産み出される食べ物を食べる人間も、行く行くは土に還っていく存在です。
その輪廻を本作から感じ取ったレビュアー諸氏も少なくなかったようですが、評論子も、まったく同じ感慨です。
<映画のことば>
生活することは体を使うことで、体を使えば腹も減る。腹が減れば、メシもうまい!
空腹が何よりの調味料であることは、時代の古今、洋の東西を問わないのだろうと思いました。