劇場公開日 2021年12月18日

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「こんなのが好きなんですよね」なれのはて Kazuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0こんなのが好きなんですよね

2021年12月26日
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これが映画か?という方もいるでしょう。TVならナレーションが入ってもっと引き締まったかもしれません。
でも、こーいうのが堪らなく好きなんです。

元々日本での仕事や家族があったのに、フィリピンのスラム街に流れ着き、フィリピン人に同情され、善意に縋って生きているだけとも思える底辺の生活を送る「困窮邦人」の4人の初老の男たち。
ある者は半身不随になって小銭を払ってフィリピン人に下の世話もしてもらい、ある者は便所掃除をする代わりに自転車屋の軒先に居候させて貰い、ある者は内縁の妻の介護をしつつ撮影する監督に借金し、ある者は日本の家族を懐かしがりながらフィリピンの家族を何とか養う。
それぞれ流れ着いた理由は様々、そして日々の暮らし方も様々、ただ一様に感じるのは全員がその生活を自然に何でも無いように過ごしていること。
その生活を幸せだと言う者もいれば、日本では暮らせないと言う者もいたり、もはや帰れないと言う者もいる。

いろんな人生があるんだよなぁ、と言うのがこういう映画を好きな理由。
そして、自分もそうなっていなかったと言い切れない(これからそうなるチャンス?はまだあるが)ことを確認するため、そして絶対そうはなるまい!と心に誓うため、こんな映画やテレビを見て、自分だったらと思わずにいられない。
自分の中の不安定なものが爆発したら、自分もこの男たちと同じ道を歩みそうで怖い、いや絶対ならないぞ、でも何となくその自由さが羨ましい。

そんな複雑な心境で見に行きましたが、全てを満たされた映画でした。

たまたま粂田監督が挨拶に来場され「クリスマスの日にこんな映画を見に来る人はどんな方達なのか楽しみに来ました」と仰っていました。
そう言われて見渡せば座席にはアラ還と思しき方々が多く、平均年齢はかなり高め。主人公の4人の「困窮邦人」と同年代か?
みんな自分になぞらえて見ているのではなかろうか?その眼は恐怖なのか、同情なのか。僕と同じように羨望の眼差しも入り混じった感情なのかもしれません。

元々はザ・ノンフィクションのために撮影を始めたそうですが、TVでは流せない!と映画になったそう。確かにあのシーンは、モザイク無しでは流せないよね。

Kazu