「恋愛映画としてもタイムループ映画としても良いところが無い」君が落とした青空 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛映画としてもタイムループ映画としても良いところが無い
全く楽しめなかった。しかしそれは私が悪い。なぜなら私は本作のターゲットとなる客層じゃないから。この映画がターゲットとしていて本作を楽しめるのは「普段映画を見ない女子高生」だと思う。間違っても私のような「タイムループ物の映画が大好きなおっさん」が観に行く映画ではなかった。予告編観た段階で分かり切っていたことなのに、わざわざ見に行ってしまった私が悪い。
文句を言いたいところはたくさんあるんだけど、だらだらと文句を垂れ流して本作を楽しめた方々の興を殺いでしまうのは私の本意ではないので、「この映画を観て楽しめた」という方は、このレビューは読まないでください。
ただ、褒めるところも無いわけではありません。主演の福本莉子さんはめちゃくちゃ可愛かったです。☆2の内の1.5くらいは福本さんの可愛さにつけた点数だと言っても過言ではないくらいのレベルでした。福本莉子さんのファンの方は絶対に観に行くべきです。過去イチ可愛い福本莉子が観れますよ。
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高校生カップルの実結(福本莉子)と修弥(松田元太)は、「毎月1日は一緒に映画を観に行く」という約束をしていた。その日も一緒に映画を観に行く予定だった二人だったが、修弥が急用ができたことを理由に映画の約束をドタキャンする。約束を反故にした理由を聞いても言葉を濁す修弥に対して不安を感じる実結。その夜、「もう一度話したい」と修弥から連絡を受けた実結は待ち合わせ場所に向かったのだが、そこで修弥が交通事故に巻き込まれるのを目の当たりにする。パニックになる実結が目を覚ますと、実結はその日の朝に戻っていた。何度も同じ一日を繰り返しながら、修弥を助けるために奔走する。
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まずこれだけ先に言わせてほしい。
夢オチかよ!!!!!がっかりだよ!!!!!!!
以下、詳細なレビューに入ります。
本作は、小説アプリ「野いちご」に掲載され、「切ない小説ランキング」で一位を獲得した作品です。「野いちご」は10代女子向けの小説をメインにした小説サイトで、掲載されている小説のほとんどが恋愛小説とのこと。つまり、原作からして若い女性向けに執筆された作品です。私が見て楽しめなかったのも無理はない。若くて恋愛に対して憧れを抱く、恋に恋する少女が観ることを想定した作品なわけですので、私のように枯れたオッサンが観るものじゃない。
それでも、恋愛ものとタイムループものをミックスしたような作品だということは事前に聞いていたし、評価が高かったこともあって結構期待しての鑑賞だったんですが、実際のところ恋愛要素は案の定ティーン向けで、現実離れした王子様系の彼氏とのイチャイチャを見せられて鳥肌が立つほど気持ち悪かったし、タイムループ要素は今まで観た多くのタイムループ映画の中でもかなりレベルの低いものでした。
恋愛要素で一番良くなかったのは、ジャニーズjr.の松田元太くん演じる修弥が顔が良いだけで、全然魅力的なキャラクターに見えなかったことです。制服のネクタイちゃんと締めないし常にポケットに手を突っ込んでるし。物語の後半で実結の恋敵であるトモカが修弥に告白するシーンがありますが、そのシーンでも修弥はポケットに手を突っこんだまま告白を断るんですよ。修弥はトモカに恋愛感情は無かったでしょうけど、バイト先もクラスも同じでかなり仲が良かったはずなのにそういう断り方をするのはめちゃくちゃ違和感ありました。「女の子が勇気出して告白してんのにその態度は無いだろ」って嫌悪感すら抱きました。
全体を通して修弥を絶対的な存在として描くばかりで、周りのキャラクターが蔑ろにされている感じが強いんですよね。トモカもそうだし、友人キャラクターの祐人の扱いも雑。こういうサブキャラをメインキャラの引き立て役としか描いていない映画は大嫌いです。ちなみに、調べてみるとトモカが修弥に告白するなどの描写は原作には無い映画オリジナルらしいので、原作ではなく映画の問題点ですね。
あと、タイムループ作品としても非常に出来が悪い。正直今まで鑑賞した作品の中では一番酷かったかもしれない。
本作でタイムループを繰り返している実結が目指すゴールは「修弥を死なせない」ことだと思うんですけど、劇中での実結の行動は「修弥を助ける気があるのか?」って思ってしまうほどに回りくどいし意味が分からないんですよ。
普通のタイムループ作品だったら、死の運命を背負った恋人を救うために対策を講じる→それでも恋人が死ぬ→更なる対策を講じる……っていう流れになるのが普通なんです。予想の斜め上の対策をとったり、予期せぬ出来事が発生したり、伏線の回収があったり。主人公が前回のループの反省を踏まえて恋人の死のPDCAサイクルを回す過程を楽しむのが、こういうタイムループ物の醍醐味だと思うんです。
しかし本作ではそのような描写はありません。修弥が交通事故に遭って亡くなるというのは知っているはずなのに、それを止めるために考えうる手段を一つも講じていないんです。毎回時計台前の交差点で轢かれるんだから、最初からそこで待ち伏せて横断歩道を渡らないように説得するなり引きとめるなりすればいいんです。自分がタイムループしていることを修弥本人にカミングアウトして、大人しく家に帰るように喋ってもいいんです。観客が「こうすれば助かるんじゃないか?」って簡単に思いつくような手段すら取っていない実結に対して「ほんとに修弥助ける気あるんか?」って聞きたくなります。
これが、本作を「タイムループ作品として非常に出来が悪い」と評した理由ですね。簡単に考えつくような手段すら取らない頭の悪いタイムループ作品は数多くありますが、そもそも問題解決するための行動すらしない作品は珍しいです。
そして映画終盤で明らかになる「全部夢でした」という展開。これは本当にふざけてます。
今までのタイムループは一体何だったの?と思うくらい、物語の根幹を覆す悪手だったと思います。これはいわゆる「デウス・エクス・マキナ」と呼ばれる作劇上の禁忌とされる手法ですし、目覚めてからの展開も原作から明らかに改悪されていました。
せめて映画終盤に昏睡状態から目覚めた修弥と実結が対面するシーンで、実結がポニーテールにしていることに対して何かしら修弥が言及してほしかったです。最後のループ(夢)の中で、ポニーテールの実結に対して修弥が「似合ってるじゃん」って褒めるシーンがありました。夢から覚めて再会するシーンでも実結がポニーテールにしてたんで、ここで修弥が夢の中と全く同じセリフで実結のポニーテールを褒めたなら、「もしかしたら夢じゃなかったのかも」みたいな含みのあるエンディングになっていたと思うんです。
そういう「もしかしたら夢じゃなかったのかも」と言う可能性を示唆する描写が見受けられなかったので、本当にただの夢オチになっちゃってるんですよ。映画の8割がただの夢で、本当に無意味なシーンになっちゃってるんですよ。これは明らかにダメですよ。原作改変して安直なハッピーエンドにするのは日本映画の悪習です。そういう意味でも、あまりにも不満が残るラストでした。
原作を知らないから不満を感じるのかとも思いましたが、レビューを漁ってみると原作ファンの方が不満を言っているものも多く見掛けました。
評価の高さに釣られて鑑賞してしまって、ただただ後悔だけが残りました。「タイムループものの映画や小説が好き」「原作ファンで、原作のストーリーが好き」という人にはあんまりオススメできないですね。「普段映画全く見ない女子中高生」だったら楽しめると思います。保証はしませんが。