劇場公開日 2022年1月14日

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「この監督が描けるであろう世界が描けていない」フタリノセカイ バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0この監督が描けるであろう世界が描けていない

2022年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

自身がトランスジェンダーの監督の作品だそうです。事前情報ゼロで観たので鑑賞後に映画館の記事で知りました。

本作では僕が知ることができない「生まれながらの性に悩みを持つ人」の恋愛の形が描かれます。僕が知らない世界だからでしょう、共感し辛いです。ですが、知りたいと思ってます。知らない世界を生きる人達の心に少しでも触れられたら、、、なんて偉そうですが、そんな思いで映画を観る私です。

残念ながら僕の願いは十分には満たされなかったんですよね。結と真也の行動に根拠や心情が見えなくて。「結果としての行動」しか描かれないから、なんで?なんで?が続くのです。

「好きだから一緒にいたい」ってのはわかるんだけど、今の社会ではイレギュラーな関係は、越えなくてはならないハードルがたくさんあるのでは?って思うのです。特に自分の心のハードルに関して。にもかかわらず、そこはサラリと描き、一般的な恋愛物語になっちゃってるんですよね。そこについては悪くはないですよ。「僕が知らない世界も、知ってる世界も同じなんだよ」ってことを言いたいのかな?だったらそれをあえて映画として描く意味はあるのだろうか?

最も困惑したのは、なぜ子供に執着するのか?そこが、わからない。家族が欲しいから?子供が好きだから?相手が好きだから?なんなの?では実現のためにその方法を選択するのに「苦渋」ってなかったの?「よし!そうしよう!」ってすぐに決まったの?どうなんだろ?

フタリノセカイを選び、生きていこう、家族を如何なる方法でも作ろうと決めたのは、多くのハードルに立ち向かおうと思ったのは・・・・。
「一体なぜなんだ?」
そこを理解したいのですが情報が足りなすぎると思うのです、絶対的に。

真也と結の結びつきの強さの理由を描いてほしい。こーいうことやるから強いんだよ、、、って描き方は嫌いなんです。そういう伝え方が嫌いなんです。これができるほどの結びつきがあるんだよ、って表現ではなく報告ではないでしょうか?

根拠がわからず動悸も不明なのでラストシーンについても違和感しかないのです。ここにも「なぜ?」が。もしかしたら、僕の知らない世界だからしょうがないのかもしれません。でも、だからこそ理解を深めるためにも描いて欲しかったなぁと思うのです。根拠となるものを。

さらに俊平の描き方がひどい。そのための道具にしかみえないです、失礼な言い方するけど。「きっとこうなんだろうなぁ」と都合よく想像することはできるけど、その行動に至るプロセスの積み重ねにこそドラマとテーマの本質が存在していると思うのです。そこが見えないのです。本作は「描写の数」が多いわりに、「本質」が伝わってこない作品でした。「好き」に理屈は不要ですが、「生活を伴う共生」には理屈は必要。どーにもこうにも二人のママゴトにしか見えなかった。

この監督だからこそ描ける本質があるんじゃなかろうか?なんて思います。それが見たかったです。

残念でした。

バリカタ