「衣装で」パーフェクト・ケア maruさんの映画レビュー(感想・評価)
衣装で
世の中には奪う側と奪われる側がいて、私は「奪う側だ」と頑なに自分を曲げない主人公・マーラの視点で映画は進む。ラスト寸前までその思想は続き、(胸糞悪い)(なんでこんな女が勝つんだ?)(これがアメリカンドリーム!?)と思っていたが、きちんと「ラストまで」その思想は続いた。マーラは最後「奪われる側」に立った。
ロシアンマフィアのローマンの一人勝ち。
マーラたちを殺し損ねたのは別に失敗したのではなく、①死ぬ…死んだら死んだでOKで、②生還…死なないなら死なないで脅しにはなる、③報復…刃向かってくるならくるで①をまた行えばいい。さすがにローマン誘拐はお粗末な襲撃ではあったと思うけれど、前線から離れてぬるま湯に浸かった部下っぽいので、あのくらい油断しているだろうと納得。
殺される寸前で生かされたローマンは、マーラの脅しに対して「一緒に事業をやろう」と話をもちかけ、マーラの野心に火をつける。まんまとマーラはそれに乗っかる。これもローマンとしては、①成功…お金が入る、②失敗…は、ほぼない。マーラがビジネスのノウハウを確率してるのでネットワークさえあればお金儲けは見込める、成功しようが失敗しようがノーリスク。そして、「マーラがいつか死ぬ」ことはわかっていた。
自分のように、母親を奪われ復讐に躍起になる輩は、いる。いつかそいつに、この女は殺される。だから今はビジネスを持ちかけ、確定した儲けを得ることが得策だ。…と思ったはず。病院でマーラと話す表情からそういう心情が感じられた。
映画的に、やはりマーラは「悪」でありこれがアメリカンドリームであってはならない。マフィアvs詐欺まがいビジネスは、やはり悪vs悪なので、どちらかに落とし前は必要だと感じていた。映画も終わり際になると、メディアに超有名雑誌にひっぱりだこ・注目の的になるマーラが、白いスーツを着て清廉潔白をPRしている。(…あ、死ぬな)と思った。
映画の定石というか、鮮血が映えるからと「白い衣装を着がち」というベタのせいで殺されるのが目に見えていて、ちょっともったいなかった。せめて、ニュースに出演後、局を出る前に誰かとぶつかるシーンがあって(あ、刺された!?)と思わせて、実はコーヒーがこぼれていた→着替えもってるわよ→ありがとう→白い衣装で出てくる→刺されるなど、一旦ワンクッションいれてもよかったかなと思った。あまりにも最後までマーラに事がうまく運びすぎて(どう制裁を受けるのか?)を気になっていたからこそ「白い衣装」に気づいてしまった。でもおもしろかった。