「成年後見ビジネス。」パーフェクト・ケア レントさんの映画レビュー(感想・評価)
成年後見ビジネス。
あくまでも高齢者の後見人になればお金が儲けられるという前提の作品。本作では主人公がカモになる「理想的な高齢者」を見つけるが現実はなかなかそんなことはないだろう。
まず、親族がまったくいない富裕層の高齢者というのはそうそういないだろうし、例え天涯孤独でも富裕層なら財産管理のための顧問弁護士くらいいるのではないか。
つまり本作のような一見「理想的な高齢者」はまさにマフィアの関係者ぐらいしかいないということだ。だからこそ主人公は足元をすくわれる。
実際は後見人ビジネスでお金を稼ぐには多くの中間層の高齢者の後見人になる必要がある。
確かに法人化をすれば多くの被後見人を抱えてその分報酬も増えるが全ての被後見人から報酬を得られるわけではない。中には資産のない高齢者もいて実質ボランティアになってしまうことも多い。
日本では成年後見人は弁護士などの士業が七割を占めているが、あくまでも片手間であり、それをメインにして事務所はやっていけないのが実情だ。
高齢人口増加で後見人の法人化の必要性も語られるが、それはあくまでも公益的な面での必要性からだ。
本作のような金のなる木としての後見人ビジネスはアメリカでは成り立つのだろうか。それともマフィアと組んで都合のいい高齢者だけの後見人となればの話なのか。
ただ、本作のように後見人制度で自分や家族の意思が制限されてしまうのも事実だ。この点に関しては日本でもアメリカでも問題視されている。
本作のように施設に閉じ込められて早速資産を売却されるということはないにしても、一旦成年後見が開始すれば自分の意思で法律行為が行えなくなるという弊害もこの制度にはある。そういった後見人制度の問題点に警鐘を鳴らすという面では意義のある作品だった。
ロザムント・パイク演じる主人公のマフィアさえも手玉に取る悪女っぷりを楽しめる作品。しかし、ラストはあまりにもアメリカ映画的な終わり方で少々残念。どうせなら荒稼ぎした主人公が年老いて同じように被後見人となり、自分の財産を奪われるという落ちの方がよかったかな。よくないか。