劇場公開日 2021年12月3日

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「この突き抜けたロザムンド・パイクは見もの。」パーフェクト・ケア 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この突き抜けたロザムンド・パイクは見もの。

2021年11月29日
PCから投稿

J.ブレイクソンという名を聞いてハッとした。かつて「アリス・クリードの失踪」という作品で、極度に制限された物語空間を自由自在に泳ぎ回るミステリーの筆致に心酔した記憶があったからだ。本作も序盤からなかなかぶっ飛んだ切り口で、とにかく主演のロザムンド・パイクが突っ走る。この見る者に寸分も親近感と共感を与えないキャラクターの悪行ぶりはピカレスクとでも呼びたくなるほどだが、やがて彼女が自業自得のピンチに陥っていく様に「それ見たことか!」という感情が吹き出し、それでも彼女が歯を食いしばろうとする様に、また別の不可思議な感情が湧き出してくる。いかに世の中を出し抜けるか。その一点にのみ全てを注ぎ込み、もはや恐れるものを知らないヒロインの度胸が圧倒的なのだ。共演陣も実に多彩で、抑え気味ではあるが、要所要所で優れた味わいを放つ。全体を彩る陽光に満ちたカラートーンといい、ブレイクソンらしい仕掛けの多い一作だ。

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牛津厚信