「ヘビみたいにむいていく曖昧なドラマ」ロスト・ドーター とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘビみたいにむいていく曖昧なドラマ
母になることを期待されたけどなれなかったあの日の自分へ --- 自らを仮託することと、かつて自らが捨てたものを拾い上げるという行為。役者マギー・ギレンホール脚本監督デビュー作 × "せいぜい40歳くらいに見える"名優オリヴィア・コールマン主演作品 = 興味深いキャラクタースタディ& 魅惑的に神経逆撫でしてくる心理サスペンス。一人で過ごすためにやって来た主人公レダのキャラクターが結構際立っていて共通性も見出だせた、人間らしい。怒ってる?娘は二人、25歳と23歳。レダの宿泊する施設の管理人は人種超えて祖父顔エド・ハリス。
人形という小物使い。静かなヴァカンスを過ごしに来たつもりが、そこに見るからにオリヴァー・ジャクソン=コーエンはじめイカついヤクザ者みたいな大家族が来たことから、静寂と平穏は破られる。騒がしくなってしまう。"彼らは悪人"。ニーナ役ダコタ・ジョンソン(濃いメイクのせいか彼女だと気づかなかった)、若い母娘・親子を見ているうちに若かりし頃、昔の自分(これまた素晴らしい!ジェシー・バックリー)を重ねていく。レダの過去が交錯していく、現在と過去が入り交じる。とりわけレダがある行為をしてから…。果物の皮をヘビみたいに長くむく。育児放棄、子供たちを投げ出し家を出て溺れる相手は熊髭ピーター・サースガード。
今年(2021年)はレベッカ・ホール監督デビュー作『PASSING ー白い黒人ー』もあり、本国Netflixの自由さと攻めた姿勢、そして新たな才能の発掘と投資という映画・映像表現界全体の発展につながる社会意義に共感。そして双方どちらも初監督作品っぽくない題材と語り口にすっかり魅了されてしまった。日本Netflixには無いもの。関係ないけど、作中のオリヴィア・コールマンとジェシー・バックリーももちろん、オリヴィア・コールマンとレベッカ・ホールも結構似ている気がした。
P.S. あと本作を見ているとき昔に自分の子供殺したのかとか、ヤバい家族に狙われるのかとか変な想像膨らませてしまった。