「幻滅のあとに人生を見つめ直す」幻滅 komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
幻滅のあとに人生を見つめ直す
年上の人妻への思慕からのパリへの駆け落ち、そして社交界デビュー。何とも華やかな話。しかし、主人公が自信過剰で特別を求める世間知らずな若者となると、破滅は必至。後はいつその時が来るのかと観ているうちに、作品に引き込まれてしまった。
パリの街の猥雑さ、譲ることを知らぬ人間性、ウォール街真っ青の拝金主義者たち。清々しいまでに欲望に忠実。
それを見下ろす暇を持て余した貴族たち。澄ました顔をしながら、獲物を美味しく料理する為に手間を惜しまない。金持ちの暇人ほど始末に悪いものはない。
そんな人々の中で破滅を迎えたのが、純粋に美を求めたコラリーであったことは見ていてとても辛かった。
親に売られ、金持ちのパトロンを捨てた彼女には主人公以外何もない。それでも、お金は働いた対価であるとしルイーズのお金を受け取らず、稽古に励んでいた。
一方、主人公は目先の金の為にルイーズと寝る。コラリーの舞台の成功の為ではあるのだが…。まだ芸術家としてパトロンと関係を持ち続けるために寝ていたほうがスッキリする。
コラリーを破滅させた新聞社は、その後貴族たちによって摘発される。そして微笑む貴族。しかし、内容からして7月革命の前夜なのだから、貴族たちも間もなく幻滅の渦に飲み込まれたのだろう。
結局、挫折し故郷に帰った主人公だけが生き残ったようで、当初の予想を見事に裏切られた。そして、そんな彼を苛立ちながらも憎めないのは、自分を重ねてしまうからだろうか。果たして彼の人生の第二幕は如何に。
どの役者も素晴らしく、観終わった後にじわじわくる。思わずフランス史を見直したり、バルザックを調べたりしながら反芻してしまった。