コンペティションのレビュー・感想・評価
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表裏一体
映画を作るまでの過程を実演で行う映画という、映画作りの映画でも異色作、ここ最近の映画作り映画の中では一番面白かったです。
原作は知らないけど有名な小説の映画権を獲得した自尊心まみれ金持ち出資者と、原作を変えまくる日本だったら炎上間違いなしのクセ強監督と、ベテラン俳優と、ハリウッドスター俳優といういかにも平和に終わらなさそうな感じの始まりで、方向性の違いで衝突しまくってました。
演技へのこだわりや私生活の過ごし方、イライラが募りぶつけ合い、でもそれが演技に活きてきたり…不思議と映画としての形は形成されていく、不揃いなピースが揃っていくたびに違和感を抱えつつも濃密な演技合戦が楽しめるようになっていました。
惜しいなと思ったところは、笑いのツボが合ったり合わなかったりしなかったところです。5トンの石をクレーンで吊るした真下で最大の緊張を背負いながら演技をしているけれど、実際はハリボテだったシーンは抜群に面白かったんですし、トロフィーをテンポ良く粉砕機にかけてぶっ壊したり、その粉砕シーンをテープでぐるぐる巻きでの鑑賞になっていたりとブラックなジョークが効いてるシーンはめちゃ笑えました。
ただちょいちょいテンポが悪くなるというか、特定の人物を長回しで撮ったりするシーンが多かったので、監督の好みと自分の好みが合わなかったなと思いました。あと同じフレーズを連発しまくるのもちょっとダルいなと…。
伏線の貼り方が中々に巧妙で、作中に登場人物が発した言葉が現実になるという恐ろしさ。フェリックス(アントニオ・バンデラス)が癌のふりをした際に、それに気づけなかったイバン(オスカル・バルティナス)が、「彼が演じれなくなったら僕が一人二役を演じるよ」というフレーズが、フェリックスが完成前のパーティーで突き飛ばしてイバンに大怪我をさせ、結果的にフェリックスが一人二役を演じるという残酷さが良いスパイスになっていました。地味にこのシーンも序盤にあった合気道のシーンが活きてくるというダブルパンチに唸りました。
最後の記者会見のシーンは特に皮肉が纏われていて、近年のアカデミー賞はじめ賞レース作品への批判が込められているようでした。パリコレ要素が必須になってしまった2020年代の賞レース、自分はこの風潮がかなり嫌いで、最近のディズニーなんかはその傾向が顕著に観られて(ストレンジ・ワールドとかいうまみれまくった作品もあって、リトル・マーメイドとかもう…)、そこをバッサリと言ってくれたのが個人的には気持ちよかったです。
映画は終わらないとわざわざセリフに出してしまったがために、引き際を見出せず謎な状態で終わってしまったのは少しいただけないですが笑
効き目強い毒を食らいつつも、それがなぜか心地良い。面白い作品でした。
鑑賞日 3/23
鑑賞時間 12:05〜14:05
座席 E-3
5屯の大岩
キービジュアルの浮いた大岩を見た後あらすじを読んで、あまりに繋がらなくて興味をひかれる。
業界裏話的な作品は大好きなので、鑑賞。
もっと小難しく芸術性の高いものかと思っていたら、思いのほかとっつきやすい。
シュールでシニカルな展開に笑いつつ、確かなメッセージと映画愛を感じます。
ただ、映画制作の裏側というにはメインはローラ、フェリックス、イバンの3人のみ。
彼らの美学とプライド、独自の方法論などがぶつかり合う様は興味深く、かつコミカル。
例の大岩や、父親の前でのラブシーンなどは非常に好みだった。
惜しむらくは、ややテンポが悪く、メリハリに欠けること。
謎ダンスシーンなどを削ったり、BGMを効果的に使ってあれば、笑いや皮肉もより効いたように思う。
とはいえ、ここまで皮肉とテーマを掘り下げた上で分かり易さ、エンターテインメント性を失わないバランスは見事。
オチが弱いし、あの先を描かないのは(意図的だとは思うが)スッキリしないものの、非常に楽しめました。
ペネロペ万歳
冒頭,フェリックスが酔っ払いの各段階を試演したところからニヤニヤが止まらなくなってしまった。
それにしても「病気」の件が,観客にはウソだと悟らせるようにしてあるのに当の二人が信じてしまったり,イバン死後のフェリックスが自信満々で知らん振りをしてるのに犯人が彼だとローラが直感している風だったりするあたり,演技の効果というものが必ずしも演技者の力量のみで決まるわけではない,と気づかされて思わず唸ってしまった。
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