劇場公開日 2022年12月2日

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「たった一人で戦う12週間。」あのこと 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0たった一人で戦う12週間。

2023年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

望まぬ妊娠をした大学生のアンヌ。
1960年初めのフランスの大学生(生まれたのは1940年)
当時フランスでは人口中絶は違法だった。

フランスでは痛ましい事件の後、
1975年に中絶が合法化したそうです。

その映画は望まぬ妊娠をして、産まない決意をしているアンヌ。
妊娠を知る3週目から、「あのこと」の起る12週目までを、
徹底してアンヌの視点で描いている。

原作は2022年のノーベル賞文学賞を受賞した
アニー・エルノーの私小説「事件」。

古今東西、女を悩ます珍しくはないが、生死に関わる重大事。
望まぬ妊娠。
そして中絶。
今も古くて新しいテーマだ。
昨年にはアメリカの連邦最高裁は中絶の権利を禁止した判決を下した。
また逆戻りだ。
だからこの映画はタイムリーで、是非考えてほしい。

「女性だけが、苦しむ固有の問題だろうか?」
受信したアンヌが医師に相談すると、
「中絶手術を行えば、自分も法律で罰される」
「運命を受け入れなさい」と、諭される。

映画は赤裸々に女性の肉体をレンズに晒す。
アンヌは自らの手で、長い金属の棒を突き刺し、出血するが
それでも胎児は流れない。
違法な闇中絶の女に300フランも払って痛い思いをして、
「明日、流れる」と言われたのに、またしても胎児は流れない。
もう自分でなんとかするしかない・・・
遂にトイレで流れるものの大出血・・・救急車で運ばれる。

女だけがこんな苦しい思いをしてる不安にさらされ、
身体を傷つけて心を痛めて・・・と不公平だと思ってしまう。
「どこまで女の権利を無視したら気が済むのか?」

映像(カメラ)があまりにも衝撃的で息が詰まる。
女優にここまで演じさせても良いのか?
疑問にも思う。
たしかに臨場感迫る映像。
実際の中絶手術では、覆われている部分まで写している。
演じる女優もたまったものではない。
ここまで肌(器官?)を露出する事で、伝わる部分はあるけれど・・。
あまりにもセンセーショナル映像だ。
(ここまで表現しなければ、伝わらないのか!!)
その結果のいくつかの賞賛が与えられた。

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。
主演のアナマリア・ヴァルトロメイも、
セザール賞最優秀新人女優賞受賞。
アナマリアはきっと今後もこの映画をステップに、
良い役に恵まれて大女優へと成長するだろう。

(去年たしか、アフターピルが日本でも認可された記事を読んだ)
今調べたら、来院不要のオンライン診療で24時間対応。
最短当日郵送。クレジット決済。
セックス後72時間以内で一錠服用=10,780円よりとある。
(お金とネットが使えれば、可能だが身体に危険はないのかな?)
それでも日本ではトイレで産み落として殺してしまう事件が
絶えない。
本人が無知なのか、行政が頼りないのか、親に相談出来ないのか、
貧しいのか!!
きっと複数の要因があるのだろう。

「17歳の瞳に映る世界」2020年(アメリカ)
アメリカは州によって法律が違う。
人工中絶が合法のニューヨークまで中絶に向かう17歳の少女と従姉妹。
2人の友情と決意が胸に迫った。
この映画、とても良かった。

「主婦マリーがしたこと」1988年(フランス)
視点は違うが堕胎を生活のために行った主婦マリーは
夫に密告されてギロチンにかけられる。

「4ヶ月、3週と2日」2007年(ルーマニア)
この作品も友達とたった2人で中絶に挑むドキュメンタリーのような映画。
カンヌ国際映画祭、パルムドール受賞した。

「あのこと」の監督オドレイ・ディワンの談話として、
「ヨーロッパのいくつかの国で、この映画を見て気を失った男性がいた」
と、話している。
「妊娠中絶がこういうことなのだと、全く理解していなかった」
と言ったそうである。
女性は妊娠・出産に命懸けのリスクを抱えている。

そして女性が今産まないで、仕事(キャリア)や勉強を優先したい。
その事を社会が男性が自分のこととして考えて、
社会全体が女性の身体を守る。
そういう意識改革が出来たら、一番意義のあることである。

琥珀糖
りかさんのコメント
2023年10月21日

今日は、寒くなりました。
長袖に羽織らないと。

美紅さんは、退会されたと思います。コメントしていただいたのが、退会ユーザーとなっていましたので。理由はわかりませんね。
やめる必然性がわかりませんので。前日の夜中もたくさん共感してられましたが。美紅さんのこと話題に出していいのか?と思っていたら、琥珀糖さん書いてくださってありがとうございます😊

りか
りかさんのコメント
2023年10月21日

『主婦マリーがしたこと』で、処刑されたのですか⁉️
その夫、みたいなのがいるから、フランス🇫🇷人女性の受難が続くわけですね。本作、男女関係なく、
半分くらい目を逸らせました。気絶しませんでしたが。1975って鈍い私でも驚きです。日本には姦通罪はありましたが、堕胎が罪になるのは⁇ご心配なさらなくても主役さん、何もダメージないと思います。

りか
りかさんのコメント
2023年10月21日

今琥珀糖さんに先程のコメントに返信しようと思ってました。
本作、難しいいんですよ。
フランスでは1975まで禁止で、
主婦になる病の意味も初めわからず、この罪で処刑された人もいるというこっわ〜いフランス🇫🇷の話。一筋縄ではいかなそう💦

りか