「「妊娠と人生と引き換えにはしたくない」と闘った女性のありのまま。」あのこと mamiさんの映画レビュー(感想・評価)
「妊娠と人生と引き換えにはしたくない」と闘った女性のありのまま。
中絶が違法であった60年代フランスで、人生を取り戻すべく中絶を受けるため最後まで戦い抜いた大学生の物語。ノーベル文学賞を獲ったエルノー氏の私小説に基づく。狭い画角、息遣いまで容赦なく描くリアリティに貧血や腹痛を感じ、動悸が起きたくらい。
この作品は男性にこそ観て欲しい。
セックスは2人で行うもの。
なのに、妊娠?中絶?女の問題でしょ?となるのはなぜだろう。
妊娠も出産も、中絶も、最後までふたりの問題ですよね。そこまで背負えないなら性行為はしない方がいい。
生涯生理もなく、妊娠もせず、出産もしない身体とは、どんな感覚だろうか。想像もつかない。
1週づつ、1日づつ、妊娠は進んでいく。
その恐ろしさ、焦りをここまで当事者以外の鑑賞者にまで伝えてくる作品、本当にすごい。
目を背けたくなる?とんでもない。気持ちのいいセックスの、すぐとなりにある現実です。
これは1975年まで中絶が合法化されなかったフランスでのお話ですが、現代においてもアメリカでは一部の州での中絶が禁止とされ、それが増えていくかもしれない状況。とんでもない話です。
その人の体はその人のもの。その人の子宮で起きていることを、他人の男性たちがとやかく決めて制御しようとするなんて、醜悪すぎて到底受け入れられません。
例外としてレイプによるものなら仕方ない?たとえいい加減な性行為による妊娠中絶であっても、最終的な決断権は女性本人にあるべきです。
そして一番男性に伝えたいのは、
「中絶の権利を女性に!」
これは中絶を良い手段と思っているのとはまったく違うということです。
進んで中絶したい女性などいません。心身ともに大きく傷つく処置です。
「望まないすべての妊娠を『ふたりで』避ける努力をした後で」最後の救いとして中絶は絶対に許されるべき手段だということです。
こちらの感想の中にも「女性も男遊びをしている」「自業自得」「消される命が」など散見しますが、それすべて、男性も背負っていますか?妊娠=軽率な女性への罰、かのような受け止め方が令和の今でも見られるのは残念ですし、道のりは遠いと感じさせられます。
この作品は、フェミニズム作品ですらありません。ひとつの事実を写しているだけです。
今晩は。初めましてでしょうか。
レビュー、拝読いたしました。
私のレビューにもある通り、私は男であり、条件付きで中絶は”是”とする考えを持つ者です。(命を軽んじている訳ではないです。)
今作は、男にとっては想像も出来ない若き女性の煩悶と、自らの望む道をそれでも突き進もうとする姿に、魅入られました。
アメリカの保守的思想及びカトリックでは中絶を認めていないのは周知の事実ですが、中絶するかどうかの判断は子を身籠った女性自身の経済的、もしくは思想的、もしくは他の要素を考え抜いた上で、女性と関係する男が決める事だと思っています。男目線から見ると、今作の父親である幼過ぎる男の姿は、同性として情けなく思いましたね。
今作は、観る側(特に男)に、大きな問いかけをしてくる映画だと思いました。返信は不要ですよ。では。
米国の犯罪率が下がったのは、中絶が合法化された年からというデータがあるのですが、何を考えているのでしょうね。我を忘れて、コントロールが効かなくなってジタバタするのが恋の醍醐味とはいえ、この物語の一番の不幸は、冷静に2人のことを話し合える場、関係性が持てなかったということかもしれないですね。自分以外の人が同じものを見てどう感じるのかな?ということにも興味があるので、こちらのレビューは興味深く拝読しておりますが、私も、「子供の命云々」という意見は・・・・・、子供以前に、まず、母体の尊重、尊厳がないだろうと思いました。相手の男性に何の相談もなく、女性側の独断で中絶していたということを在る日、男性が知り、破局という物語もありましたが、責任問題になってくると、1人を追い詰めたがる人が多いからなあ。1人では見られない夢もあるってことを分かってもらいたいなあと思いました。