劇場公開日 2022年12月2日

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「他の方が書かれていないことを中心に&字幕の説明不足など」あのこと yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5他の方が書かれていないことを中心に&字幕の説明不足など

2022年12月4日
PCから投稿

今年352本目(合計627本目/今月(2022年12月度)5本目)。

まず、この映画ですが、映倫のサイトを確認しましたが「R15」で正しいです(および、鑑賞したシアタス心斎橋でもR15扱いされている)。このサイトの表記漏れと思います。

さて、こちらの映画です。
一個人の行政書士合格者レベルの考え方と道徳観での見方です。

映画の内容そのものに関しては他の方が多く書かれている通りで他言を要さないし、それを同じこと書いても仕方がないのでそれはカットします。

確かに主人公のとった行動が許されないとかみっともないとか、そういう考え方はあろうかと思うし、その考え方も理解はできるし否定はしません。

 ただ個人的には、「そこまで非難される案件か」というとそのようには考えられないというのが個人の見方です。なぜなら、「単純堕胎罪」(この映画で描かれているもの。便宜上、日本の名称。以下断らない限り同じ)は、その性質上、「望まない妊娠」で起きることはもちろんの通り、その性質上、「若者の軽はずみな行動で起きて、起してしまう」罪になるからです。また、女性「のみ」が客体(罪に問われる対象のこと)となるため、あまり厳密に罰すると男女同権の考え方では問題になってしまうこと、また、その性格上「道徳上おかれている類型」であるにすぎません(ほか、日本では同じような「道徳上おかれている罪」としては、礼拝所不敬罪など数個あげられます)。また、時代の背景上、国(ここでは、フランス)の宗教との考え方がどうしても干渉していたという考え方も可能です。

 さらに進めると、「望まない妊娠か、若者の軽はずみな行動で起きた妊娠」に対して刑法(に相当するもの。以下同じ)で威嚇するのみで、国(行政)の保護(援助)制度がないか、少ないか(この映画の当時の時代のフランスなので、今ほどではないのでしょう)という中では、逆に「刑法で威嚇して、出産した直後にあやめてしまう」パターン、つまり、保護責任者遺棄致死等との比較考慮も論点になってきます。結局「母体にいる胎児」か、「生まれてきた(望んでいないない)子」をあやめるかという論点で、そこは日本でも「基本的には」よほどの事情がない限り後者のほうが非難程度は高い問題です。

 しかも日本をはじめとして現在/当時のフランスその他でも、「刑法にも存在したし罪にも問われる」が、基本的には「道徳を乱す類型」として刑そのものが軽かった事情として、フランスでは「宗教の力が強かった」上に、さらに、「望まないか、若者の軽はずみな行動で起きた事情である」こと、さらに、このように「妊娠にいたった理由がよくわからない」事情で起きる出産はその性質上、「何らかの肉体的な問題を持った子」(表現をぼかしています)が起きる確率が高いことは明確に言うことができ、結局、「単純堕胎罪を厳格に適用して威嚇すること」と、「(そうした罪を明確に問わないことで結果的に起きる)福祉行政の充実のさせ方」(もちろん、当時のフランスなので十分ではなかったのは推知可能)との比較論になるため、いかんともしがたい論点もあります。

 結局のところ長文になってしまうものの、上記のような論点があるため、「当時のフランスの福祉行政その他の水準で、明確な「被害者」がいるものでもない単純堕胎をどこまで問うのか」という複雑な議論(道徳や宗教論が入ってくる)になり、映画はその一つの考え方を示したに過ぎない、というのが個人の見方です。

 …とはいえ、この映画、このような論点があることは明確なものの、実は変な減点材料もあったりします。ただ「フランス映画あるある」な「フランス映画でよくある、趣旨がよくわからない突如登場するマニアック過ぎるセリフ」の類で、すべて減点対象は下記の通りでそれほど大きくありません(補足は入れてます)。

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 (減点0.3/一部のセリフが理解しがたい)

 ・ 「動詞の直説法現在の活用は言える?」→それぞれの動詞の活用を暗唱している部分
  → この映画でこれが出てくる(主人公は文学部の大学生の子)というのがとにかくわかりにくいです。「直説法」というのが日本の中高の英語では意識されないからです。要は平たくいえば「仮定表現(英語では、仮定法)など、特殊な表現以外の一般的な表現」、もっとわかりやすく言えば「中学2年までのすべての英語の表現」といった方がわかりやすいです。

 ただ、日本で一般的に外国語として習う英語では、「法の概念」(ここでは、直説法、仮定法、接続法…等)が薄く、したがって「動詞の活用」という考え方もほぼ存在しない(基本的に、三人称単数に-sをつけるといった簡単なルールしか存在しない)ため、「主語ごとの動詞の活用」(1人称~3人称に、その単数複数で、合計6パターン存在する)という考え方が「存在しない」ためです(フランス語、スペイン語その他では普通に存在します)。

 ・ 「与格や主格が…」という部分(大学のセミナーの部分)
  → 英語ではこのような表現をしないのでわかりにくいですが、与格や主格などがある言語もあります(映画では特定できないが、わかりやすいのはドイツ語。ほか、ロシア語、ラテン語など)。
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yukispica
いぱねまさんのコメント
2023年1月4日

大変、参考になる理性的なレビュー、感服致しました 矛盾しておりますが他の否定的レビュー(子供側に依ったスタンス、品行方正を是とする道徳観)に対しての論破は、正に"我が意を得たり"と感銘を受けました
多分、今作品に否定的な人は、鑑賞後の不満、もっと言えば憤怒をどこかにぶつけてストレス解消を済ませたいと、脊髄反射のような感覚なんでしょうね
感想は寝かせた方がいいと最近強く感じるこの頃です
失礼しました

いぱねま