「【「見えないのは、いないも同じ」/映像だからこそ伝わるもの】」パワー・オブ・ザ・ドッグ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【「見えないのは、いないも同じ」/映像だからこそ伝わるもの】
Netflixで12月1日から配信となるので、レビュー・タイトルに、映像云々と書いてしまったが、可能であれば是非映画館の大画面で観ていただきたいと思う作品だ。
それほど、カンバーバッジをはじめ、俳優陣の表情を中心にした微妙な感情の揺らぎが、作品に重厚感を持たせていて、大画面で観る方が良いと思うからだ。
映画.comのあらすじには、"無慈悲な牧場主"という表現が使用されていたが、そんな簡単な言い回しでは語れない人間ドラマが、ここにはある。
個人的には、今、賞レースの中心にいるのではないかとさえ感じる。
(以下ネタバレ)
「見えないのは、いないも同じ」
果たして、そうだろうか。
フィルの序盤でのこのセリフが、ストーリー全体を通して、画面から目を離せなくする。
見ようとして見えてないのか。
初めから見てないのか。
言われて、案外、なーんだと気が付くこともあるかもしれない。
よく近づいてみたり、俯瞰してみたり、観察して見えてくるものもあるはずだ。
それは、対象が人でも同じではないのか。
様々な人の感情には、それぞれ理由があるはずだ。
そして、中には逃れようにも逃れられないものもあるはずだ。
それを見て見ぬふりをするのか。
理解を拒絶するのか。
また、自分を見つめることも同じだ。
実は、他者を見つめ、理解することも、自分自身を見つめ、理解することも同じではないのか。
虐げられ、孤独で抑圧に苦悩し、アルコールに逃れようとするローズ。
典型的な家父長制社会の中で、女性を蔑視することによって、かろうじて自我を保ち、同性愛をひた隠しにするフィル。
心優しいローズの幸福を願うピーター。
ピーターの密かに、単独で実行に移される冷静で且つ冷酷な計画。
フィルとの交流、牛の死骸、ロープ、牛の皮、炭疽症、フィルの死。
ピーター自身の復讐心もあるのか。
ローズはやっと抑圧から解放されると信じているかのようなピーターの表情。
きっと、この後も、ずっと隠されることになる事実。
映し出される場面のピースと、微妙な表情を逐一読み解いていく、人間ドラマの、実は重厚なミステリー作品でもある。
今晩は
NETFLIX作品の快進撃が再び始まりましたね。
黒人西部劇「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール」邦画の「ボクたちはみんな大人になれなかった」ミュージカル「tick, tick..BOOM!」そして、今作。
どれも、私にとっては大変面白く。
最近、西部劇って新作が掛かりませんが、邦画の時代劇と同じくお金がかかるのですかね。
NETFLIX作品で劇場で見た「ミッド・ナイト・スカイ」「ザ・プロム」「Mank」「マリッジ・ストーリー」「アイリッシュマン」「ROMA/ローマ」・・・
配信で観たオリジナル映画も、どれも面白く。
で、配信を切り替えてからも、頻繁に再契約のお誘いに来るメールの数々。商売も、映画製作も気合入ってますね。では、又。あ、返信不要です。