ある男のレビュー・感想・評価
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ある男たち、ある女たち
笑顔に隠された心のざらつき
弱者と言われたがらず、弱い人と決めつけたがる
本物
それぞれの人生の重し
目に見たり、自分が感じた事以外知る必要はあるのか?
人は誰しもが知られたくないことはあるし、話したい事がある。しかし、僕達は色々知りたがるし、噂などに色々踊らされ、その人のイメージを勝手に決めてしまって色眼鏡で見てしまっている。
しかも本人が犯したわけでもないのに、家族であったり、その周りが何かをしたからといって、その人自身が同じと思ったり、否定したりする事は違うが、僕ははそうした部分で同じ括りとして見てしまっている気がして自分の考え方など考えさせられました。
自分が見て感じた部分だけで良いはずなのに。
安藤さくらさんが言っていた、やはり別に知らなくても良かった、みたいなセリフがなんかその通りだなと思いました。もちろん子供の戸籍などはどうするねんみたいな事は抜きにして。
しかしラストのメールの場面も見ると、知ろうとしないとわからない事もあるし、逆に言うと知らない事が幸せな事もあるのかなっと思ったりしました。
最後バーでの話で思ったのですが、これは自分だけなのかもしれませんが、初めて飲み屋で会った人に、仲のいい友達や家族に言えない事を喋ってしまのかなと思ったのですが、それはきっと自分の事を知らないし、自分のバックボーンなど知らないから話せるんだなと思いました。そういう時は自分も何故か本屋で働いてると偽ってたなというどうでもいい事を思い出して映画館を後にしました。
過去に引き摺られることとは
僕って誰?
予告編や宣伝の惹句からは、
〔嘘を愛する女(2018年)〕の類似のプロットとの受け取り。
長年連れ添い、子まで成したパートナーの突然の死が契機となり
その人物の経歴が、聞かされていたものとはまるっきり違っていることが判明するとの
驚天動地の展開。
ちなみに先作は
「TSUTAYA CREATERS'PROGRAM FILM 2015」のグランプリ。
そして本作は、『平野啓一郎』による2018年刊行
「第70回読売文学賞」受賞小説が原作。
とは言え、やはりプロの文筆業者による作品は
シチュエーションの設定は似ていても、
単なるサスペンスにとどまらず、今ある社会問題を複数盛り込み
より高レベルに昇華させている。
離婚をして長男を連れ故郷の宮崎に戻って来た『里枝(安藤サクラ)』は
林業に従事する『大祐(窪田正孝)』と知り合い結婚、
長女も生まれ幸せな生活をおくっていた。
しかし、『大祐』が事故で亡くなり、
彼の実家に連絡を取ったことから、
実は全くの別人だったことが判明する。
『里枝』は旧知の弁護士『城戸(妻夫木聡)』に
身元の調査を依頼するのだが、
そこからは悲しい過去が浮かび上がって来る。
彼は実際には「誰」で、戸籍を変えてまで消したかった過去とは
いったい何だったのか。
先に挙げた「社会問題」は
大まかには「差別」とカテゴライズすれば良いか。
それは民族であったり、出生地であったり、親族が犯した罪であったりと、
何れもが自身にはどうにもできない性質によるもの。
なのに個人を識別するラベルの様に、好むと好まざるとにかかわらず
執拗に一生付いて回り、当人を評価するべく機能する。
人間の本質とは、まるっきり関係の無いことであるのに。
とは言え、考えてみれば、名前も似たような性質を持っているかもしれぬ。
本来は個々人を識別するための呼称なのにもかかわらず、
なんとなく人となりさえ現わしてしまうように思えるのは、
我々が名前に対して言霊に近い殊更の価値を見い出しているからなのかもしれない。
全ての疑問が解き明かされた時に、
主人公二人の馴れ初めのシークエンスには
実は重要なヒントが幾つも隠されていたことに今更ながらに気付く。
原作の功か、脚本の巧さかは知らぬが、
なかなかに良く出来たエピソードの埋め込み。
そして最後のシーンでは、実は人間は思いの外
容易く他人を詐称できることが示される。
ちょっとしたきっかけで、
人のエピソードを拝借する
或いは成りきるのは、普通の人でもあること。
ましてやアイデンティティーが揺らいだ時であれば、
猶更のことだろう。
要は程度問題なのだから。
冒頭とエンディングで示される絵画、
『ルネ・マグリット』の〔複製禁止〕はきわめて示唆的だ。
カエルの子はオタマジャクシ
東劇の試写室にて鑑賞。
座席がフカフカで感動した。
役者が豪華でみんな存在感がある。
序盤は窪田正孝さんと安藤さくらさんの出会いから夫婦になるまでを丁寧に描いている。
画材屋さんでナンパとかすごいな。
自分の絵を他人に見せるって割と勇気がいることなのに、見せてくれた絵が特別に上手いとかではなくて、一生懸命褒め言葉を探している感じがリアルで笑ってしまった。
家族4人。幸せに暮らしていたのに、谷口(窪田正孝)が不慮の事故で亡くなってしまうことから物語は急展開を見せる。
彼の実兄が「これ、弟じゃないです」と遺影を見ながら言い放つ。この時も淡々と会話が進むのだけれど、会話のテンポにリアリティがある。
自分の日常だと思っていた世界が実は虚構だったと知らされて驚いてしまう。
里枝(安藤さくら)が離婚する時にお世話になった弁護士の城戸(妻夫木聡)が谷口(窪田正孝)の正体、事実を確認していく。
物語はここで2つの視点に分岐する。
1つは「夫が何者であっても、愛していけるか」
2つ目は「カエルの子はカエルなのか」
後半戦の主役は完全に妻夫木聡演じる城戸に視点が移り、在日韓国人である自身のコンプレックスや一見幸せそうに見えてるけどギクシャクした妻(真木よう子)との夫婦関係が描かれています。
生い立ちを隠して結婚生活を送っていた谷口夫妻と経済的にも安定して生活している城戸夫婦の対比も面白かったです。
妻夫木聡さんが笑うと嘘くさいのはすごいなと思う。
作り笑顔の名手だと思う。絶対裏があって、激昂してキレそうな含みのある笑顔が怖いのよ。怖いの。笑顔なのに不穏なのってすごいですよね。
ラストである男の正体が判明するのですが、二転三転する物語の展開と登場人物の多さに頭がこんがらがります。
劇中でもホワイトボードを使って関係性を整理してくれるのでありがたかったです。
原作は未読なのですが、映画版と原作ではラストが違うそうです。
原作では谷口夫婦の話に視点が置かれた結末だそうです。
映画では「ある男」の過去を消し去る方法に視点が置かれた結末でした。
個人的にはミステリー色が強くなって映画版のラストでも良かったとは思うのですが、ラストを付け加えることで蛇足感があったかなぁとも感じました。
実際のところどっちだったの?
妄想?現実?とモヤッとした気持ちが残りました。
明日を生きる自分を作れるのは今の自分しかいないので、自分の生き方に後悔しないように生きていきたいなと考えさせられる映画でした。
ミステリーかと思ったら社会問題がテーマの作品でした。
見応えのある作品ですので、邦画が好きだよと言う方にオススメです。
RE:BORN
血に抗い、名を変える意味。
原作は未読です。
愛に、過去は必要ですか?
芥川賞作家・平野啓一郎氏の同名小説を「愚行録」で知られる石川慶監督が描くヒューマン・ミステリーです。
妻夫木聡・安藤サクラ・窪田正孝、俳優陣は三者三様の何役を熱演で、物語がとても引き締まりました。きっと、来年の賞レースを席巻すると私は確信しました!!
本編は、重厚なストーリーに、この上ない切ない展開で、登場人物の掘り下げも深く丁寧に描いているので、私は序盤から物語に惹き込まれました。
ヒューマン&サスペンス&ラブストーリー&ミステリー、様々なテーマが乱立していますが、ひとつとして悪目立ちせずに自然に溶け込んでいました。まさに石川慶監督の真骨頂であり、プロの手腕に感服しました。
幽霊の正体見たり枯れ尾花
2022年劇場鑑賞265本目。
結婚した夫の名前や経歴がでたらめだったことを知り、じゃこの人誰よ?という話。
謎を追う弁護士が妻夫木聡、妻が安藤サクラ、夫が窪田正孝です。
最初窪田正孝が成りすましているのが妻夫木聡かと思ったら全然違ったぜ!
安藤サクラは役によって美人と不細工を演じ分けられるのですごいですね。今回は思わず恋に堕ちてしまうような美人の役でした。
劇中妻夫木聡が在日の顔をしていると言われるシーンがあるのですが、実際はそういうことはないのでまぁセリフだから仕方ないけどちょっと無理あるなぁと思いましたね。
謎が謎を呼ぶ展開なのですが、真相が分かるにつれて期待が大きすぎたのか、そういうことなんだ、ふーんという感じになってしまい、カタルシスは低めでした。
もっと不安になりたかった
石川慶監督とは相性が合わない。とても面白そうな導入部、そして決してミステリーと解決のためだけのフックでなくて、存在の不安や文学的な問いかけのある貴重な作品だと思うのだけど、やっぱりまったりし過ぎる。「愚行録」もそんな印象なのだけど、なんか文学を映画的魅力に落とし切れてない感じがしてしまう。モラビアを映画にするパゾリーニ、ゴダール、ベルトルッチとか、モラビアじゃないけどポランスキーなどのもっと幻惑的存在論を展開してきたものが過去にあるので直線的なセリフやわかりやすい回想でなく、もっと不安を感じたかった。中盤以降のいよいよXの正体のわかってくる辺りは説明を後押しするようなものだけにみえて映画としては停滞しているように見えてしまった。そして、「アーク」もそうだったけど、豪華すぎるキャストもかえってわかりやすさを演出してしまってる気がする。この辺りは深田晃司の映画のほうが圧倒的に面白みがある。
柄本明さんが表現する闇の深さは見る者の心の闇にも迫ってきます
ええ、そうなんですよ。
高校時代はドラフト候補にも名前が上がったんですが、三年生の県予選で肘を壊して甲子園は諦めました。
その後、猛勉強で地元の国立大学に入り、研究室とちょうど立ち上げたばかりの地元の産直店のネット販売やふるさと納税とのコラボ事業を軌道に乗せたところで事業を後輩に譲渡しまして…
今度はその資金を元手に、自分の好きな映画でも作ろうかなと。主演の姉妹は長澤まさみさんと広瀬すずさん、監督はもちろん是枝裕和さんで…
(いや、それもうあるから❗️)
なんてなりすました人生を半年でいいから送ってみたい。
原作の良さをちゃんと活かしつつ、弁護士城戸の人生とある男の人生(この人生を架空と捉えるのか、3年9ヶ月の〝事実〟を含む本当の人生なのかは鑑賞者それぞれに委ねられる)をパラレルに進行させる。そして、戸籍ブローカー(柄本明さんが強烈に真骨頂を発揮❗️)を通して、この社会の闇の深さとおぞましさもまた強く印象に刻まれる。
要所要所に適材適所の実力者俳優を贅沢に配置しているから、雑と思われるようなとってつけた描写にはならないし、むしろ完成度を高めている。
(勿体なくも嬉しい限り‼️)
原作既読の上で、大変満足度の高い映画でした。
愛の物語としては、熱量が足りない
ミステリーとして捉えれば、想定の範囲内の真相で特に目新しさはない。盛り上がる箇所が少なく、愛の物語として消化しようにも熱量が足りない。
韓国籍日本在住の人を揶揄する『在日』という言葉が出てくるが、ネトウヨはともかく、エスタブリッシュメント層の人間が、あからさまに口にしたり、面と向かって差別するなんてことはまずない。もっと巧妙に排除する方法をとっているのが現実で、ステレオタイプな差別主義者が登場すると鼻白んでしまう。
ついでに言えば、死刑反対論と加害者家族の問題がごっちゃになっていて、どうも感情移入しづらい。
身寄りのないホームレスの戸籍を買うというならわかるが、戸籍を交換して兄弟がバッチリいる人間になりすます意味がよくわからない。
ラストは、なんのために足したんでしょうね。
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