「属していないという事」ある男 てけと2さんの映画レビュー(感想・評価)
属していないという事
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自分自身ではどうにもできない背負わされた人生の辛さと偏見への葛藤、成り替わりの不気味さ、味わい深い。
目の前にいてよく知っている人なのに、その人の人生の人となり、その人間の枠がなくなるとなぜこんなに不安になるのか。所属する事のチカラの強さが見えてくる映画。
正体が分かってしまうと、個人の善意や不安定さも含めてその人を受け入れられるのに、「ただの男」という極限にシンプルな何も無い状態というのは人の心を落ち着かなくさせ逆に受け入れられないものになるのだなあと感じました。
きっと「あなたがどこの誰でもかまわない」という状態は何処の誰かが前提で無ければ発生しないのかもしれない。何も知らない人という前提で始まる出会いでさえ、「謎の男」というミステリアスに見える設定に所属している様な気がしてくる。ましてや世間や仕事には枠が見えない人間は受け入れられない。
この映画では人の正体というのは、その人の所属してる環境こそが人間の正体のようで生きづらさの実感がしみてきて良かった。
犯罪者の息子だから何かしたんじゃないかという先入観をただただ生き直したかった人の物語として昇華していく工程を前半の窪田くんの控えめで温かい演技が支えているのが見事でした。
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