劇場公開日 2023年3月10日

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「あふれる思いと、ままならなさについて」有り、触れた、未来 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5あふれる思いと、ままならなさについて

2023年3月7日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

人の生のままならなさを描こうとする作品だ。宮城県を舞台に、バンド仲間を亡くした女性、伝統の和太鼓を習うも不登校になる少女、震災で大切な大切な誰かを失った人々、自死に向き合う若者たちが、群像劇のスタイルで綴られていく。

天災や戦争などによって大勢が亡くなったり、生活が激変したりするたび、人の生は、命はいかに不確かなものかと思い知らされる。身近な人が事故や病、あるいは自死によって不意にいなくなり、喪失感に長らく苦しむ人もいる。人の生のままならなさ、と抽象的にとらえるならそれはありふれたものかもしれない。けれど一人の人間、その人自身にとってはリアルで切実でかけがえのない感覚であり時間の連なりなのだ。

大勢の若者が自殺していることに胸を痛め、なんとか現状を変えよう、未来を希望あるものにしようという思いで企画が立ち上がり、多くの若手俳優が賛同し参加したという。名の通ったキャストたちとの演技力の差は当然ある。脚本は詰め込みすぎで、演出も洗練されてはいない。けれどそれも、あふれるほどの思いがあるからこそ。この映画のままならなさも、人の生のままならなさを否応なしに思い出させる。

高森 郁哉