「ブルーサーマルにのって」ブルーサーマル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ブルーサーマルにのって
空を飛ぶ。
かつては人類の夢だったが、今は仕事や娯楽の面で空を飛ぶ事は当たり前になっている。
誰でも自由に空を飛べる時代。
改めて考えてみるとスゲー事だが、それが大学の部活でも行われているとは…!
疎いもんで、てっきりフィクションだと思っていた。調べてみたら、あちこちの大学に“航空部”なるものが存在し、大会も開かれている。
決して趣味や遊びの延長線上ではない。“鳥人間”とも違う。
専門的な知識を勉強し、飛行許可証も取り、本物のグライダーに乗り、真剣な姿勢と憧れで空へと飛び立つ。
学生時代に航空部に所属していた原作者の実体験を基にした小説をアニメ映画化。
キラキラしたキャンパスライフに憧れていた大学一年生の都留たまき。(最初、“つるた・まき”だと思ってた…)
アクシデントで航空部のグライダーを損傷させてしまい、訳ありで体験入部。
開幕は青春スポ根ものあるあるやベタな展開で低空スタート。
が、たまきが初めてグライダーに乗って大空に魅了されるのと同時に、見る側も心地よく引き込まれる。
この浮遊感!
風をこの肌で感じ、雲の中を進み、大空が青く美しい擬似体験…。
アニメだからと言って侮れない。いや、実写では『トップガン マーヴェリック』ぐらいじゃないとなかなか体験出来ない。アニメだからこその表現。
空は憧れや夢だけではない。
一つ間違えただけ…工具一つ紛失しただけでも命取りに繋がる。強いては死と隣り合わせ。
部活動とは言え、本物のグライダーを使う危険性。
グライダーを損傷したり、工具を紛失したり、ヘマが多いたまき。
感情のアップダウンは激しいが、基本的な性格は明るくポジティブで社交的。ライバルチームのイヤミなエースとも打ち解ける。
グライダー乗りは初心者。基本的な事も何も知らない。が、勘の良さ、天性の才を持っている。エースの先輩を感嘆させるほど。
全くの初心者が失敗を繰り返しながら少しずつ上達していくと言うより、才能を持ち併せていてみるみる開花していく。
ご都合主義な設定のようでもあるが、1クールのTVシリーズならまだしも2時間弱の尺に収めるのに展開上致し方ない。その方が話はスムーズに進んでいく。
が、話自体はちと詰め込み過ぎで、急ぎ足にも感じる。
ひょんな事からの入部~空を飛ぶ魅力。
練習試合、強化合宿、新人戦。
専門的な知識や用語も飛び交う。
王道青春スポ根展開に、たまきとエースの倉持と教育係の空知の三角関係ロマンス要素も滲ませる。
各々の進路。倉持はドイツへ。そこで事故が…。
たまきの設定も。
グライダー乗りの才は元々スポーツ万能だったから。練習試合で再会した腹違いの姉との確執。複雑な家庭環境。
ここら辺、後からWikipediaで詳細を知り、劇中では説明不足でいまいち把握しづらい。
話の展開やキャラ描写に惜しさがあった。
TVシリーズや実写でも活かせられる題材だが、本作でも醍醐味は充分。
特異な競技の部活に打ち込む青春。
人はいつでもこの青く美しい大空へ憧れを抱き続ける。魅了され続ける。
何故この大空へ飛び立ちたいか、感じさせてくれる。
さあ、ブルーサーマルにのって。