劇場公開日 2022年3月4日

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「ええぃ!青凪のツル・タマキは化け物か!」ブルーサーマル おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ええぃ!青凪のツル・タマキは化け物か!

2022年3月5日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

本当は「余命10年」を観たかったのですが、上映時間の都合が合わず、やむなく本日公開の本作を鑑賞。事前情報なしで臨みましたが、予想以上に楽しく、気持ちのよい作品でしてた。

物語は、長崎から東京の青凪大学に進学した都留たまきが、ひょんなことから体育会系航空部に入部することになり、そこでグライダーに同乗させてもらい、大空を飛ぶことに魅了され、仲間との友情を育みながら大会優勝をめざす姿を描きます。

キャラデザはあまりパッとしないものの、表情や動きにメリハリがあり、人物同士の関係性も相まって、どんどん魅力的に映ってきます。特に主人公の都留たまきは、喜怒哀楽が豊かに表現されていて、素直な人柄に好感がもてます。ここに主将の倉持や先輩の空知が関わり、しだいに仲を深めながら、淡い恋心も見え隠れする関係性も悪くないです。「USHI」「MAGURO」等のおもしろTシャツを着ていた、同級生のメガネ女子も何気にお気に入りです。

本作ではグライダーがテーマとなっているのですが、コクピットから見た大空や眼下に広がる景色が美しく描かれ、独特の浮遊感も伝わってきて、観客も空を飛ぶ魅力が味わえます。また、エンジンのない航空機ならではの操縦技術も興味深かったです。ワイヤーで引っ張って離陸することは知っていましたが、その後は上昇気流をつかまえて、高度を上げて滑空するとは知りませんでした。この上昇気流をサーマルと言うそうで、本作のタイトルにもなっています。

キャストは、主人公・都留たまき役になんと堀田真由さん!声優初挑戦とは思えない、堂々とした演技でほとんど違和感なしです。脇を固めるのは、島崎信長さん、小松未可子さん、小野大輔さんら、一流声優さんたちで、安心して作品世界に浸ることができます。

ただ、気になることもちらほらありました。中でも、最も気になったのは脚本の荒さです。投げっぱなしの伏線というか、思わせぶりな設定が、ノイズとして感じられました。以下に少し挙げてみます。
・ツルタマちゃんの覚醒。ニュータイプですか?
・空知の退部騒ぎ。その後も普通に活動してますけど?
・朝比奈の足と倉持との関係性。過去に何かあった?
・倉持の母の死。描く必要あった?
・倉持の墜落。 彼の機体はどんな状態で発見されたの? 本当に墜落? 失踪? 何してた?
・異母姉妹の和解。あっさりすぎない?
・三角関係の行方。中途半端すぎない?

見方を変えれば、エピソードの大渋滞とも言えます。その一方で、もっと観たかった、グライダーの知識、グランドスタッフの役割、チームの連携などは描かれません。特に、ツルタマちゃんの座学シーンがないまま、あっという間に操縦を覚えて、しかもチームのエースって!? アムロの再来かと思いました。

鑑賞後に知ったのですが、原作があるのですね。だから、ストーリーが深く広がりそうなエピソードが散りばめられていたのだと納得しました。でも、それなら先にテレビアニメで1〜2クール描いて、劇場版はそこからのオリジナルストーリーでよかったんじゃないかなと思いました。

おじゃる