「童話は時代を越える」ほんとうのピノッキオ よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
童話は時代を越える
童話の中のメッセージは時代を超えて我々観客の心を動かすのだなと強く思った。
劇中でも金貨を埋めてお金をいっぱいもらおうとするピノキオ(無論詐欺師に騙されてるのだが)に対しコオロギが言う
「すぐにお金を稼げるというような甘い話には耳を貸すな」
という忠告は現代の大人達にも言えるのではないだろうか。
「〇〇をするだけで収入アップ」や「貴方も明日からお金持ち」というようなキャッチコピーがつけられた自己啓発本が飛ぶように売れ、その手の詐欺が絶えない現代社会にこの童話が実写化された意味はあったと思う。
そういうところがなくても子供の良いところ、悪い所をどちらも余すところなく描いた原作の凄さには驚嘆する。
最初ピノっキオは様々な悪者に騙されたり、お父さんが買ってくれた大事な教科書を売って娯楽を求めたりするが、人形使いから解放されたのは紛れもなくピノッキオの純粋さに人形買いが心を打たれたからである。
こういうところで子供にしかないものを描いていて素晴らしいなと思った。
終盤おもちゃの国へ行く馬車にピノッキオが乗ろうとしてしまうところでは思わず首をブンブンと振りながら「行くな!ピノッキオ!!」と心の中で叫んでいた。
それくらい物語に没入させたのは作品の美術や役者の演技などの要員が大きい。
特にピノッキオの人形感を不気味になりすぎずに表現したCG?特殊メイク?には舌を巻いた。
ピノッキオを演じた役者さん自身も子供らしく伸び伸びと演じていてそれがピノッキオの未熟さ等々に自然につながっていたように思う。
またピノッキオのお父さん役の方も素晴らしかった。
お父さんの子供を思う愛が素晴らしかった。
さらに、ピノッキオが強盗(に扮した狐と猫)に追いかけられているところなんかはまるでアトラクションのよう。
また、この作品では必ず何かものをもらう時に対価を要求される。
それが金の時もあり、物の時もあり、労働の時もある。
ピノッキオが苦労せず手に入れたもの(お父さんからもらった教科書や人形買いから貰った5枚の金貨)はすぐに無に帰してしまうが、ピノッキオが最後羊農家で苦労して手に入れたものはお父さんの身体を治したり、自分たちの幸せに還元される。
自分自身が苦労して手に入れたものは自分の財産となりそれが幸せを呼び込むというメッセージが表されていてよかった。
今更そんなメッセージに感動してるのかと思うかもしれないが、実際今の時代には楽して楽して稼ごうとする人がいっぱいいることを考えるとあながち馬鹿にもできないのではないのだろうか。