「素直な狂気をはらむ」ほんとうのピノッキオ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
素直な狂気をはらむ
ポスターが公開された当初、なんだこのピノキオは!?と驚き釘付けにされました。ピノキオの物語は子供の頃の見た記憶はあるのですが、完全にボヤーっとした記憶しかないです。嘘をついたら鼻が伸びるとかの基本設定くらいしか覚えてないです。休日は中々に混んでいたので、平日に鑑賞。
今作、とにかく造形や撮影が素晴らしいです。ピノッキオの人形ぽい特殊メイク、色彩豊かな背景、自然描写と、アカデミー賞の美術の賞にノミネートされるのも納得な一本でした。特に強烈だったのはカタツムリのデザインです。気持ち悪さもありつつ、何か包み込むような優しさ、だけどカタツムリ特有の粘膜があり、歯痒いバランスが見事だと思います。
ただ、ストーリーはやや冗長にも感じました。丁寧に描いているのは分かるのですが、どうも長く感じてしまいました。ピノッキオが色々なところへ出向いては世話になったり、見放されたりの繰り返しなので、少しもどかしくなりました。これはアニメ版では感じなかった感覚です。でも、その丁寧さが良い方向に働いているところもあり、ピノッキオの傲慢さ、子供ならではの残虐性を強調しているようにも思えました。リアルなデザインだからこそ成せる技だなと思い、関心しました。
役者陣の演技も好演で、特にキツネを演じたマッシモ・チョッケリニの目をかっ開いた圧のある演技、とても不快であり、最高な演技でした。ピノッキオの意地の悪さも最高です。
終盤にまさかの巨大ザメが出てきてくれて、少ない出番で全身すら登場しませんが、サメ好きとしてはこのサメの正体が知りたいなと思ったくらい好きなデザインです。アサイラムさん…チラチラ。喋る哀れなマグロも中々に好きです。
最後は原作通り、ピノッキオが人形から人間へと変わるところで物語は終わります。バッドエンドを経てからのハッピーエンドでした。
想像を超えてくるものはありませんでしたが、圧倒的なデザイン性、役者陣の好演、背景の美しさと、優等生的映画でした。アニメ版も見返してみようかなと思いました。
鑑賞日 11/8
鑑賞時間 14:50〜17:05
座席 I-16