「やっと自分たちの過去へ」社会から虐げられた女たち R41さんの映画レビュー(感想・評価)
やっと自分たちの過去へ
フランス作品
フランス人がした魔女裁判の歴史は、ヒットラーのしたことと大差はないはずだが、都合の悪い歴史にはすぐに蓋をされる。
しかし、その蓋を開けるフランス人がいるのも事実だろう。
自分たちがした過去
その何が恐ろしいのかさえ検証されることなく蓋を閉ざしたことに対する一矢。
ここを題材にしたのは彼らにとっての大きな一歩。
さて、
虐げられた人を題材にした物語は多くの国々にあり、それを大げさにデフォルメした作品は多数あるが、この作品は逆に控えめにデフォルメされているのだろうと思った。
ここにも登場する「正しいこと」
時代によって変化する「正しさ」
正しさとは、誰かにとって都合がいいことを正当化するためのものでしかないのかもしれない。
この作品が提示していることはブルジョアがしてきた行いへの反省を促すために、一人の女性の特殊能力を用いて表現している。
その歴史的背景と当時のものの考え方
父という絶対と男性社会
40年前に母がなくした大切なペンダントをその能力で発見した娘に対し、精神病院へ閉じ込めるという観念は、現代では想像できないほど歪んでいる。
しかし、
この作品が挑戦したのは過去に対する断罪よりも、その先にある統合または調和なのだろう。
独房に閉じ込められたウジェニー
自宅へ帰ってきたジェヌビエーブ
両者が服を脱ぐ姿がシンクロし始めている。
それは他人同士でも心を寄せ合うことができるという表現だと思った。
そもそもこの物語のすべてが対比で構成されているが、それ故、調和のような概念が浮き出てくる。
加えて「心だけはいつも自由」にできることも示唆している。
そのテーマ性や当時の雰囲気などはとてもよく作りこまれていた。
ただ最後のまとめ方は詰め込み過ぎていた。
歴史上、あのような人体実験的な医学や科学が大きく変わったのは何に寄るのだろう?
それを混ぜ込み、歴史の変換があったという物語にしてほしかった。