「今は亡き父の姿を思い出した」茲山魚譜 チャサンオボ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
今は亡き父の姿を思い出した
今は亡き私の父は好奇心旺盛な人だった。小学生だった私に水槽の水の量をどうやって測ったらいいのか相談したり、看板に書いてある言葉がどんな意図で書かれたのか話し合ったり。息子を試すのではなく自分が知りたいから、身近な人に聞いているという感じだった。穏やかなのに内に秘めた熱を持っていて、自然と人が集まってくる。本作に出てくるヤクチョンを見て、なぜか父を思い出してしまった。
島に流刑となり、絶望するのではなく新しいことに出会えると考えるヤクチュン。自分の知らないことに詳しい若者に素直に教えを請う。そして島の若者・チャンデもヤクチュンの人柄に触れ師と仰ぐようになる。
そんな2人のやりとりや、島の人達との交流がとてもよかった。だから後半しっくり来なかったのは残念。あまり感動できる終わり方ではなかった。ここらへんは史実に基づく話だからあまり脚色できなかったのかもしれない。いや、映画なんだから史実に忠実じゃなくたっていいじゃないか。
本を書いているヤクチュンの姿を見て、そういえば父はかなり年をとってから習字を始めたななんて思い出していた。こんな映画観たんだよなんて話を父にしたことはなかったが、この映画だったらそんな話をしてもよかったな。
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