「謎解きを期待して…」ナイト・ハウス うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解きを期待して…
理不尽な映画だ。
あるゾンビ映画のレビューで、ハマらなかった理由を書くとネタバレになってしまうというジレンマを感じたことがあったが、その時と同じだ。細かいことが書けない。
見せ方はポイントが高い。ビジュアルが非常に巧みで、最後まで緊張感を保っていられた。メジャーな俳優さんが出ていないだけあって、どうしてもB級感が抜けないのに、それを取り戻すビジュアルだったと思う。
よく、壁のシミなんかが人の顔に見えたりすることがあるが、ちょっとしたトリックでそれをやっている。一瞬の錯覚なのに、まるで見えない人がそこに存在するかのような演出が見事だった。
心理的に不安がどんどん募っていく構成なので続きを見ないではいられない。これは死んだ夫の仕掛けなのか、ただの妄想なのか、はたまたアルコールによる幻覚なのか、ベス(レベッカ・ホール)の困惑ぶりがとても印象深い。
雰囲気の恐さをノリで楽しめる人にはうってつけの映画だろう。
私はムリだった。
-------------以下ネタバレ-----------------
謎解きがお粗末すぎる。最大の謎は、夫が死ぬまでこれほどの疑惑にベスが気付かないでいられたことだ。「生きていたら聞き出せたのに…」ということらしいが、生きている間、同居する夫にこれだけの疑惑があったら普通は気付くだろう。まず浮気しているんじゃないかという疑惑。DIYで自宅を改装して自分の趣味を追求する優しい夫にしか見えないが、それは見せかけで、殺人鬼が自分の正体を隠すために別宅を建ててそこに都合の悪いものを隠しておく。何のために湖の鏡写しになるような配置で建設する必要があるのか。ものすごい労力と、お金が必要だろう。とても一人でこっそりできることではない。
ベスの感情も支離滅裂。愛していた寂しさを紛らわすために酒におぼれていく。「もう一度会いたい」という気持ちを募らせていく。とうてい理解できない。普通は逃げ出すだろう。一応友人の忠告という形で「逃げなさいベス」みたいな展開があるが、肝心のベスは疑問の追及にハマり込んでいく。
そして結末がうやむや。どうにでも解釈できるエンディングにはモヤモヤ感が抜けない。謎は謎のまま残ってしまう。最大の謎は死んだ夫の目的だ。何がしたかったのか。欲望のままに、妻を殺してしまいたかったのか、それを避けるために何人もの女性を毒牙に掛けていったのか、はたまた全部未遂だったのか。ベスはボートでどこに行こうとしていたのか。或いはどこに連れて行かれようとしていたのか。影のようなものは悪霊なのか、ただの錯覚なのか。
説明がないまま、映画は終わってしまう。
2022.1.28