世の中にたえて桜のなかりせばのレビュー・感想・評価
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嘘っぽさが難点
タイトルは古今和歌集、在原業平の和歌「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」からとったのでしょう、意味はもし、世の中に桜がなかったら「咲いたかな」「もう散るのかな」と思い煩うこともなく春を穏やかにすごせたのに、と言った桜を愛でる喜びとは逆説的な歌です。タイトルであえて下の句を省いたのは、それでもやはり桜を愛でたいという本音推しなんでしょうかね。
本作公開後に亡くなられた宝田さん、恵三老人と同じ満州からの引揚者、学校でいじめにあい不登校の咲に自身の境遇と比べたら贅沢な悩みだろうと、それとなく伝えていましたね。
和歌をタイトルに持ってきただけに格調高さを出したかったのでしょうが、若者が遺書を強いられる職業って何だろうとミステリー調に引っ張るし、枯れた老木に満開の桜を染める技は高校生でできるCG?、また教師のくせに酒浸りで生徒に慰められる様などリアリティに欠けた設定、他人を思いやり行動力にも長けた主人公なのに不登校でバイト生活というのも不自然、もう少し練って欲しかった。
伝えたくなる映画
この映画が伝えたい事って、いくつか有ると思うんです。
その中でも、一番伝えたい事は、伝えるという事自体なんじゃないかと思ったの。
私、おっさんなので、この映画の主人公二人の間の年代なんです。
私くらいの年代だと、上の世代から教わらなければならない事もまだまだ有ると思うし、下の世代に伝えたい事も出てきます。
伝える事が出来るのって、学んで来た知識と積み重ねた経験が殆どですから、その人の人生そのものって言い換えても、過言じゃないと思うんです。
それでですね、終活っていろいろな目的が有るのでしょうけど、伝えたい事を残す目的も有るんじゃないかな。
この映画は、宝田さん自身の終活の一部なんだろうと思います。
敬三の戦争に関する話は、宝田さんの体験に基づいているのでしょう。
これは、一人でも多くの人に伝えたかったんだと思う。
それ以外にも、宝田さんの伝えたい事が詰まった映画だと思うの。
それから、教師って職業は若い世代に何かを伝える大事な役割を担ってます。
ただ、若い時は目上の人の話を素直に受け入れられない事が、多々有りますよね。
それでも、言葉が誰かの心に届いて影響を与えたのなら、伝えるという職務を果たしているのじゃないかな。
私も人生の後半に入っているので、若い人が顔を上げられる社会を構成する一員にならないといけないんだろうなと思いました。
この映画、人に伝えたくなる映画ですね。
何人の人が読んでくれるか分からないけど、いつもより少し真面目にレビューを書いてみました。
桜が下を向いて咲く理由
宝田明さんの遺作。
れんたん(岩本蓮加)の初々しい演技が微笑ましく、映画初出演にして初主演ながらそこまで悪くないなと思いました。これからもどんどん映画やドラマで演技して欲しいなぁ…
宝田明さんの最後の演技を目に焼き付けよう、と云う姿勢で鑑賞しました。宝田さんは、私が初めて名前を覚えた俳優さんでした。ファンであるゴジラシリーズを通してその存在を知りました。ゴジラは同期であると語り、特撮関連のイベントに出られていることも多く、ゴジラ・フェスにてステージに立っているお姿を生で拝見して、感無量でした。
本作では、長い俳優人生で初めてエグゼクティブ・プロデューサーを務め、ご自身の過去(満洲での戦争体験など)を反映させた役を演じていました。本作への並々ならぬ熱意とそこにこめられた想いの大きさを想像し、心揺さぶられました。
れんたん演じる咲を見守り、自身の妻の終活に悩んでいる敬三を、とても温かみのある演技で表現されていました。
終活と桜と云う一見相容れないように思える要素を、出会いと別れ、生と死の象徴として捉えていた本作のテーマを端的に表した敬三のセリフ―「桜は下を向いて咲くんです。私たちが上を向くためにね」―が、す…と胸に沁み込んで来ました。
人生、俯いていてはいけない…。桜の季節に、背中を優しく押してくれるような、爽やかな余韻に浸りました。
改めて、ご冥福をお祈り致します。
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