「今と、もう少し先を生きようとする純情」余命10年 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
今と、もう少し先を生きようとする純情
原作は読んでいません。
涙を必死にこらえるよりも、必死に生を感じようとする茉莉の純情と、茉莉に愛情を注ごうとする和人の純情に静かに胸を打たれました。
哀惜に押し流されてしまうことなく、わずかな命の時間をしっかり描き出していて、思ったより冷静な読後感。秀作だと感じました。
◉流れる時とビデオカメラ
小松菜奈さん演じる茉莉が、亡くなった女性からもらったビデオカメラで、目に映る季節の流れを撮り始める。恐らくはそれまでなかった習慣。それはもしかしたらもう見られないから残すだけではなく、早すぎる時間の中に留まるための、おまじないだったような気がしました。考えすぎかとも思いますが。
ほんの微かに笑みを浮かべながら、シャッターを切る茉莉を見ていて、そのように感じたのです。
カメラに保存していた画像を次々に消去していく場面は、やはりドキドキが止まらなかったですが、出会いの夜桜のシーンだけは残った。昼の眩い桜と、夜の海に沈んだ桜。どちらもきれいでした。
◉賑やかで寂しい街中で大人になる
居酒屋の中のはしゃいだ明るい光景と、居酒屋が並ぶ街のそこはかとない淋しさ。それも良かったです。
最近観た「明け方の若者たち」「ちょっと思い出しただけ」にも、同じような夾雑な街の様子が出てきたけれど、情感溢れていました。
和人は、結局はそんな街中で一人前になる。仕事を覚えて、恋をして。あと少しだけ、和人のエピソードが描かれても良かったかなと思いました。
途切れ途切れに、それでも綴られていくパソコンの文章。生きるのは、ここまででいいかなと言う茉莉の胸の内を告げるようで、切なくなりました。
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本作、余命僅かな茉莉が和人を励ますところが切なかったです。
美しい日本の四季も刹那的で切なかったです。
-以上-