「健康なからだを持つ私たち」余命10年 よしくんさんの映画レビュー(感想・評価)
健康なからだを持つ私たち
死にたくなくなるから、死ぬのが怖くなるからと恋をしないと決めたのに人を好きになる、そういう経験ができたのは良かったかもしれないが、悲しみを感じる度合いが強まったのはその通りだろう。スキー場に行き、夜シャワーを出しっぱなしで泣き声が彼に聞こえないように泣いている姿は印象に残るシーンだ。彼と過ごした楽しい時間の大きさいつもの日常を大きく超え、ふと自分の現実に戻った時の寂しさは、悲しみのどん底を感じさせられただろう。また、ヤケになってレストランでたくさん注文して食べるシーンなど、人生を諦めなければいけない悲しみと悔しさをどうぶつければいいか、日常を少しだけ踏み外す形でささやかな人生へ抵抗する姿も共感を呼ぶ。姉も優しいが、姉妹であればどうしても比較もし、時に苛立つのは無理もない。親も苦しい。家族みんなが苦しいのだ。これは映画であるが、このような苦しみを抱えていらっしゃる家庭もいくつもあるのも辛い現実だろう。
同窓会に行き、こないだ会った人が自殺未遂をした。病院に出向くことになり、彼の話を聞く。自分は生きたくても生きることを諦めなくてはいけないのに、自分に対する当て付けかと感じられただろう。何やってんの? あんたは、健康なカラダがあるでしょう。ちゃんと生きなさいよ! そんな思いだったと思う。
小松菜奈さんの熱演をはじめ、演者やスタッフの方々が作品の世界観を感情が揺さぶられるリアルな映像として、私たちに届けてくださり感謝します。そして、現実にこの病気も100万人に1人とはいえ、日本だけでも100人以上はいるでしょうし、他の病気で闘われている方々の苦しみ、悲しみ、悔しさ、そういう心情について、簡単に励ますことはなかなかできませんが、せめて健康で居させて頂ける我々は、その状況に感謝して、日々精一杯生きなくてはな、と改めて感じさせて頂きました。