劇場公開日 2021年11月5日

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「【ソウル/アレサの帰還】」リスペクト ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【ソウル/アレサの帰還】

2021年11月7日
iPhoneアプリから投稿

アレサ・フランクリンが、もし存命なら、コロナ禍で奮闘する医療関係者や、困窮している人に向け、更に、その救済を訴えるために、彼女は歌っていたのではないかと思う。

この作品の、エンドロールと共に映し出されるアレサの実際のライブ映像は胸を打つ。

アレサは、アメリカ、いや、世界で最も愛されたシンガーのひとりだろう。

この映画で取り上げられるチャーチ・コンサートは、映画でも説明があるように、別途、映像に収められて、長い長い紆余曲折を経て、日本では2021年5月に「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」として公開された。

あのミック・ジャガーが最後尾の席から唐突に立ち上がり、踊る、あの作品だ。

この中で、アレサに教会に戻って来て欲しいですかと問われた牧師であるアレサの父は、「アレサはずっと教会と共にあったんです」の答える。

この映画「リスペクト」は、公民権運動が盛んになる少し前くらいから、アレサが様々な困難を経て、家族や友人の元へ帰還するまで、つまり、チャーチ・コンサートまでを描いている。

アレサが、多くの人々から愛される理由は、他を圧倒する楽曲や歌声の他に、複雑な家庭環境や家族、幼くして子供を産むことになった性的虐待、DV、公民権運動への関わり、宗教との葛藤、アルコール中毒を含む様々な困難を乗り切った姿が感動を呼ぶからだと思う。

黒人も白人に対して壁を作りがちななか、アレサは、自分の歌に合うことが最も重要だとして、白人ミュージシャンのバンドを真っ先に受け入れる。

Groovy。

アレサは人種の壁を取り去っていた。

一方、現在では白人至上主義や民族主義の象徴として扱われがちな父権主義(パターナリズム)は、黒人社会でも当然のようで、長い間、格闘しなくてはならない対象だった。

日本で、女性の社会進出や、夫婦別姓、LGBTQ差別禁止にネガティヴなのは右翼政治家やネット右翼などの民族主義者のように考えられがちだが、実は、背景には父権主義も存在していることは明らかだ。

もし、歌だけじゃなく、アレサや、アレサの生き方に共感する人がいたら、見知らぬ人のために、ちょっと差別を止めようなんて活動に賛同して欲しいと考えたりする。

ジェニファー・ハドソンの歌声も良かった!

きっと、アレサの魂は、ソウルはまだ息づいている。

ワンコ