笑いのカイブツのレビュー・感想・評価
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原作を読んで追記しました(2024.1.11)
どこまで実話なのか、人物造形もどこまで本当に近いのか何も知らないのですが、やはりいくら才能があっても、アルコールで自壊(自戒ではなく)していくのは見苦しくて見ていられない。
〝世間〟と折り合いがつけられないことが宿命的な悲劇であるかのように、菅田将暉さんに語らせることで説得力を持たせてしまうのは、なんかずるい。
〝石の上にも三年〟だなんてことを昭和的な感覚で説くつもりは毛頭ありません。
どんな業界でも自分を認めさせていく戦略が形を成していくためには相応の時間はかかるし、業界の既存のシステム(体制)を利用するにしても、破壊するにしても根っこのところを把握するにはやはり3年程度は必要。
さりとて、↑というようなことを20歳前後の若者が理解するのは難しい。難しいけれども、君には西寺くんがいるじゃないか‼️
自分にチャンスをもたらしてくれる存在に気付けないのは、笑いの才能はあっても成功する才能はないということにならないだろうか。
才能についてのトリセツとしては、片手落ち。
(片手落ちは本来、片方への配慮が欠けているという意味で、身体的な差別用語ではないのですが、字面から誤解されることが多く、差別的な用語とされてるらしい)
こんなふうに思うのは、宇宙に行った前澤さんの映画を見た後だから?
【原作を読んでからの追記】
ツチヤは確かにお酒に弱い。弱いのに、いや弱いからこそお酒に逃げる。
でも映画で描かれているほど人には絡まない。ピンクとの会話もシラフではなくとも泥酔はしていない。
これは極めて個人的な感覚だが、ツチヤにとってのカイブツは『ファイト・クラブ』のエドワード・ノートンにとってのブラピのような存在なのではないか。
笑いに取り憑かれ狂ってしまったもうひとりの自分。
カイブツが笑いを生み出すための努力は凄まじい。
図書館で片っ端から本を読み、一日2000個のボケを書き記していく。
そんなカイブツが人に媚びたりおべっかを使えるはずがないのに、そのスキルがないと世間からは相手にされない。カイブツを飼い慣らせない自分が自分を追い込んでいくということか?
タイトルなし
正直…
お前、ぜってぇここで終わんねぇからな!!
M-1の2018~2023年大会をイッキ見したり、公式YouTubeチャンネルに上がっている漫才を見まくったりと、お笑いに費やした今回の年末年始。ツチヤタカユキに関しては、オードリーのオールナイトニッポンで「ツチヤが大阪に帰った」と若林が話していたのを聞いたことがあるくらいで、全く知らない。なのに、予告にめちゃくちゃ惹かれて、尚且つ個人的にお笑いブームが来ていることもあって、初週にして1月公開映画の1番の目玉だと思っていました。
その期待は一切裏切られず、寧ろ期待より何倍も何十倍も素晴らしい作品でした。2024年、まだ始まったばかりなのに、こんなにもいい映画が見れるなんて。本作の主人公・ツチヤタカユキの自伝本は読んだことないけど、この映画で彼の壮絶な人生が直に伝わってきたし、恐らくものすごい完成度。監督自身も相当なお笑い野郎なんだろうなと。
それもそのはず。2023年のM-1王者に輝いた令和ロマンが漫才監修を担当。まだ優勝する前にこの映画は制作されていた訳だから、無論その段階で認められていた令和ロマンも凄いが、ちゃんとこの2人に声をかけ、しかも作品の肝となる部分を任せるなんて、それだけで制作陣がこの映画に描ける強い思いが見て取れる。THE SECONDで優勝したギャロップも演者として参加。生半可にお笑い映画作ってるんじゃねぇぞ。そう言っているような気がした。
本作で語らずには通れないのは、岡山天音の怪演。
その姿はまさに、"笑いのカイブツ"そのものであり、キャリア史上最高と評される時に使われる文言、演技を超えた役の憑依だった。魂を笑いに授けた男をこれまでかととことん熱演。ここまで来ると怖い。今1番日本映画界を牽引し、必要とされている俳優は岡山天音と言っても全く過言では無いだろう。そんな彼氏の脇を固める実力派俳優陣も見もの。菅田将暉、松本穂香の強烈なインパクトも最高だが、仲野太賀演じる西寺(元はオードリー若林)は岡山天音に負けじと凄まじい。ラストのあのセリフは思い出しただけでも鳥肌が立つ。
笑いを求め、笑いに取り憑かれた男・ツチヤタカユキ。つまらん情報番組の誘いやら、上司の顔色と金儲けだけを考えるスタッフに呑まれず、オモロいだけが正義だと信じ、生きてきた。ただ、笑わせたいだけなのに。随所に挟まれる大喜利だけで彼の才能は見えてくる。周りに合わせることは自分を殺すこと。でも、周りに合わさないと自分は殺される。生きずらい世の中で苦しみ、もがき、嗚咽し、人間関係不得意が為に壮絶な人生を送ってしまったその姿は、どうも他人事に思えず、胸がぐちゃぐちゃになった。
笑いと悪
カイブツ、彼自身とも意味取れるし、彼を魅了し地獄と見せてしまった世界そのものかも知れない。
まあ、どの世界どのジャンルにもカイブツは居るモノでして。
今作、現代のお笑い界を舞台にそこでしか生きて行けない、いやそこですら生きて行けない若者を主人公に。
あ、ちょい聞いた事有るわ、TVかラジオで若林がぶっ壊れてるけど天才な放送作家が居たって。
彼の事だったんだな。
お笑い界ってさ、昔っからだけど普通に生きて行けない者の受け皿、異端の落ちる底って言われてるけど、彼に取ってもソレだったんだろうな。
そんな中でも常識派、彼に取っての神と若林は描かれる、ファンなら知ってると思うけど若林だってそっち側だし、十分ブッ壊れてる。
恐らく若林は彼の中に自分を見たんだろうし、お笑い界芸能っても組織社会だから個を理解しない者も居て、泥水煤った人生は厳しく、周囲スタッフはあーなっちゃうんだろうな、当たり前だししゃあ無いわな。
そんな世界で成功なんか掴んだら異常になっちゃうよな。
レイプまがいに弱者から平気で性搾取したり、ピュアキャラで売りながらそこに大きく加担し保身しか考えなかったり。
やっぱ面白けりゃ許されるって幻想だし、地獄に身を置くからこそ誰かの支えが無いとダメなんだよ。
三人のカイブツが領域展開‼️❓
余談だが、岡山、菅田将暉、仲野太賀は十年来の親友らしい、本物の友情出演。
そして、三人とも、事前準備の凄さと、脚本への影響、天性のカリスマ、芸術への含蓄、に秀でている。
主人公は、いささかデフォルメされていて、こんなんで社会的成功どころか、人間社会で生きていけるんか、レベルだが、その心象風景までを表している、と解釈すれば、なるほどとも思う。
俳優としての怪物性を、一つ挙げれば、仲野太賀の漫才は、いくら令和ロマンの指導を受けているとはいえ、それを超えて来そうなほどの出来栄え、それだけでも観る価値あり。
岡山の狂気と、三人の友情、これは映画史に残るような見どころだと思う。
それぞれ、主演賞、助演賞に値すると思う。
稀代の名優たちの演技を観るために、是非。
負け犬界のレジェンド
僕たちの物語でもある‥
“純”
純粋すぎて‥まっすぐ過ぎて‥社会の渦に飲み込まれそうになるから抗って。
この作品では主人公の純度が高すぎるので、そこへの反発も極端に映るかもしれないけれど、これは僕たちも日常で味わっている光景なのだと思いました。
僕たちが生きているのは、確かに“地獄”なのかもしれません。
僕たちは自分のやりたいことと社会との間で、うまくバランスを取るという課題に日夜神経と体力をすり減らしています。それ故に病むこともあります。
そこに疲れることを避けるならば、むしろ無気力の方が楽かも?‥と考えてしまいそうになります。しかし、抗ってこそ!と奮い立ってこそ生きることなのだとこの作品から教えられました。
明日からまた生きよう!
エンドレスワルツ
人間関係不得意
伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキ氏の私小説が原作の、笑いに取り憑かれた一人の男の数年間を描き出した物語。
最初から最後まで、とにかく不器用なツチヤの姿は見ていてなかなかキツいものがありました。普通のことが出来ず、とにかく頑固で自分の考えを曲げない。一つのことに固執し、がむしゃらにのめり込めるのは才能だと思いますが、それだけで上手くいくほど、世の中は単純じゃない。
壁にぶつかりながら、ツチヤなりに変わろうと踠く姿は応援したくなりましたが、ツチヤのような人が職場にいたらやり難いよなぁ…というのが正直なところ。
癖が強すぎるツチヤですが、西寺をはじめ、ピンク・ミカコと周りに恵まれているのはフィクションなのでしょうか?おかんも問題はあれど、理解ある家族に見えましたし。
終始同じようなテンポと鬱々とした展開が続き、個人的にイマイチ乗り切れなかった本作の中で、ピンクがツチヤへ居酒屋で語りかける羨ましいという言葉が印象的であり共感もあったことと、ベーコンズの劇中での漫才が面白かったのが良かったところでした。
(令和ロマンがお笑い指導ということで納得!)
極端な社会性の欠如で非常に共感しにくい主人公
この小説はツチヤタカユキ氏の私小説であるが、多少の脚色はあるとは思うが目立って美化している部分がないところが良い。
価値観が「己れが面白いと思う事」のみで、それ以外のことへの興味がなく、他人を認める事や折り合いをつけるという事が一切できないもはや障害者レベルの主人公。
それでも奇跡的に救いの手を差し出す人が何人かおり、それによりどのように変わっていくのかを期待してみたが、結局生まれついての性分だからか同じことの繰り返しで何も変わらず。
自分としては彼を認めず排除しようとする側の人間の方に終始共感し続けながら観ていたが、同じ見方をした人の方が多かったのではなかろうか。
主演の岡山天音はもともと表情が乏しく(本人には大変失礼だがw)不気味な雰囲気の役者だが、本作でも大きく表情を変えることなく熱演。
脇に菅田将暉、仲野太賀、松本穂香などの主役級が全力でサポート。
ストーリーや演出はそこそこだが、役者の熱い演技は大変見応えがあった。
若手実力俳優3人が素晴らしい
お笑いに取り憑かれた男の話。
不器用で人間関係不得意な男を岡山天音さんが好演している。
報われない日々が辛すぎて、見ているこっちも暗い気持ちになった。
私は菅田将暉の役がツボ。さすが菅田将暉だわ。
仲野太賀もいい。『ゆとりですがなにか』の山岸みたいな役もうまいし、今回みたいな好青年もすごく良い。
主人公の心の叫びにはウルっと来てしまった。
狂気と怪演 笑いの無いお笑いの世界の映画
生きづらすぎて、おそらく向いてない
岡山天音というカイブツ
カイブツの熱量にやられる。
最速上映で観てきた。
最速上映で見るって生まれて初めて。誰よりも早く新作を見るってなんか特別感あって嬉しい。
終始圧倒されてた。
原作読んでなかったし、ツチヤさんのことも知らないで行ったから、どこまでがフィクションかとかわからないけど、リアルなのに熱量がすごかった。
映画の前の挨拶にツチヤさんご本人登場されてたから、ご本人が丸くなって見えたくらい。そのくらい映画の中のツチヤさんはぶっ飛んでたし、死ぬほどもがいてた。
岡山さんが凄すぎたな。かなり魂削って演じてる感じが画面からひしひしと伝わってきて。
ちょっとご飯屋さんのシーンとか見ててこちらまで苦しくなるくらいだった。
周りも納得すぎるキャスティングだった。
改めてだけど菅田さんは上手すぎた。久々に助演で出てる姿見れて新鮮だったけど菅田さんが役のヤンチャなにいちゃんそのものすぎて。
上映後監督にサインいただいた。嬉しかった。
感想をすぐに言語化できないコミュ障にも優しく気さくに話してくださる監督だった。
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