笑いのカイブツのレビュー・感想・評価
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人間関係不得意
2024年劇場鑑賞1本目 良作 62点
菅田将暉を脇役に据えて、良質なヒューマンドラマかなと2023年秋頃から期待していて、24年一本目に本作を選びましたが、思ったほどの衝撃や感動が無く、自分の中でイマイチ響きませんでした
映画的に一見主人公をもっとわかりやすく成功し大成する結末ではなく、まだまだ世間にとっては主人公の才能や努力は認められない終わり方は悲哀もそうだし、鑑賞後感として気持ちの良い感覚はありました
がしかし、主人公の努力の仕方というか向けるベクトルがアナログで、視野の狭さや理解力、受け入れる器の小ささが勿体無くて、ある種周りに恵まれなかったタイプの天才だと思いました
もっといえば、本人も色々な原因をわかっていても、それを解決する手段がわからない、わからないことがわからないタイプなのが、より一層悲しい
それこそ、その才能と反対に不器用さを認め弟子にしてくれた仲野太賀の奮闘も虚しく、その出会いをもっと主人公が賢く、ここから色々なものを生まれさせていく様にもっとターニングポイントにして欲しかったです
怪優•岡山天音の演技に震える
主人公•ツチヤタカユキは、かなり強烈なキャラクターだった。笑いに取り憑かれるあまり、1日に何本もの大喜利ネタを生み出すが、人間関係が不得意でちゃんと挨拶ができなかったり、相槌すら打たなかったり、自分が気にいらない仕事にはブチ切れる。人によってはただのワガママなキャラクターに見えてしまい、嫌悪感を感じる人もいるだろう。
確かに私もツチヤがワガママだとは思うし、もう少しコミュニケーション取れよとは思うし、共感できない行動•言動も多かった。しかしツチヤのあそこまで一つのことに情熱を注げる生き方には羨ましさもあるし、理解したいとは思えた。どうしても憎めないキャラクターだった。
ツチヤを憎めないキャラクターに昇華させたのは、やはり岡山天音の演技だろう。前から演技の上手い俳優だとは思っていたが、もはや俳優の域を超えて怪優。一心不乱に舞台の台本を描き続ける狂気の姿から、芸人にしかわからない壮絶な苦悩まで表現する完璧な演技。次の場面ではどのような演技を魅せてくれるのだろうと気になり、画面から目が離させなかった。
そして脇役も素晴らしい。菅田将暉は特に最高で、登場しただけでやはり凄い存在感。少し危ういオーラを醸しつつも、終盤の居酒屋の場面でツチヤに寄りそう姿にはグッときてしまった。
あとツチヤのオカン役の片岡礼子も忘れてはいけない。息子に「ありがとう」と言われた後の表情は秀逸だった。この人は大きな役を与えられることはあまりないが、今回ツチヤのオカン役に配役されたのは正解だったと思う。
賛否が分かれるだろうが、個人的には良かったし、これくらいクセの強い作品があってもいいと思う。
タイトルなし(ネタバレ)
役者さんの演技が皆とても上手で素晴らしかった。「笑いのカイブツ」というタイトルから明るい映画なのだと思っていたが、とても暗い。才能はあるが、社会性が全くない主人公。鑑賞中「映画の中で成長して対人関係を築けるようになるのか?」と思っていたが、最後までそのまま。映画を観ている側としては辛くなってしまったが、現実は確かに才能だけでは生きていけないし、こんなものなのかな……。
俳優陣は頑張っていたが。。。
構成作家や放送作家を生業とするツチヤタカユキの(自伝的)私小説を映画化した作品でした。ラジオのハガキ職人としてその世界では有名だったツチヤが、大阪、そして東京のお笑い界にプロとして身を投じるものの、生来の人付き合い下手=「人間関係不得意」な性格が災いして挫折する姿を描いていました。そんなツチヤを、大阪では菅田将暉演じるピンクが、東京では仲野太賀演じる西寺が、それぞれ優しく包み込むように救う展開で、彼らの男気を感じさせる演技は中々見物でした。また、主人公ツチヤを演じた岡山天音も、難しい役柄を上手に演じていたと思います。
そういう訳で、これら男優陣の演技には大いに拍手を送りたいと思うのですが、如何せん本作はツチヤタカユキの「人間関係不得意」の部分にスポットを当て過ぎていたきらいがあり、肝心のお笑いの才能を感じられる要素が少なかったように思えたところが残念でした。ところどころツチヤが窮地に追い込まれると、心の中で呟いたと思われる大喜利が披露されます。恐らくは彼の才能を印象付ける役割を託した演出なのではないかと思われますが、正直これがコメディと思えるような流れになっておらず、結果的に彼の才能を感じることが出来ませんでした。
ピンクにしても西寺にしても、ツチヤの才能とか魅力に惹かれたからこそ彼を救わんとしたと思うのですが、少なくとも私にはツチヤが光る部分を見出すことが出来ず、感情移入が全く出来ないお話になっていたのは返す返すも惜しい作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★2.5とします。
イライラするならたぶんそれは“大衆”のひとり。
人に最近見て良かった映画はなに?、と訊かれたとして
しばらくは真っ先に思い浮かぶこと間違いなし。
なんだけど、答えるかって言われたら躊躇する。
自分が感じたこの面白さを伝えられる自信がない。
あの心に渦巻くような先の見えない黒々とした感覚。
感覚そのものを上手に表現することができなくて別の形で吐き出す。
だけどやっぱり“人間関係不得意”が邪魔をして。
吹っ切れて仕舞えばなんだこんなもんだったのか。しょーもな!って感じで
そこからは苦手ながらもなんとなく適応出来始めるんだと思うんだけど
あの感覚って経験した人にしか分からないんじゃないかなぁ。
上手に説明できて人と関われるならああはならないんだよ。
当たり前にできる人には分からないからきっとイライラするんだろうな。と当事者側の視点で観てた。
それを見事に演じ切る岡山天音、さすがです。
ともするとうるせえ!って感じの、でもメロのいい音楽も演出として好きだった。と思ったら村潤。あれ?最近の活動知らないけど映画音楽の人じゃないよね?
脇を固めるキャストたちも好きな人ばかりで、とにかく自分にはブッ刺さりでした。
この映画が見れたことが嬉しい。
笑いの異物
主人公が嫌いなまま終わったので、あまり楽しめなかった。
バイト中もネタ作りが最優先で、まともに仕事をしない。
周りに迷惑ばかり掛けてるのに、すぐに逆ギレ。
それでも圧倒的な才能を感じれば観られたかもしれないが、個人的にはそこもまったくハマらず…
劇中で一番笑えたのは自販機にコーヒー買いに行ったときのコケ方だけど、これもクスリ程度。
それなのに、松本穂香や菅田将暉、仲野太賀には声を掛けられ、認められる。
「実話です」と言われたら何も言えないが、特に松本穂香の件は元同級生とかでもないと理解ができない。
そういえば、家にお呼ばれした後が全カットだったけど、あれもよくなかった。
その時の状況次第で、終盤の「彼氏がいる」という言葉の受け取り方が全然変わってくるのに。
演技に関してだけは抜群によかった。
岡山天音は怪演だし、菅田将暉や仲野太賀は安定、片岡礼子が終盤見せる泣き笑いは最高です。
しかし、やはり最後まで身勝手を貫いた主人公には共感も応援も送れない。
絶対に一緒に仕事したくないし、上の立場なら使わない。
ドラマチックなエンディング曲を流されても、こちらの印象は流しきれません。
笑いに取り憑かれたキッカケなども描かれないため、自分には異常者にしか映らなかった。
成功を掴むところまでやるか、せめて心を入れ替えてくれないと話として纏まってすらいないと思う。
人間だから笑う
共感を超越した感情
世間で相手にされないタイプを地でいく、構成作家ツチヤタカユキ。
自尊心が高くて、人間関係が不得意で、自己実現に向けた狂人的な努力こそがすべて。
1日1,000個のボケネタを創り、伝説のハガキ(投稿)職人と言われた男。
普段はほとんどスポットが当たらない一構成作家の、壮絶なまでの自己中心的な生き様。
最初は究極の私小説じゃないか、と思った。能力があるのだから、もっとうまくおやりなさいよ、とも感じた。
しかし……。なぜか涙があふれた。映画館の館内からも、いくつかすすり泣きが漏れ出ていた。
いつも名脇役だった岡山天音の想定外の熱量にやられたのだろうか。
ツチヤの良き理解者である、人気お笑い芸人(仲野太賀)と半ぐれ(菅田将暉)の段違いとも言える快演に度肝を抜かれたのか。
およそ自分とは全然違うタイプだと突き放して見ているのに、突き放しても、突き放しても、ツチヤが近くに吸いついてくる。そんな感覚が襲ってくる。
共感なんかできやしないと横を向いても、じっとオレの目を見ろ、と迫ってくる。
世間に対して不本意ながら折り合いをつけて、燃えつきることを覚悟で闘ったことのない人間が不覚にも流す涙を、あざ笑うかのように。
これを共感と呼ぶにはあまりにもおこがましい。究極のプロ根性のツチヤに失礼だ。
ただ、ツチヤの捨て身の熱量に、小声ながら、あっぱれ!とだけは言いたい。
突き進めー~迷惑だけど
病的に構ってちゃんかつコミュ障の主人公はお笑い一筋、仕舞にはせっかく入ったお笑い業界でも人間関係で浮きまくり辞めざる得ない結果にそれでも溢れるお笑いへの情熱は主人公の現実とは関係なく暴れ出す、関わる人は大抵逃げ出すけど少しの理解者さえいれば何とか成る事も、普通人に圧倒的に欠けて要るものに気付かされる。
同じ大喜利好きとしてもヒく
2024年劇場鑑賞6本目。
自分もYoutubeで大喜利配信にコメントで参加するのを趣味にしているので
大喜利には馴染みが深いのですが、この主人公ほど大喜利の事を考えすぎて
バイトをクビになるまでは振り切っていないです。こうやって映画も観てますしね。
これだけ笑いに真剣になっている割には本人は結構怖い感じで、
作家志望なのもそれを自覚しているからなのでしょうが、
普通の世界より縦や横のつながりが大事そうな芸能界でこの性格は
致命的なのでは・・・?
劇中に出てくるベーコンズのモデルがオードリーで、
中野太賀が演じてるのが若林というのを映画が終わってから知ったので
全然違う印象で見てましたね。しかし最後のネタ春日に当たる人すべってたなぁ・・・。
突き抜けた人間の凄みと面白さ
何事にも突き抜けた人間の生き様は物語になりうる。それが自叙伝であっても。本作の主人公の突き抜けた部分はお笑い。ハガキ職人やって、テレビの大喜利番組でレジェンドになって構成作家になるという流れ。たしかにすごい経歴だ。天才というより執着型の秀才という印象。いろんなことを削ぎ落としてお笑いだけに情熱を傾けるその姿はやはり凄みを感じるものだった。
一方で「人間関係不得意」な部分は共感できないし、魅力的にも思えない。世の中ある程度のコミュニケーション能力がないと成功はできないよな。大谷翔平や久保建英や藤井聡太やADOが、あんなコミュニケーション能力しか持っていなかったとしたら、あそこまで成功しただろうか。いや、それでも明確な評価基準がある競技やジャンルであれば成功していたかもしれない。そういう意味でお笑いの世界であのコミュニケーション能力は致命的とも言える。もう少しうまくできないのかと焦れてしまうし、切なさも感じた。だからこそ彼が苦悩し悩みあがく姿がドラマになるってことなんだろう。共感はできないし、人間的にも好きと思えない人物の自叙伝的映画なのに、それでも面白いと感じてしまう不思議な映画だった。
あのコミュ障なところを演じていたのが岡山天音だった点もよかったんだと思う。彼の掴みどころのないキャラが見事にハマっていたし、怪演とも言える演技だった。彼の代表作の一つとなっていくのは間違いない。
観終わった後に調べたのだが、彼と一緒にやろうと呼びかけたのがオードリーの若林だったことも驚いた。いや、たしかにベーコンズはオードリーっぽかったけど!彼も人見知りでありながら、お笑い芸人として成功を収めていることにまた別の感慨を覚える。
リアルな存在としてのツチヤタカユキを知らなかったから、彼が病みそうで死にそうなことにハラハラしてしまった。今も活躍していることにホッとした自分がいる。生きてナンボだよ。
見ててお腹痛くなる(笑ってじゃないよ)
実力と現実
天音君の主演映画は初めて見るので楽しみでした。熱演でした。
笑いを作っているのに、その本人はもがいて苦しんでいる話。
ロクに挨拶もできない、バイトもすぐクビになる。こりゃダメだわ。。
そんな社会になじめない人なのに、手を差しのべてくれる人たちが少なからずいる。それが、才能がある事のメリットなのでしょうか。
周りの人の思いや自分の振る舞いに、少しでも気づけば、変えていける。一度は沈んでもまた浮上できる。ラストはそんな感じだったのかな。ふっきれたような顔で、またここからと思わせてくれて良かったです。
脇を固めるベテラン勢がとても良い。
菅田将暉はかっこよかった。スタイルがいいからこの役のファッションが似合ってました。
仲野太賀は言うまでもないですが、劇中の漫才の舞台も面白かったです。
松本穂香も、こんな感じの子いるなあと上手でした。
音がちょっとくぐもって聞き取れないセリフがあったのだけ残念だったです。
目的地の前にある障壁は、理想と現実という名の絶壁だった
2024.1.9 イオンシネマ京都桂川
2023年の日本映画(116分、G)
原作はツチヤタカユキの自伝小説『笑いのカイブツ(文春文庫)』
伝説のハガキ職人の、笑いに取り憑かれた男の悲哀を描いたヒューマンドラマ
監督は瀧本憲吾
脚本は瀧本憲吾&足立紳&山口智之&成宏基
物語の舞台は、大阪の下町(ロケ地は大阪市都島区)
テレビ番組「デジタル大喜利」のレジェンドを目指してネタを投稿している構成作家志望のツチヤタカユキ(岡山天音)は、膨大な量の投稿を繰り返し、ようやくレジェンドの座を手に入れることになった
ツチヤはおかん(片岡礼子)と一緒に住んでいたが、おかんは男を取っ替え引っ替えしていて、生活が向上する気配はなかった
レジェンドとなったツチヤは、地元の劇場に向かい、その実績を「アッピール」するために劇場に向かった
そこではステージのリハが行われていて、支配人(お〜い久馬)はツチヤを面白いと感じ、作家の見習いとして抱えることになった
世話役には山本(前田旺志郎)が押し付けられたが、二人のソリが合うことはない
その後、ピン芸人のトカゲ(淡梨)の作家をすることになり、ネタもそこそこに受けるようになっていたが、ツチヤは自分の名前が一切出ないゴースト状態に嫌気を差して辞めてしまった
そして、フリーになったツチヤは、今度はラジオ番組のハガキ職人として、ベーコンズという人気漫才コンビの番組にネタを送りまくる
ベーコンズのツッコミでMCをしている西寺(仲野太賀)はツチヤの投稿を気に入り、ラジオを通じて「一緒にネタを考えよう」と呼びかける
物語は、一大決心をして上京するツチヤを描き、そこでラジオ番組の構成作家見習いとして働く様子が描かれていく
番組のディレクターの佐藤(管勇毅)はツチヤを良く思っておらず、仲裁に氏家(前原滉)という芸人兼構成作家が入ることが多くなる
西寺はツチヤを評価していたが、正規ルートではない扱いが毛嫌いされていた
また、ツチヤが社交的でなく、常識的な付き合いができないことも溝をさらに深めていく
そんな折、ホストのピンク(菅田将暉)に構ってもらえるようになったツチヤだったが、東京でもゴースト状態になっていて、また現場が「本気で笑わそうと思っていない」と感じるようになって、さらに体も壊してしまうのである
映画は、笑いに取り憑かれたツチヤの日常を描き、笑いを作るためにどのような人が関わっているのかを描いていく
お笑いの裏方が登場し、構成作家のネタを芸人が披露している部分も赤裸々に描いていく
そして、本作の命題は「クレジットされる意味」となっていて、ネタに命をかけたチチヤはそれを褒賞として求めてきた
だが、ゴーストは所詮ゴーストで、いつかその時が来ると言われても、ツチヤは納得できなかったのである
物語は、構成作家になる難しさを描いていて、お笑いに対するある姿勢というものを描いていく
スタンスが違うと言えばそれまでだが、これまでの経験値で抜くところは抜いている状況と、単に若手のモチベーションを利用しているだけの人もいる
ツチヤが出会ったのは後者の方になるのだが、それでも視野が狭くて、お笑いのリアルがわかるのかは何とも言えない
氏家のように立ち回りが上手い方が成功するのはお笑いに限ったものではないが、その世界に関わり続けることと、その世界で名を馳せたいかで目的地が違うのは仕方がないことなのかもしれません
いずれにせよ、そこまでお笑いに自信があるのなら、自分でネタを見せるパフォーマーになれば良かったのにと思うものの、それができない性格だったのかなと思う
受け手とすれば、面白かったネタに放送作家が入っているかどうかは、その瞬間には気にしないものなので、クレジットで構成作家の名前があってもわからないと思う
だが、作り手としてのこだわりがそこにあって、彼は名前を呼ばれて認知されることを承認欲求にしているので、この着地点になるのは仕方がないのかなと思った
西寺が彼のネタを演じて、彼の名前をクレジットに載せたのは良心だと思うが、実際の世界だったら氏家の名前になっていたんだろうなあと感じた
菅田将暉と仲野太賀が光った
人間関係が不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することが生きがいだった。毎日ネタを考え続けて6年が経った頃、ついに実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになったが、非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されず相手にされなくなった。そんな彼を面白いと評価してくれたのが漫才師・西寺だった。彼から声を掛けられ上京することになり、ネタを提供してたが・・・てな話。
漫才や落語で笑いを取るためにネタ作りをしてる作家って大変なんだなぁ、って知れた。実在の作家・ツチヤタカユキの本を基にした作品らしく、彼役・岡山天音の狂気の演技は素晴らしかった。
それにもまして、西寺役の仲野太賀とピンク役の菅田将暉の圧倒的な存在感に岡山天音もかすみそうだった。
松本穂香が意外に可愛かった。
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