劇場公開日 2022年10月21日

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「喪失と再生」大事なことほど小声でささやく バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 喪失と再生

2025年7月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

難しい

暗く重いヒューマンドラマで、深水元基演じる四海の抱える闇が徐々に明らかになっていく構成が上手い。観ていてなんとなく時系列が前後してるなというのが感じられ、そしてそれが物語の大きなキーになっていく。序盤のジムやスナックのシーンこそややコミカルだが、深水と遠藤久美子が演じる四海夫妻のシーンになると途端に重苦しい空気が画面を支配し、夫妻の深い喪失感とそこからの再生が描かれていくのだ。

四海役の深水と妻役の遠藤の熱演が素晴らしい。特にエンクミは本当にいい女優になったなあと感慨深く感じた。やはり旦那の横尾初喜が監督ということで、彼女の魅力と演技を最大限に引き出している。役者と監督の出会いって大事ですね。あとスナックのバーテンダー役の田村芽実っていう女の子がエンディングテーマも歌ってるが、演技のほうはまあまあながら歌は上手くてびっくり。調べたらハロプロのアンジュルムというグループにいた子らしい。

唯一難点を言えば、ゴンママ役の後藤剛範がトップクレジットなのに物語のメインではなく、実質的に深水とエンクミが主演になっちゃってるところ。ゴンママの孤独感も描かれるがサブエピソードと言ってよく、どちらかというと狂言回しに近い。これは原作が連作短編らしく、その中の一編を事実上の原作としたためのようだ。そういえば他の常連客(峯岸みなみ、遠藤健慎、大橋彰〈アキラ100%〉、田中要次)もそれぞれ何か事情ありげながら、アキラ以外はほのめかされる程度にとどめられていた。とはいえ良い映画でした。面白かったです。

バラージ
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