劇場公開日 2021年9月23日

「オアシスにとっての“ウッドストック”」オアシス ネブワース1996 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0オアシスにとっての“ウッドストック”

2021年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

抑揚に乏しいオアシスのサウンドそのままに、始まりから終わりまで、音楽が鳴りっぱなしの作品である。
音質は良くないが、映画館の包むような大音響によって楽しむことができた。

10人ほどのファンの想い出語りが、ひっきりなしに差し挟まれ、キャラガー兄弟のコメントもいくつか出てくる。
しかし、決して“ドキュメンタリー”ではなく、“ゴールデンチケット”を手に入れた25万人が詰めかけた、2日にわたるコンサートをしっかりと見せてくれる。
自分は、1stと2ndアルバムを持っているだけの、超ライト・ファンに過ぎないが、十分楽しむことができた。

しかし当時、なぜこれほどまでに英国の若者が熱狂したのか?
たった2年で、トップに成り上がったのだ。英国事情を知らない自分には、理由が分からない。
女の子が、白いセータを着たリアムを「天使に見えた」と言うのは分かるが、先の事を考えず、ビールだけ持って(笑)駆けつけたような男のファンがいるのだ。
“公営住宅”に住んでいた、“労働者階級”という親近感だろうか? ファンのコメントは、オアシスの音楽が、彼ら自身の“青春”そのものだったように聞こえる。
また、けっこう単純なUKロックだと思うが、その圧倒的な明快さこそが、停滞した英国の音楽シーンにショックを与えのだろうか。

リアムは、丸メガネといい、ヘアスタイルといい、ジョン・レノンを明らかに意識しているだろう。声もルックスも、この時が絶頂だという。
アゴを上げっぱなしで歌うと初めて知ったが、彼の声質の秘密がこれで分かった気がする。
ノエルのギターは難しいことはやっていないし、手つきはビックリするくらい“可愛い”のだが、大胆にスラスラと音が湧き出だしてくるのは、さすが作曲ができるギタリストである。
とても自然体で、カジュアルで、しゃちこばったカッコ付けがない。

後ろの方の観客も楽しめるように設置した“巨大スクリーン”は、1996年当時は画期的だったという。
「25年後に評価されるなら、もっと真面目に曲を作っておくべきだった」というコメントは笑えた。
このコンサートでは、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー 」が自分は一番良かった。この曲はノエルのボーカルだと、うかつにもこの映画で初めて知った。
てっきりラストの曲は「ロックンロール・スター」かと思ったら、ビートルズの曲でコンサートを締めたのは驚いた。

本作品は、ほとんどがキャラガー兄弟2人と客席の映像で占められて、“バンドの演奏”という感じが全くしないのだが、オアシスに限っては、それで良いのだろう。
やっぱり、アナログ全開な音楽って良いな!

Imperator