「面白かった。」映画 おそ松さん はのさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった。
今日はじめて観ましたが個人的には面白かったです。
ネタバレになってしまいますが、おそ松達と顔がそっくりの息子を亡くしたお金持ちの夫婦と知り合いになり、養子として選ばれるために兄弟がそれぞれに自分磨きを始めるのですが、おそ松は東大を目指し勉強を始め、カラ松は強くなるために体を鍛え、チョロ松は脱オタして女性に慣れる為に街でナンパを始めます。一松は就活、十四松はメジャーリーガーを目指し、トド松は起業のため動き出しますが、そこで六人それぞれのストーリが展開されていきます。
この映画は数々の名作をパロディーしながらも、六つ子の本質を描いているように思います。
図書館で勉強をするおそ松は春という女性と出会い、甘酸っぱい青春物のようなストーリーが展開されるのですが、そこにナンパ師から№1ヤクザホストのチョロ松が絡んできます。
おそ松の視点で見ると日本の恋愛ドラマでチョロ松の視点に立つと韓ドラの男主人公の視点に立つことができますが、この映画はそれぞれのルートに分かれた兄弟達の個々の願望を強く反映させた設定が繰り広げられます。
おそ松は自分の為ではなく誰かの為じゃないと、動かない人なんだろうな思いました。なぜなら、ヒロインが出てくるルートはおそ松だけなんです。そこにチョロ松も絡んでくるのですが、ヒロインとの出会い方に違いがあります。
参考書(?)を取ろうと手を伸ばしたおそ松の手に重なる春の手そこから二人は意気投合し、一緒に勉強をする仲になっていきます。
初日様子を見に来たトト子ちゃんに「誰が養子になってもいいけど、寂しい思いは俺がしてやらないと」みたいなことを言っていて、彼にとっての原動力は弟達なんだと思いました。
しかし、いまは弟達は傍にいない一人だけが養子になることに対して「寂しい」と、発したおそ松はきっと、寂しがりで一人で過ごすことが苦手だから春に会えることを原動力にして図書館に通っているのではないか。でも、根幹には弟達がいるので恋愛に現を抜かすのではなく勉強を続けている。おそ松は青春みたいな恋愛に憧れているのではないだろうか。
そして、その春に店の呼びかけで声をかけるチョロ松だがすげなく断られてしまう。もう、ドルオタではなく№1ホストのチョロ松自分に靡かない春に花より男子時代から特に韓ドラで乱用されている「面白れぇ。女」状態になります。ここで思うことは「自分が一番まとも」と、言っているチョロ松は実はヤンチャしたい気持ちがあり、ロマンチックで運命的な出会いにも憧れているということではないでしょうか。
カラ松のストーリはハリウッドドラマ仕立てで記憶を失くしたカラ松は自分をFBI捜査官と思い込みストーリが進みます。英語が解らないので他の登場人物とは会話がかみ合っていないのですが、何故かストーリは順調に進んでいきます。そのせいで悪の組織のメンバーになってしまうのですが、彼は自分が正義側というスタンスでストーリを進めていくのです。
終いにはトド松の主催するゲーム会場にチームで殴り込んできます。
きっと、カラ松は正義のヒーローになりたい男なんだと思います。
十四松はメジャーリーガになるべくバットで作ったイカダで渡米を決行するも雷に打たれて白黒の時代劇へとタイムスリップ。
多分、七人の侍のパロディーですが十四松が順応しないので時代劇ではなくタイムスリップ物になると思います。
十四松のストーリには強い願望や欲望の反映が見られなかったので自分は十四松それ以上でもそれ以下でもない。と、いうか感じに見えました。
一松は就活するものの上手く行かず、公園で飲んだくれていると真っ黒な招待状を渡されて怪しげなゲームに参加することに主催者はなんと末弟のトド松。あんなポップなプレゼンからなんでこんな禍々しい組織が生まれたのか困惑するぐらいのデスゲームを提案します。
カイジ・賭ケグルイ・イカゲームを彷彿とさせる内容。
トド松は人の上に立ちたい支配したい、思い通りにしたい。という願望が兄弟のなかで群を抜いて強い印象。でも、その我がまま具合がまさに末っ子。
この映画にはエンド・クローズ・ピリオドというオリジナルキャラが登場し、お馴染みのイヤミ、チビ太、トト子ちゃんと共にストーリーを回していきます。
オリキャラの三人は終わらせ師となのり兄弟達それぞれのストーリを終幕に導くために奮闘するのですが、一松にトド松とのゲームの為に血を抜かれたり、マグマの上に吊られている板に乗せられ、十四松と一緒に雷に打たれ時空を彷徨ったり、終いにはトド松に改造されたりと踏んだり蹴ったりな目に遭わせられます。
一松のストーリは途中でトド松と合流しますが、一度フェイドアウトして再登場する頃にはjokerのようなメイクをしており発狂しながら爆弾を投げます。
一松は訳の分からない努力を始める兄弟もいたなか就活といういちばん堅実な努力を始めたことから、根は真面目であり、切実な男なのでは無いかと思います。
そういう人が誰にも認められず、決死のゲームでも結果を出せずに狂ってしまう。
ゲームの下りはともかく、パロディー元のjokerが悪の道に堕ちていくのと似ている気がしました。
一松は承認欲求が強いのかもしれません。
おそ松が誰かを必要としているなら一松は誰かに必要とされたい人間なのかも。
終盤のクローン人間の件はちょっと、弛みますが総合的には面白かったと思います。
複数回みていけば、どんどん解像度があがっていくと思いますが映画館が近くにないので初回ですが書き込みました。
主演を務めたアイドルグループの方々の必死な様子が画面越しに伝わってきて、キャラを落とし込むのに苦労したんだろうなと感動しました。
実写化はリスペクトが無いと成り立たないので、それで言うなら数少ない成功例だと個人的には思っています。