「理解しようとするお話」スティルウォーター しんかいぎょさんの映画レビュー(感想・評価)
理解しようとするお話
正直なところ、私は最近見た映画は邦画やアジア映画に偏っていて、アメリカ映画はご無沙汰だったように思う。今回、いい映画に出会えたと思った。
見ている映画に偏りがある為かアメリカ映画のトレンドには明るくないが、記憶にある限りでは、今回のスティルウォーターは随分と風景が変わったのかなという印象だった。
アメリカ映画というと、例えば主人公が海外に行った時にもうまい具合に現地で英語に堪能な協力者が見つかって、事件を解決していくというのが、私の持っている印象になる。
(おそらくリーアム・ニーソンの「96時間」の印象が先に来ている気がする(笑))
ところが今回は打って変わって、協力者はいるものの現地マルセイユではアメリカからきたそのままのよそ者で全く受け入れらず出鼻をくじかれる。そこから現地で仕事を始め、英語しか分からないところからフランス語を理解し、好きなスポーツチームはアメフトとはいいつつ、サッカーにも理解を示し、演劇なんて見ないとはじめは言うも同居人の女性のリハーサルを見届ける、1日だけの仮釈放で出てきた娘が海で泳ぎ、後日自分も泳いでみる、そういう風にそれまでの固定的なものを投げ捨てて今その場の環境をそっくり受け入れようと努力する姿は共感せずにはいられない。
異質なものを受け入れていくのは、口で言うのは簡単だが、現実的には頭が割れるような苦痛を伴うこともあるので、主人公の苦労が少なからず分かるような思いがした。
事件の最終的な決着は「そういうことだったのか」という感じである意味悲しくもあるけど、前述のような主人公の姿が描かれていくのを見るだけでも映画館に足を運んだ価値があったと充分に思えた。
父親を演じるマット・デイモンの雰囲気はホントに凄いと思った。小太りで不器用でガンコなオヤジ...だが、目を見ているとその時々の気持ちの揺らぎが伝わってくるような気がしてくる。