グリーン・ナイトのレビュー・感想・評価
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実家を追い出された体験から生まれたジワる英雄物語。
情けない貴族のボンボン息子が、冒険の旅を経て王になる資格を手に入れる英雄物語……と書いてもウソではないとは思うが、その情けない要素が甚大すぎて驚く。その情けないボンボン息子役にデーヴ・パテルがあまりにもピッタリで、英雄らしさはほとんどなく、ただただグダグダと旅が続いていくのが、妙にクセになるヘンテコファンタジー。お話の上で糸を引いているのがボンボン息子の母親である魔女であり、息子を成長させるために厳しい旅に送り出すという構図は、いつまでも実家でウダウダしてんなと母親に実家を追い出された監督の実体験がもとになっているらしく、それを知るとまたじわじわと可笑しさがこみ上げてくる。有り体に言ってかなり変な映画だし、この可笑しみが万人向けでないことも承知はしているが、ほかで観られない魅力のある幻想譚であることは間違いない。
輪廻を受け入れた映画監督
何をいいたいのかよくわからない。映画のストーリーだけ追ってもほとんど無意味なのは、あのとっつぁん坊やウェス・アンダーソン監督作品と双璧である。14~5世紀頃に書かれたとされる韻頭詩『サー・ガヴェインと緑の騎士』をほぼ原型のまま映像化している本作を監督したデヴィッド・ロウリーは、私が最も苦手としている映画監督の中の一人。争いごと無しに何かを勝ち取る成長物語だとか、過干渉だったロウリー自身の母親との関係を描いた自己投影作品だとか、最後にきっと勝つ自然と人間との対立を描いているなどなど、本作に関する解釈は様々だが、そのどれもが本作のある一部をとらえているだけで、映画全体の統一的解釈にはいたっていない気がするのだ。
ロウリーは語る。「私が撮った映画はすべて最後にホームに帰る人のお話なんです」緑の騎士との約束通り、1年後に首を切られに緑の礼拝所にやってきたアーサー王の甥っ子ガヴェイン(テーブ・パテル)もまた、(原作では)騎士に相応しい礼節を守ったご褒美に首つき?で家に帰ることを許される。『セインツ/約束の果て』の主人公二人も最後までこだわっていたのは“家”のこと。『ア・ゴースト・ストーリー』の幽霊もまた“家”にとりついた地縛霊だ。奥様も同じ映画監督という事情もありーので、アメリカのダラスにあるロウリー宅に2人してなかなか帰れてないらしいのである。
なーんだ単にホームシックにかかっている自分を投影しているだけじゃん、などとけっして早とちりしてはいけない。溝口健二監督『雨月物語』に登場する円環長回しショットが本作にも使われていたことを思い出せるだろうか。気味悪小僧バリー・コーガン扮するスカベンジヤーに身ぐるみ剥がされ、木の根もとに縛り付けられた状態で見た自分の悲惨な“未来”とそこから“現在”へと戻ってくるシーンに登場するのである。ロウリーが本作のハイライトシーンと太鼓判を押す、森の礼拝堂のラストシーンでも、王位を継いだ自分の未来の姿に絶望し斬首される決意を固めるのである。
ガヴェインの魔女でもある母親とオーバーラップさせたというロウリーの実母が幼い自分にしたことも、当時は嫌で嫌でたまらなかったらしいのだが、今にして思えば我が子のために何をしていいか分からなかった母親の気持ちがとてもよくわかると語っていたロウリー。本作に限らずデヴィッド・ロウリー作品に一貫して描かれているテーマは、巡りめぐって結局は元の場所に戻ってくる人間の“円環性”、仏教でいうところの業としての“輪廻”ではないのだろうか。アーサー王が被っていた“円形”の王冠のごとく、あるいは朽ちはてた石畳がやがて苔むし自然に返るごとく、あるいは蓮實重彦絶賛のカメラショットが“円環”するごとく、結局はその“輪廻”から逃げられない人間の業について述べているような気がするのである。
その“輪廻”から逃れるべく、もがき苦しみ運命と戦いラストに勝利するような(ハリウッドお得意の)物語には全く興味がないとも語っていたデヴィッド・ロウリー。故に事実をベースにした『さらば愛しきアウトロー』なんかは、まったくロウリーの作風には合っていなかった作品だったらしい。『ア・ゴースト・ストーリー』の幽霊のように本作は、その業としての“輪廻”に決して逆らわず素直に自らの内に受け入れた、騎士になる以前の怠惰な凡人ガヴェインがある“悟り”を開いた映画だったのではないだろうか。
アーサー王の甥、サー・ガウェイン(デブ・パテル)。 その怠惰な性格...
アーサー王の甥、サー・ガウェイン(デブ・パテル)。
その怠惰な性格からか、いまだ正式な騎士になれず、惰眠を貪るような毎日を送っていた。
いつもと同じく女とのけだるい時を過ごしていたクリスマスの日、ガウェインは騎士たちが集うアーサー王の円卓に招かれた。
宴もたけなわな中、人間とも精霊とも区別がつかない異様な風貌の緑の騎士(グリーン・ナイト)が現れ、騎士たちに「首切りゲーム」を持ちかける。
挑発に乗ったガウェインは緑の騎士の首を斬り落とすが、騎士は切り落とされた首を拾い上げて、ガウェインに「1年後に会おう。今度はお前が首を斬られる番だ」と言い残して去っていく。
さて、1年後・・・
といったところから始まる物語で、西洋でおなじみの「死神との約束」の物語。
この物語には、おおよそ活劇シーンはなく、どちらかというと怪談めいた雰囲気で進むのが特徴で、そこいらあたりは心得ておかないと、「全然つまらないじゃないの」なんてなってしまいます。
さて、1年後、約束を果たすべく決意したガウェインに、母親は呪を掛ける。
「魔術を掛けた緑の布を腹に巻いて行け、この布を巻いている限り、そなたの首はつながったままだ」と。
旅をする中で、ガウェインが必要とする3つのアイテム(腹布、大刀、馬)を失い、それが再び現れるのも約束事で、この手の趣向は現代のゲームにも取り入れらていることでしょう。
『セインツ 約束の果て』『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のデビッド・ロウリー監督は、この物語を凝った画面と鷹揚としたテンポで描いていきます。
緑の騎士の館にたどり着いたガウェインは、「首切りゲーム」を再開すべく、緑の騎士の前に跪くが・・・
その後の映像表現は『チキンとプラム』『ラ・ラ・ランド』でも用いられた手法。
(ここではフラシュバックではなく、フラッシュフォワードだが)
で、オチがやってくる。
むふふふ、落語のようだね。
こういうの、好き。
劇中でも語られるが、緑の騎士は文明に対する自然の暗喩で、「自然は人間の文明を飲み込み壊す存在」というのが西洋的考え。
ここいらあたりは日本とは異なりますね。
また、騎士たる者は、死を賭してでも約束は守らなければならない、約束を守ることこそが騎士の務めで、その精神は現代の契約社会に通じているのでしょうね。
ちょっと暗いシーンが見づらいのは難だが、面白かったですよ。
人生はゲームのようだ。1年も100年も大して変わらない 時には様々...
人生はゲームのようだ。1年も100年も大して変わらない
時には様々な困難に出会うだろう
何かに挑戦しても最初は退屈な時間が続くかもしれない(バリーコーガン出てくるまで割と退屈)
どこに向かってるのかわからないし、人の背中は大きく見える(巨人は住む世界が違うしそいつらは助けてくれない)
もしかしたら不慮の事故にあって死ぬかもしれない(追剥にあって木に縛られる)
時には誘惑(奥方)や見返りや望まない愛を求められる(城の主)こともあるだろう
良さそうに近づいてきた人(狐)も実は自分に都合のいいことを言ってるのかもしれない
大切な人のお守りも実は何の効果もない(母上の腰巻)
そんな執着は捨てて、覚悟を持って生きろ
こんな感じでサーガウェインが王座に就くまでの葛藤をダークファンタジーで美しく、ちょっとグロく描いている(と思う)
見返りなんて求めず愛し合ってメリークリスマスってこと?
でもクリスマス映画って感じじゃないなこれとか思いつつ緑、時々赤のビジュアルを楽しんだ
原作小説読んでるともっとよく解釈できるのかも
腰巻の意味とか
何かと足りてないのは騎士道精神なのか
あと大体暗い。ザバットマンといい勝負
大人のグリム童話的な
アーサー王の甥がインド系
アーサー王の妹が中東系…。
まぁそこについては置いておこう✋w
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物語はダークファンタジーで難解。
・恋と裏切り
・誘惑する女
・言葉を発する動物
・人を騙す盗賊
・手助けしてくれる幽霊
・異世界のもの
まるで大人のグ〇ム童話のよう…。
とことん暗い映像で見えづらい場面も
多々あるも、動く絵本を観る感覚で
鑑賞すれば楽しめる感じ。
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個人的にはラストはハッピーエンドだと
解釈したい。
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ここにきてA24作品が高評価続きw
それも自分的にはおもしろいw
夢なのか悪夢なのか男の人生の選択
万人向きではなく好みが分かれる作品。
1人の臆病な王族の男の人生を描く。
優柔不断で騎士に憧れる王族に訪れる数奇な運命。
緑の騎士の地を訪れる際に出会うそれぞれのキャラの関連性を考えても繋がりを見つけられなかった。
この物語、クリスマスの祝祭からラストの選択までもが夢のような事柄の連続でした。
ただそんな彼が終盤に見る予知夢のみがこの物語の中でスッキリしたものだった。
大いなる駄作
本来良いテーマと映像を台無しにした、脚本と監督の無能さにはあきれます。
最初の30分と終わりの20分以外は不要では。
1.母親と恋人が作ってくれたお守りはなんの役にもたっていない。
2.悪少年達にあまりにあっけなく捕まり、ただ放置される
3.オオカミ/キツネがでてくるがほとんど役割がない
4.巨人達に至ってはでてくる意味がまったくない
5.助けてくれた城主ややけに色っぽい奥方はなんの意味があるの
少し暗すぎるきらいはあるが映像は良いのにね。
デビッド・ロウリーとかいう監督はとことんだめな人ですね。
上映館が少ない理由がよくわかりました。
オトコを捨てに行く旅
アーサー王のぐうたらな甥ガウェインがクリスマスの晩餐で緑の怪物と首を切りゲームにのってしまったことから、1年後首を切られるために旅に出る話。
A24らしく、無駄に重厚な音楽とアートな画作りで小難しそうに見えるけど、私は「どうしようもない道楽息子を次期継承者にするための身内のお節介」の話として捉えた。
アーサー王の息子は戦争で死んだ?っぽくて、次の継承者が甥しかいないのに毎日堕落した日々をダラダラ過ごしている上に、男性としての機能も不全で次の跡継ぎも危うい、このままガウェインに継がせるのは無理だと判断したアーサー王とその妹の策略が、あのゲームだったのかなと。あの手紙書いてたのガウェインのお母さんだったし。
ガウェインの想定される結末は3つあって、1つは本篇のラストちゃんと覚悟を決めて騎士になる、2つ目は夢オチで提示されたように途中で逃げ帰って王位を継ぐ、3つ目が普通にあっさり首を落とされて死ぬ。どの結末になっても王家にとって悪いことはあまりない気がして、2つ目の夢オチもとりあえず女の子は残ってるから王家の血統は途絶えないし、殺されちゃったら殺されちゃったで正当な理由をつけてちゃんとした別の継承者を探せる。まぁ、ガウェインは最良の選択をできたわけだけども。
ずっと適当に生きてきた男が試されて、最良の選択をする時、ガウェインは男らしさの象徴的な、つけてるとEDが治る魔法の腰巻きを手放す。この瞬間、『指輪物語』よろしく宝物を捨てに旅に出る話だったんだって妙に納得した。英雄譚も持ってないし男としても機能しない男が、一人前の騎士として"男になる"話じゃなくて、"男を捨てる"清々しい話だった。
【良かった点】 章ごとにお洒落すぎて読めない英語が表示されるだけで...
【良かった点】
章ごとにお洒落すぎて読めない英語が表示されるだけでワクワクが止まらないこの厨二的感覚をくすぐる最高な演出。まるでオープンフィールドRPGをしているような世界観と壮大な自然、そして仲間キツネ。斧を返しに行くだけなのにこんなにも胸踊る冒険は他にない。
【良くなかった点】
戦士、騎士の旅路ではないのでこれといって大きなアクションシークエンスはない。ただ歩き、走り、逃げ、隠れ、キツネと暖を取る。個人的には楽しめたが、派手な展開を期待すると若干ズレが生じる可能性あり。
ちょっと待った!はOKです。
原作未読。
名誉を手に入れ騎士と認められる為に旅に出るアーサー王の甥ガウェインの話。
クリスマスの宴の席で語れる武勇伝が無いと言ったガウェイン達の前に緑の騎士が現れて巻き起こるストーリー。
緑の騎士の首を落として1年後のクリスマスに緑の騎士との約束を果たすべく、緑の礼拝堂を目指すけど…騎士道精神とは何ぞやというものが問われている旅ということですかね?
まともに何かしたのは泉ぐらいじゃない?それも対価を気にしていたし。
辱めで少しは成長したっぽいけど、なんだかゆった~り薄暗~いところを旅して誘惑されまくって夢見てはいOK?
スイマセン、私にはこれの面白さが解りませんでした。
中世ヨーロッパの世界観を完全再現したビジュアルは素晴らしい。ただ物語自体は全く理解が出来ませんでした。
まず中世ヨーロッパの世界観を完全再現した画作りは本当に素晴らしかったです。
中世ヨーロッパの風景を実際に見た人は誰もいないけど、文献とか絵画からおそらくこんな感じだったんだろうなって誰もが思い浮かべる中世ヨーロッパの雰囲気を完璧に再現出来ていたように思いました。
ただ肝心の物語が全くピンときませんでした。
個人的に中世ヨーロッパの騎士道精神に対する知識とかが無いだけなのかは分かりませんが、何のために何でそんなことをしてるのかっていう主人公の動機とか目的の部分がいまいちよく分からなかったです。
そもそもグリーンナイトの首を斬ることに成功したら、1年後に遠方にある礼拝堂にわざわざ赴き自らの首を斬られに行かなきゃいけないってルール設定めちゃくちゃ過ぎるだろって思いました。
ラストもあり得たかもしれない未来を幻視したってことは何となく伝わってきましたが、結局何を言いたいのかは全く理解することが出来ませんでした。
NECK
今年のA24関連作品との相性はあまり良く無かったんですが、今作はA24にしては珍しいダークファンタジーということでそこそこ期待して観に行きました。
うーんスローな映画でした。130分よりももう少し短くできたんだろうなーっていう感じでした。
PG12の理由は概ね首が切り落とされるシーンなので過度にエグいものは無いのですが、ダークファンタジーと首切りが特段噛み合っていたのかというと微妙なラインでした。巨人が出てきた時は少しワクワクしましたが、VFXの出来自体は「LAMB ラム」と同じく普通のクオリティなので、これすごい!と思えるものではありませんでした。
後半はダイジェストの如く駆け足で、時が進みグリーンナイトとはを強く訴えかけてきますが、正直あまり刺さりはしませんでした。
パリコレ要素とかはよく分かりませんでしたが、そこ含めちゃうんだーと観終わって色んな感想を巡ってるうちにモヤモヤしてきました。
今年の残るA24関連作品は「MEN」のみですが、こちらもそこそこ期待しているので、期待に応えてくれる作品をお待ちしております。
鑑賞日 11/26
鑑賞時間 12:00〜14:20
座席 C-3
【"真の騎士に成るために、厳しき旅に出る。"一人の功績無き男が、真の騎士に成る姿を描いたダークファンタジー作品。作品全体を包む、重厚な雰囲気、意匠や衣装も見応えがある作品でもある。】
◼️クリスマスのパーティーに現れた"緑の騎士"は、王及び騎士たちに、闘いを求める。
老いたアーサー王の代わりに功績無きガウェイン(デヴ・パテル)は勇敢に闘い、騎士の頸を切り落とす。
が、"緑の騎士"は、一年後のクリスマスに又逢おう、と高笑いしながら去って行く・・。
◆感想
・これは私の勝手な解釈だが、"緑の騎士"を造り上げたのは、アーサー王の甥で在りながら、無為な日々を送る息子を想い、魔女とも言われた母親であり、旅の途中でガウェインに様々な試練を与えるのも、母親である。勿論、息子を立派な王に成らせる為である。
- 冒頭の手紙のシーンを観れば、分かると思う。-
・そして、ガウェインは馬と共に、一年後"緑の騎士"との約束を果たす旅に出る。
・道中、彼が経験した事。
それは少年(バリー・コーガン)に依る騙しであったり、
高貴な夫妻(アリシア・ヴィキャンデル&ジョエル・エドガートン)からの、誘惑であったり・・。
- 様々な試練を自らの力と意志で、乗り越えて行くガウェインの姿。-
・だが、漸く会った"緑の騎士"の前で恐怖心に負け、逃げ帰るガウェイン。だが、王になった彼に周囲の目は、厳しい・・。
◼️ここの描き方が上手い。
観ている側も一瞬騙される。
そして、シーンは再びガウェインと"緑の騎士"のシーンに戻る。
覚悟を決めた彼に"緑の騎士"が言った事。
それは、思いもよらなかった言葉であった。
<今作品は、一人の青年の成長譚である。
中世の衣装や意匠や雰囲気含めて、見応えがあるダークファンタジーでもある。>
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