「英雄譚ではない成長譚」グリーン・ナイト ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
英雄譚ではない成長譚
「アーサー王伝説」は
西洋の人々には膾炙しているフォークロアも
本邦ではやはり仔細に知る人は過少では。
かくいう自分も
「魔術師マーリン」や「騎士ランスロット」または
「聖杯」等の概略は認知も
〔エクスカリバー (1981年)〕を劇場で観た時に
ドラゴンなぞがしれっと出て来て
かなり驚いた覚えが。
彼の地では高評価も、
日本では興行的にもさっぱりだった記憶。
で、本作はその「アーサー王伝説」に纏わる、
また一つの物語り。
現時点での
IMDb6.6
Metascore85
と、とりわけ評論家筋の支持が高めなので
かなりの期待をしていたのだが・・・・。
『サー・ガウェイン(デブ・パテル)』は
『アーサー王(ショーン・ハリス)』の甥ながら
未だに「騎士」未満の分際で、
娼館に入り浸り自堕落な日々を送っている。
ある年のクリスマス、円卓の騎士たちが集う宴席に
全身緑色の騎士が突然現れ、
謎かけとも付かぬゲームを仕掛ける。
功名心にはやる『ガウェイン』はその挑発に乗り
緑の騎士の首を撥ねるのだが、
この世の者とも思えぬ彼は
自身の首を持ち上げ
一年後に自分が待つ所に来るように伝え立ち去る。
一年は瞬く間に過ぎ、
もっとも『ガウェイン』は未だ「騎士」にはなれず、
娼館での怠惰な日常も変わらず。
しかし、周囲からの期待もあり、
約束を果たすために覚悟を決めて旅に出る。
実際の旅程は馬に乗って六日ほどと、
かなり短いもの。
が、そこで主人公が経験するのは
夢とも付かぬ不可思議な出来事の数々。
ああ、やはりこれも、神話や伝承の類の映像化かなのだと理解するも、
そのエピソードの一つ一つが単体では完結していなところがミソ。
一見尻切れ蜻蛉に終わっている様にも見えるが、
綿密に絡み合い終盤へとなだれ込む。
とは言え、冒険譚ではあるものの、
オハナシだなぁと嘆息する数々ではある。
整合性が取れていないのが一番の難点で。
たぶんその時代には不可能であったろう
「カメラオブスクラ」を使った肖像画の作成などは盛り込んでいるのを始めとして。
終わってみれば、一人の男が
謙虚に自身を見つめ直すことでの成長譚。
岩に刺さった剣を引き抜く、とか
神が与えた試練を乗り越える等の華々しさはないものの、
王権神授に近い結果を得るための通過儀礼。
そして最後には
現在の同地の王朝に繋がり
イングランドは女王が戴冠することを示唆し団円を迎えるのだ。