最後の決闘裁判のレビュー・感想・評価
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むしろ予備知識なしの鑑賞をオススメ
世界史的な知識はほぼ必要ない。
劇中で説明のないことは「物語を理解する上で重要ではないこと」なので。
(もちろん知識があっても良いんですけど)
中世を舞台にした、私は「現代劇」として観た。
冒頭とラスト、同じ決闘シーンがこれほどまでに印象を変えてしまう。
さすが巨匠の手腕。
3者の主観で見ることで分かることがあると同時に、それで全てが明らかになる訳ではなく、4者目しか知らないこともあるという「余白」も織り込んである。
『真実』というものが実はいかに脆弱なものであるか…そんなことも感じてしまう。
誰が主人公?
あなたはどのキャラクター?
物語に関する事前情報は排除して、できればその全てをスクリーンで確認した方が、より堪能できる。
心からハッピーになれる作品ではないが、やはりこういう映画に出会うと、本当に休日が豊かになるなぁ、と痛感する。
ま、さすがにこれは長いけどね。
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匠の技、流石のリドリー師匠
リドリー・スコット監督作品と知って劇場で鑑賞。
感想はただただ上手いなと感嘆しました。
リドリー・スコット監督とクリント・イーストウッド監督は歳を重ねる毎に演出の腕が冴えているように感じる。
表現に無駄が無く、2時間30分近い時間も長さを感じなかった。
物語は100年戦争時代のフランスで実際に起こった裁判を基に映画化。
内容は親友同士だった二人が、それぞれお互いの持つ名誉や土地、妻を望み仲違いをして行きその果てに妻を犯される。夫は平等な裁判を求め神の審判による決闘裁判をという流れ。本当に罪を犯したのなら神が天罰を下し罪人は死ぬという解釈。キリスト教を信仰する中世ならではの裁判だ。
もちろん訴える方にもリスクはある、夫も死ぬかもしれないし、夫が死ねば訴えた妻も相手の名誉を傷つけ嘘をついたと処刑される。
本当にあったのか無かったのか、調べる術がない時代の事なので嘘なのか、妄想なのか判然としない。その事を上手く表現する為の演出が素晴らしかった。
物語の構成は主要三人のそれぞれの目線で同じ時間軸を追体験していく。その三者三様の描かれ方も本人が感じているように、同じシチュエーションでも微妙に変えていて、本人の思い込みやその時の感情が違う演出がなされていた。その事で真実なのか妄想なのかを感じさせる手腕は流石の一言。だからと言って結末があやふやではなく、しっかりと描かれているので安心して観て欲しい。あくまでも細かな要所要所で異なる描き方をする事で、三人それぞれが感じていた本心が浮かび上がる演出をしていると言うこと。
今年観た映画の中で一番の作品。
権力とプライド、、男はほんと馬鹿。
ジョディーカマーは「フリーガイ」観てからお気に入りです。可愛さと聡明さが今回の役にピッタリ。
基本アクションはあるけど、中世騎士従者の虐めと友情と三角関係の話なんで地味な映画です。
それぞれの思惑のズレを見せて真実を多面的に描く「羅生門」的なテーマでもないので3人それぞれの視点で描く意味あるのかな?と思った。
日本もそうだけどこの頃は夜這い、寝取られなどは割と一般的だったようだが、、、そんな状況下で女性が声を上げるというのが今回のテーマで、男2人は権力、プライドに囚われたバカな友人同士という役回り、、、
そう考えるとやはり3人それぞれ描く意味あったのかとまた疑問に思う。
その分短く出来たんじゃないかな。
美術も隙の全くない高密度中世ヨーロッパ、抑えたトーンがなぜかモノクロの黒澤映画を思い出した。
羅生門のように明らかに異なる事実では無く、微妙なニュアンスが異なる...
羅生門のように明らかに異なる事実では無く、微妙なニュアンスが異なる3人の回顧録。
見直す度に新たな発見が有りそうで楽しめそうですね。
カルージュに言われて2人がキスをするシーン、3回微妙に濃密さが違って面白かったです。
600年以上経っても変わらない女たちの生きづらさ
百年戦争という名は、戦端の開かれた1339年から、港町のカレーを除き、フランスがイングランド軍を大陸から駆逐した1453年までの期間が約百年だったことに由来し、19世紀に言われ出したそうです。なので、当時の人にとっては、目の前の状況に応じて断続的に色々な場所で戦っていただけのことで、長期的なビジョンなんてものはなかったはずです(そりゃそうだ)。元々英仏の王家はフランス国内の領土問題などから血縁関係も深く、相続争いに絡んだ王位継承やら領土を巡る勢力拡大闘争なども絡み、ぐじゃぐじゃだったようです。なにしろそもそもの戦争の始まりは、イングランド王のエドワード三世がフランス王位権を主張したことから始まったのですから。しかも、エドワード三世がそんなことを主張したのは、彼が征服するのに苦労していたスコットランドをフランス国王が支援したからというのですから、面倒くさい(そう言えば、『サー、と呼べ❗️』と激怒していたマット・デイモンが多くの兵を失ったと報告していたのもスコットランド遠征でした…この方面でもダラダラと小競り合い的な戦争が続いていたのですね)。
この時代は、ペストの蔓延や気候不順による作物の不作も頻発していたそうで、あの決闘はストレスの溜まっていた大衆から一定のガス抜きをする効果もあったのかもしれません。
※決闘を認めた国王シャルル6世(在位1380〜1422年)は、在位途中で精神に異常をきたし、異常をきたす前は親愛王、きたした後は狂気王、と両極端な呼ばれ方をしたとのことです。
人間は程度の差はあるにしても、どうしても〝見たいと思う現実しか見ない〟傾向があります。
第1章、第2章とも、それぞれの男にとっての見たいと思った現実。第3章は、そうであって欲しいという願望が男よりも少ない女の側から見た現実=ほぼ真実。
言い方を変えれば、男にとっては、ある程度願望通りの現実を生きることが可能であるが、女にとっては、そもそも願望などが通じるわけがないと始めから分かっている男優位の社会だからこそ、起きたことの現実を願望によって歪めることなく叙述できるということなのだと思います。
ラストの一見幸せそうなジョディ・カマーの首を右側に傾げた表情。しかしその裏には、この決闘から600年以上経った今日の社会でも、この構図がほとんど改善されていないということが、恐ろしいほど浮かび上がるわけで、〝(映画としては)結果オーライだったけど良かったね〟で簡単に済ますわけにはいきませんよ、という監督からのメッセージを強く感じることになりました。
余談
マイケル・クライトン原作の『タイムライン』も百年戦争だったと思います。そういう感じ、なんだかいいですね。
何言ってるかよくわからないかもしれませんが…
決闘シーンはかなりな迫力だけど…
三者三様の見方から描いた表現が面白く、この展開だと上映時間が長くなるのも仕方なし。旦那の友に乱暴されたと訴える人妻とそれを信じて死の決闘に臨む旦那、裁判判定は死の決闘へ。決闘して勝った方が正義、という時代は怖いがそれぞれが自己中な欲望に溢れ、証人もいないのだから実際にどうだったかは不明だよなー。生き残った者勝ち、な時代なんだな、と。それにしても人間って今も変わらないんだ、と痛感。
予備知識無く観たのが良かったです。羅生門的表現もあり引き込まれまし...
予備知識無く観たのが良かったです。羅生門的表現もあり引き込まれました。その分長尺でしたがさほど感じませんでしたね
役者がそれぞれ上手く特にジョディカマー、キリングイヴ以来好きになりましたが輝いてます。ベン&マットの久々共同脚本、共演が嬉しい😍面白かった。パンフ無くてがっかり
今でも日本人ができないこと
洋画を1日4本見るという私的には大偉業を果たした日曜日。あれから2日経ってようやく最後の映画のレビューを書きます。日に日にレビューを書くのに時間がかかっているな...。毎日何本も映画を見てはその日にレビューを書くレビュアーさんには、ほんと頭が上がりません。語彙力を分けて欲しいです。。。
ということで、この日最後に見た映画は「最後の決闘裁判」です。劇場で予告を見ているうちに面白そうだなと思うようになり、「DUNE 砂の惑星」を先に見ようか迷いましたが、こっちを先に鑑賞することに。期待値はそこそこ高め。最後に最高映画となるかな。
これは面白いじゃん!!!
物凄いクオリティと迫力。映画館での鑑賞が好ましく、圧倒的スケールに魅了された。これぞ映画だ!
百年戦争さなかのフランス。
騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻・マルグリット(ジョディ・カマー)が夫の旧友であるル・グリ(アダム・ドライバー)に暴行を受けたと告げるが、ル・グリは無罪を主張。やがて、カルージュとル・グリは決闘裁判を行うこととなった。
なんと言っても大迫力で圧倒的なスケール。
そこには完全に完璧に中世の世界が広がっており、これは本当に映画の世界なのかと疑いたくなるほど、リアリティ溢れた素晴らしいセットだった。今の映画技術はここまで凄いのか。タイムスリップとかのレベルではない。もう、あるのだ。これを映画館で見ずに何を見る。是非ともこの世界観を映画館で楽しんで欲しい。
圧倒的なスケールということで、やはり本作の見どころは臨場感溢れる戦闘シーン。
素晴らしい描写と完璧なカメラワーク。たまらなく興奮するし、たまらなく楽しい。この映画を見て思った。500年かけても邦画は洋画に勝てないと。IMAXあったのかな、あったのならそれで見たかった。ちょっと後悔。
そして緻密なストーリー構成。
正直、それいるか?必要か?と感じざるを得ないシーンや無駄に小難しい要素はあったものの、あっという間に153分は過ぎてかなり没頭できた。第〇章みたいにエピソードごとに分けるのは、現実に引き戻された感じがしてあまり好きな手法では無いのだが、今作はそれが見事に覆りエピソードごとにあらわになる「新たな一面」が、興味を引き立て全く飽きずにすごく楽しめた。
流石な役者陣。
マット・デイモンの中世ヨーロッパという時点で面白いが確定したような気がしていたが、やはり予想は的中。最高級のセットと構成に呑まれることなく、演技力を発揮させこの世界により一層深みを持たせる。3人共々、言葉に出ないほど最高の演技だった。
まぁ、飽きることはなく楽しめたのでいいかなとも思ったが、ここまで長くある必要は無い。
人によっては全くハマらない映画だろうし、万人受けはしない。予告とはイメージがかけ離れているし、このくらい長くするのならもうちょっとストーリーが欲しかった。長かった割には...という感じ。
という文を書いて投稿したと思いきや出来ておらず、1からの書き直し。映画.comさんよ、一時保存の機能そろそろ付けてくださいよ。アプリが落ちて書き直しって結構ショックなんですよ。
西欧文化の業
タイトル通り、最後の決闘のシーンは鳥肌もの。流石リドリー・スコット監督。
ヨーロッパの価値観を上手く描いていてとても見応えがあった。女は男の所有物であり、神の存在は自分を律する為のものではなくこれから行う悪行に対しての救済。
そりゃあフェミニズムという考えも生まれるよな。日本は男尊女卑なんて言われるけど思わず鼻で笑いたくなる。
キャリア史上一番アホな役のマット・デイモン
ベンアフの代わりをしっかりと演じきったアダム・ドライバー
思いのほか、悪役が似合っていたベン・アフレック(金髪もしっくりきていた)
等役者陣には満足
只、男女関係なく人間の業を描いた羅生門のプロットをわざわざ参考にして描くテーマなのかと言われると正直疑問だし、主人公の女性の常識が完全に現代人のものになっていたのでそこがまた違和感。
歴史物かと思いきや、ばりばりの現代劇としても観ることができる一作。
リドリー・スコットらしい重厚な映像と人間ドラマが主軸となっている作品。とはいえもちろんスコット監督のことだから、単なる歴史物は作らないだろうなー、と思っていたら、やはり痛烈な現代批判の視点をふんだんに盛り込んだ作品でした。
14世紀のフランスで実際に起こった事件と、それに基づいて行われた決闘裁判を扱っており、しかも原告側とその妻、そして被告側とが互いに食い違う証言をする、という物語構成となっています。このことから、『羅生門』(1950)と結びつける評論が多く、実際のところ本作がかの名作に影響を受けていることはまず間違いないんですが、実のところミステリー的な要素はそれほど強調されていません。そのため、巧妙に張り巡らされた謎やその鮮やかな解決を期待すると、肩透かしを食らったと感じるかも知れません。
その代わり本作が繰り返し強調しているのは、一番の被害者であるはずの貴族の女性が、法的にも社会的にも、徹底的におとしめられ、辱められる姿です。もちろん一連の描写を、中世ヨーロッパの価値観だから、で片付けることもできそうですが、作中の被害女性に対する扱いや心ない中傷(特に女性の義母の発言は、非常に心に突き刺さります)が、そのまんま現代の状況を踏まえていることは一目瞭然です。歴史物だから、で片付けようとしていた観客にスコット監督は鋭い刃を突き付けているのです。これは過去のことでも、空想上の物語でもないんだぞ、と。
実は史実の事件にはすごいどんでん返しがあって、それが「最後の決闘裁判』の真の意味につながっているのですが、その顛末は映画だけでなく、その原作であるエリック・ジェイガーのノンフィクション『決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル』を読むか、ネットの情報を調べてもらう必要があります。ただしそうした情報は、「絶対に」観賞後に調べることをおすすめします!
史実と比較することで、スコット監督が何を強調し、何をあえて描かなかったのか、そして本作を通じて何を訴えたかったのかが、より明らかになると思います。
襲う欲望、襲ってくる疲労
とりあえず見終わったあとの感想なんですが、長い!とにかく長いってのがありました。
物語は3章に分けられ構成されており、ジャン(マット・デイモン)、ル・グリ(アダム・ドライバー)、マルグリット(ジョディ・カマー)それぞれの視点で決闘裁判までの流れを見せていきます。1人あたり大体40分くらいの尺で展開されるのですが、2人目、3人目となってくるともうそのシーンは見たよって思ってしまいます。
ル・グリがマルグリットに強○をしたか否かがメインになってくるのですが、ル・グリがかなり身勝手な男で、男性の有害性がとても強調されているなと思いました。ただ、ジャンもジャンで粗暴な面が時々見えて、完全なる善には見えませんでした。
戦闘シーンはとても見応えがありました。ジャンvsル・グリの乗馬での槍の投げ合いや、剣での一騎打ち、肉弾戦と余すことなくパワープレイが楽しめます。他にも戦闘民との殺し合いも容赦のないものが見れて心躍りました。
ただ、いかんせん長いため、時々集中力が切れてしまう場面がありました。頑張れば120分切れた作品が作れただろうなと思うと、なんだか勿体無い作品でした。本国アメリカの興行もイマイチらしいのも頷けます。う〜ん…
鑑賞日 10/18
鑑賞時間 16:40〜19:25
座席 I-8
この傑作、大作ラッシュに埋もれてはいけない
これホントに実話ベースなの? あまりの面白さにグイグイ引き込まれてしまった。リドリー・スコット健在というか、凄すぎない。もったいないよね。大作ラッシュに埋もれてしまって。
寝取られた夫「ジャン・ド・カルージュ」、訴えられた男「ジャック・ル・グリ」、暴行を受けた妻「マルグリット・ド・カルージュ」それぞれの視点から物語を描く手法がとられている。当人たちが持っていた心情の差であるとか、認識の違いとか、思い込みとかが3つの視点ともなると、より鮮明に浮き上がってくる。この構成にリドリー・スコットの映像美が加わるからお目々パッチリで最後まで堪能しましたよ。
決闘裁判というだけで興味深々になるんだけど、中世ヨーロッパで女性がレイプされた事を公にすること自体がが信じられない。劇中でも危惧されていたように名誉殺人で葬られる危険性が十分あったと思う。
中世において、現代と異なるセカンドレイプがあることに驚いた。傍聴人がいる前で、オーガズムの有無を答えなきゃいけない。しかも尋問するのは、カトリックの聖職者。それに加えて、暴行罪で訴える根拠というのが、夫の所有物である妻が傷つけられたことへの損害だというんだから、これまたひどい。
決闘する当事者にとっては、生きるか死ぬか、名誉か汚名かの究極の闘いであるのに、フランス王シャルル6世は、はしゃぐほど楽しんでしまっているし、周囲を取り囲んでいる民衆は、貴重な娯楽として見物している。このコントラストがすごいよね。
この映画をエンタメとして楽しんでいる自分に批判する資格はないんだけどね。
長いのに気にならなかった
男性と女性では見えている世界が違うというのはよく言われていること。その違いを活かした物語は今までたくさん生まれている。1つの話が人によって見え方が異なるという作品が好きなので楽しみにしていた本作。
レイプされたと訴えた女性の夫、レイプしたと訴えられた男、そして最後に訴えた女性。3人の立場から見た「真実」を描いていく手法は、若干ありがちではあるが面白かった。同じシーンでも立場を変えると違って見える。実際に目線を変えたら撮影はし直さないとダメなんだろうな。しかも、微妙に行動に違いが出る。自宅で襲われるマルグリットの靴が脱げるシーンは、ル・グリの視点だとマルグリットが自分から脱いでいるように見えた。
全編通して感じるのが、当時の女性の扱われ方の酷さ。後継ぎを生むための道具として見られていたり、男の所有物を汚した罪としての裁判だったり。決闘裁判も夫が負ければ、その妻は炎で焼かれることになる。なんという扱い。
途中、暴れた牡馬が大事な牝馬に襲いかかるシーンも当時の女性の扱われ方を象徴するようでうまい不快さの演出だった。
中世のフランスが舞台なのに、現代にも通じるテーマが根底に流れている感じがして考えさせられてしまった。やはりリドリー・スコットは素晴らしい監督だ。
制作意図がわからない。二番煎じを作ってどうするんだろう。
芥川龍之介原作の「藪の中」を基にした黒澤明監督の「羅生門」と比較されるのは、仕方がないだろう。残念ながら、全ての面で「羅生門」に劣る。
唯一健闘しているは、中世フランスを再現した美術や衣装くらいか。
真実はひとつなのに、主観によりその捉え方が違うことを訴えていると思うが、「羅生門」の二番煎じを作ってどうするんだろうと思った。
舞台を現代に持って来ても、同様な作品は制作できると感じる。わざわざ、金の掛かる中世フランスを舞台にする意図がわからない。
主演俳優は良く演じていると思うが、肝心な脚本の人物造形が甘くては如何ともし難い。
歴史の勉強になったところで、プラス0・5を献上します。
これから鑑賞する方へ
戦闘場面が多く、血を見るのが嫌な人は避けた方がいいです。
なんと言っても決闘シーンの迫力が素晴らしい
戦闘シーンも沢山ある映画だが、最後の決闘シーンに手に汗握ります
決闘したのは名誉のためと言うより、意地?
3人の思いが同じなのか、違うのか、微妙なところでずれている
これは昔も今も同じこと
この映画、当時の衣装や武器、色々なシーンも映像的にも素晴らしくて目が離せませんでした
#MeToo
この映画の話題となる「脚本」について、「アカデミー脚本賞受賞作『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』以来のタッグとなるマット・デイモン&ベン・アフレックが脚本を執筆している」との触れ込みが多く見受けられますが、実はもう一人の共同脚本者ニコール・ホロフセナーこそ重要な点だと思います。
映画の冒頭はまず決闘当日、まさにその決闘が始まったところでタイトルです。その後、三つのチャプターで「カルージュ(マット)の真実」「ル・グリ(アダム)の真実」「マルグリット(ジョディ)の真実」が語られ、いよいよ「決闘」となります。
14世紀の話ですから、今の倫理観で見ると信じられないことだらけなのですが、先ず以て、この時代において女性には発言の場が殆ど許されず、また史実として、マルグリット視点の記録が全くないこともあり、マットとベンは「マルグリットのパートは女性が書くべきだ」と考えてニコールに依頼をしました。
(映画.comの特集には「さらにマルグリット役のジョディ・カマーも会議に参加させ、積極的に意見を反映していったという。」と解説がついています)
この映画のポイントとしては、そんな時代においてもマルグリットは「泣き寝入りしたくない」と声を上げる決意をする#MeTooの話です。
3人の「真実」が食い違いを見せる点が黒澤明監督の『羅生門』を例に挙げて比較されますが、そもそも、レイプをした男とされた女性の証言が食い違うのは当然です。
「そんなつもりはなかった」いや、「思うところ」はされた側にあるのです。しかし、この話は14世紀。
果たして結果はどうなることかは観てのお楽しみですが、決闘シーンはやはり大きなスクリーンでないとね。
巨匠リドリースコットの、圧倒的な映画づくり力が光る
誰かがこんなことを言っていた。文豪、三島由紀夫はなにも書いていないと。「白波の立つ海がみえた。沖合いの空には雲が白く輝いていた。」どこにでもある、なんでもないことを、語彙と考察、そして筆力でもって圧倒的なイメージに仕立て上げてて読み物にしてしまうのだと。
この映画もそれに近い。
ただの痴話げんかである。特筆すべきことのない出来事を、巨匠リドリースコットが、圧倒的な映画づくり力でもって、観客を埋没せしめる世界観をつくりだしてみせてくれるのである。
その意味で、本作品のみるべきところは、ストーリーは二の次にして、まずは「映画のもつ魅力」ではないかと思う。中世の質感。空気感。なにもかも粗削りで骨太のそれらを、細緻に仕組んで世界をつくる。本物以上に本物的だと言わせしめるレベルで。映画づくりの原点で頂点を極めんとするかのように。
俳優、筋書き、それらも大事だが、構成要素を掛け算で膨らませて映画の質をあげさせる力、それこそ監督の映画づくり力だ。で、リドリースコット、さすがの一言。ただの痴話げんかだからこそ、かえってわかりやすい。
ひとつ、羅生門的な展開は、あまり感心しなかった。場面の解釈に三者三様のずれがあってこその羅生門だと思うのに、肝心のずれがない。嘘のありかも明瞭。羅生門というよりはTENETテネットのマルチ視点にヒントを得たストーリーテリング、ぐらいの形容なら納得。
それとマッドデイモン。個人的に好きな役者なので、彼がパーフェクトに見える。あと味はジャン・ド・カルージュの正々堂々とした魂、それのみ強く印象に残った。直情的との解説が目立つが、そうだろうか。悔いのない正しい挙動をさっと取れるのは、徹底的に理知的でなければなせない技だと思う。だから私的にはジャン・ド・カルージュはありえないキャラである。だからヒーローに映る。
リドリースコットからは、グラディエーターのラッセル・クロウ、この最後の決闘裁判のマット・デイモン、そしてウォルフガング・ペーターゼン監督のトロイのブラッドピット。三人のヒーローが私の中にいる。
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