劇場公開日 2021年10月15日

「3者から見えた現実」最後の決闘裁判 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.03者から見えた現実

2024年7月24日
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鑑賞方法:VOD

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リドリー・スコット監督が、マット・デイモンとアダム・ドライバーの2人をW主演に迎え、14世紀の100年戦争最中のフランスを舞台にした、史実を75%は盛り込んだというた歴史ミステリー。フランス史上、最後の決闘裁判となった、姦通罪を巡る裁判で、決闘に至るまで過程を、決闘する当事者2人と恥辱を受けた妻の3者の視点から描いている。

これまでの歴史大作は、主人公を中心に見方や活躍の様子が、一方的に描かれることが多い。しかし本作では、一つの姦通という事実を、犯された妻の夫カルージュ、犯した夫の旧友ル・グリ、そして犯された妻マルグリットの三者三様の見方で、真実を語り進められていく。それぞれが、世間体も含めた事実を自分なりの解釈で吐露していく中で、3部に分かれて物語は展開。そして、ラストには、生死を賭けた決闘シーンへと繋がる。

戦地の友であった騎士カルージュとル・グリ。戦地から戻りカルージュは、領地の娘マグリットと結婚する。しかし、2人にはなかなか後継ぎが生まれずにいた。そんな中、夫や使用人が留守をした隙に、マグリットに恋焦がれていたル・グリが訪れて、姦通してしまう。それをマグリットは、夫が帰ると告白。夫は怒り狂う中、ル・グリを訴えるが、彼は無罪を主張、双方の言い分が食い違う中、国王は2人に生死を賭けた決闘裁判を許可する。勝者には栄光と生を、敗者には罪と死を巡る、カルージュとル・グリの壮絶な決闘が展開されていく。

しかし、本作の中で見えてきたことは、男の見栄と傲慢さによって、女を自分の所有物としてしか視ていなかったという悲しい過去の事実。マグリットがル・グリに犯された事実を夫に伝えた時の、夫の言い分と妻の言い分では随分違いがあり、また、ラストシーンの夫の勝者としての立ち居振る舞いも、妻の為ではなく、自分の威厳を保つ為の勝利であったことが覗える。そんな中、女は恥辱を受けても泣き寝入りする時代に、負けたら火炙りの刑を覚悟し、女としての尊厳の為に裁判に臨んだ、マグリットの誇りが伝わった…が、エンドロール直前に、子供を見ながらのマグリットの微笑みには、女のしたたかさも感じて身震いした。

背景や舞台となる中世フランスの騎士達の生活や戦闘の様子も、かなりリアルに作り込まれていて、きっとどこかな古城で撮影されたのであろうが、スコット監督のディテールへの拘りも強く感じた。また、ラストの決闘シーンでの壮絶なる死闘も臨場感があり、本物の決闘を観てイルカのようで、マット・デイモンとアダム・ドライバーの名シーンとなった。その中で紅一点、カルージュの妻を演じたジョディ・カーマ―の美しさが、むさ苦しい男たちの世界の中に、際立っていた。

bunmei21