「3人の視点を通して」最後の決闘裁判 tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
3人の視点を通して
事の真相を観客に考えさせる作りに脱帽です。
これぞ映画です。
中世のヨーロッパで「実際に起きた」とされている出来事ですが、言ってみれば昔話ではあります。
一方で描かれているテーマは非常に今日的であります。
それぞれの立場•視点を通して、一連の出来事を3回反復して観せられるわけですが、当事者それぞれ微妙かつ決定的に見方が違うわけです。
男性社会の構造的問題の煽りをモロに受けることとなる被害者の詰んだ状況、その切実さが、この構成により見事に浮き上がっています。
クライマックスの壮絶な決闘を終えて、一応の決着がつきますが観客としては釈然としないわけです。
そこで馬上で見せる「3人目」の表情が素晴らしい。
けしてハッピーエンドではない。
巨匠と脚本と名優達のアンサンブル、そして中世フランスのどんよりとした空気感や匂いまで伝わってくるかのような美術も素晴らしいです。
ただ宣伝に苦慮したのか、予告やポスター等を見てもあまり映画館に足を運びたくなるような期待感は伝わってこなかった。
今年公開の映画のなかでも上位レベルの作品であるのに。
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