「ストーリー性、テーマ性、社会性、映像美、音楽どれも最高。」最後の決闘裁判 和音さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリー性、テーマ性、社会性、映像美、音楽どれも最高。
ストーリーは1300年から語り継がれてきているだけあって重厚です。
でもそれは、根幹であって、今回の作品においては脚本がスゴイ良いですね。
大きな一つの流れを3つの視点から描いていて、観客は同じ場面を観ることになるのだけれど、視点の違い、解釈の違いにより若干映像に違いが出てきたり、新しいシーンが追加されたりすることで、どんな新事実が登場するんだろうかと息をのむ展開が続く。
同じ話を3度続けるという下手をすると飽きられる(涼宮ハルヒのエンドレスエイトのよう)がそこをシーンの追加によって話が変わってきたり、視方が180度変えてしまう。
それにより、目を離すことができない緊張感が生まれています。
テーマ性、社会性は観る人によって感じ方が違うかもしれませんが、『女性の強さ』みたいなものに感じられました。
リドスコの映像美。最後の決闘のシーンもさることながらキューブリックのバリーリンドンを彷彿とさせるカットの見せ方もカッコいい。そこにメタルギアでお馴染みハリー・グレッグソンの音楽が良すぎて花を添える。いや、添えるってレベルではない。同じシーンでも音楽が違えば緊張感が変わるし、最初は流していたシーンでも音が変わるだけで、ん? ってなる。
観客を引き込むように配慮されていて素晴らしいです。
三つの視点ではあるものの、三人ともに若干の語りの違いがある。そのにはそれぞれの性格や立場などによっての違いで人間味の深さと物語の深さを何倍にもしてくれる。
視線の意味は観せる順番によっても見方が変わるし、言葉は言う方と受け止める方で、意味が違ってくる。
ジャンとマルグリット、ジャンとジャック、、マルグリットとジャック、この関係性をそれぞれの真実が語られる中で、演技という枠と音楽、そして時代背景なども含めて考えた時に見えてきて、物語全体が見えてくるようになっている。
本当に脚本が凄すぎます。
リドスコこんなに演技を撮る監督だったか…と驚かされました。まだまだ現役。まだまだ色々な作品を世に残して欲しいです。
間違いなくBlu-rayが発売されれば、購入です。
最高でした。
21年10月23日 初
21年10月28日 改訂