裸足で鳴らしてみせろのレビュー・感想・評価
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音の映画であると同時に、足と手をめぐる映画
PFFスカラシップ作品を、久しぶりに観た気がする。躍動しエネルギッシュである反面、諸々ちょっとぎこちない。けれども、作品のぎこちなさが、主役のふたりのぎこちなさと相まって、絶妙な不穏さ、緊張感を生む。目を背けたくなるのに、見つめずにいられない。そんなざわつきを、ずっと感じていた。
父の廃品回収業を手伝いながら、先が見えない日々をやり過ごしているナオミ。ふとしたきっかけから盲目の養母・みどりと暮らすマキと親しくなり、彼女の願いである世界旅行を、マキと共に果たすことになる。
マキは謎に包まれている。有り体にいえば、嘘の匂いがまとわりついている。そして、みどりも、又そうだ。旅行の資金だと彼らに通帳を託すが、彼女の言うような額は残されていない。2人は身の回りの場所や物から、旅の音を作って彼女に届ける。彼女はテープの真実に気付いているのではないか。しかし、そんな様子は全く見せず、彼らの音に眼を細める。彼女の語る思い出は湖のように澄んでいるが、沼のように底が見えない。
マキに「別の泳ぎ方」があると教えられ、ためらいながらもマキ(の世界)に惹かれていくナオミ。彼は、父親の束縛から逃れる決心をするが阻まれ、もがいた末に一線を超えてしまう。それが皮肉にも、元いた世界に彼を引き戻す結果となる。
ナオミを引き戻すのは、女友達の手。一方マキとの日々は、彼らの足が印象的に描写されている。砂を踏みしめる足、ばたつく足、絡み合う足。(ちなみに、残されたマキは、手を負傷している。)足は本人の望むところへ移動させてくれるが、他者を移動させることは出来ない。手は他者との繋がりを生むが、それだけではどこにも行けないのだ。
投げ出されたマキの足に、思いもよらない音が被る。ナオミは、自分の足でどこに向かうのだろう。暴力的なのに、悲しい幕切れ。ちょっと呆然としながら帰路についた。あの足と大きすぎる音が、脳裡にこびりついて離れない。工藤監督の次の作品が、待ち遠しい。
音の映画
いい映画には必ずいい音があるのだけど、音が褒められることはほとんどない。とてももったいないことだと思う。この映画を観れば、映画にとって音がいかに大切かわかる。音が想像力を刺激し、僕たちを映画の世界に連れて行ってくれる。この物語は、音の持つ「想像力を刺激する」力に着目している。
目の見えなくなった母のため、男は古い録音テープを持って世界中を旅して入院している母に送る。台湾やイグアスの滝、サハラ砂漠、アンテロープキャニオンなど。しかし、本当は彼は街を出ていない。砂漠の音は陸上グラウンドの砂場で、イグアスの滝の音は近くの滝でといった風に、工夫して世界の音を作り上げていくのだ。観客はそのことをわかっているが、テープから聞こえてくる音に耳を澄ますと、たしかにそこには砂漠が広がり、巨大な滝があるかのように思える。テープの音のシーンになったら目をつぶってみるといい。世界中を冒険している気分になれる。
映画なのに、目をつぶった方がいいシーンがある。これはすごいことだ。
音
音を大事にしている映画として確実に記憶に刻まれる作品。ただし個人的には「長ッ!」という単語が端々に出てきてしまう鑑賞になってしまったのが残念でした。ただし、「しつこいなー」と思いつつも「あぁ、なるほど」と思える相撲シーンが園村さんだったのにはビックリでしたし納得でした(結構微妙に違う)。クイアな感じは個人的には苦手ですが、「ベイビーわるきゅーれ」の真逆にある映画として面白い立ち位置かなぁなんて思ったりもして。比べるのは申し訳ないとは山々思いますがあ
恋心
2人の青年の、友達になってからの段々と特別な思いに変わっていく様子が切ない。優しく触れたいが、気づかれてはいけないと思うのか、照れ隠しのように激しくじゃれ合う。まるでケンカのように。お互いに想っているのに決して踏み込まない。BLも多い近頃、逆に新鮮。
直巳の父親、ちょっと良くないですよね。息子大事はわかるけど、もう大人なんだから、もう少し自由にしてあげて。それに直巳の貯金からカードで勝手にお金を引き出すなんて、ありえない。子離れしなくちゃ。そんなことがなかったら、直巳があんな犯罪しなくて済んだのに。
別々の道に分かれていった2人のラストが印象的。
優しい嘘を鳴らすとき。
いや、良かったんですよ。すごい良いストーリーで役者さんも良くて、本当に良かったんですけど、その全てを台無しにし兼ねないプロレスごっこの演出が謎過ぎて、結果ちょっと残念な感じになってしまった。ほんとに残念。
2人の青年が出会い盲目の養母の為に世界の音を集める偽りの旅を始める。砂、風、水、光。縮まる距離。触れ合いたいけど素直になれない。どう接していいのか分からない。って、だからってあのぶつかり合いはないですよ。しかもこのシーンがくどくて、長い。本当にこれさえなければ。
佐々木詩音さんと諏訪珠里さんは初めましてでしたけど柔らかい雰囲気でプールのシーンは幻想的で素敵でした。
ミニシアター中心でわかりにくい点もあるが、高評価。
今年372本目(合計647本目/今月(2022年12月度)25本目)。
シネヌーヴォさんにいったのは初めてです。
現在の社会制度に疑問を持っている青年が、視覚で不自由な養母のために尽くす青年と出会い、人生の転機を論じる、という趣旨の映画です。
映画の趣旨として、いわゆるLGBT(Q)の論点があることはわかりますが、そのことは「表立って」は出ないというところです。
解釈がいろいろ揺らぎ、見る方によって感想がある程度揺れる一方で、逆に言えば(かなり大きな部分で)視聴者に任せている部分があり、感想がややバラバラになりやすいかな…というところです(換言すれば、ある程度のゆれはあるとしても、何が趣旨なのかということを定めにくい)。
※ 少なくとも、LGBTを扱った他の映画ほどに、LGBTの論点があることはうっすらとわかっても、その論点は「表立っては」出てこない。
今、リアル日本では徐々にLGBTなどの類型に関して少しずつ理解が深まっている中で、その考え方の理解の助けになるかなと思う一方、趣旨が一意か、それに準じるほど固定化されている作品ではなく、(大きな点ではわかれなくても)理解がバラバラになりやすいかな…というところは減点幅にならざるを得ないのかな…というところですが、この趣旨の映画は数が少なく、こうした話題に触れた映画は数が少なく、大きな傷があるわけではない以上、どこまで引くのかが微妙で、個人的には指摘はしても、減点はなしにしています。
(減点なし/他事考慮/シネヌーヴォさんの座席のとり方)
・ ミニシアターの中でも特に部屋が小さく、かつ「部屋の構造」がちょっとかわっているため、ネット上の予約の「座席の位置」とかけはなれていて、変な椅子の並べ方になっています(シネヌーヴォXで確認)。
普通は気にはしない範囲ですが、コロナ事情で、通常、超大作を除けば今でも一マス開けにされている方が多い中では配慮は欲しかったです(ミニシアターであるため、上記の事情と重なって、「座席の移動不可」も重なって、ある意味「三密」になっていた)。
編集をもっと緻密にやったら、すごい作品
PFFの作品で、公開規模も小さいのだがこの監督の才能に痺れるのは確実!
「一緒では苦しすぎるが、ひとりでは生きていけない」というトリュフォーの映画から着想されたらしいが、この主役二人の濃密な関係性をもう少し深掘りしてほしかったうらみは残る。
回りを芸達者な役者陣が固め、もう少しそこに甘えて次回は作家性を惜しみなく噴射させて欲しい。オーファンズ・ブルース未見なので、また観てみます。
申し訳ありませんが、何の映画かわかりませんでした…。
工藤梨穂監督、商業映画デビュー作ということで、おめでとうございます。
ところで、観る人に何を伝えたかったんでしょうか?申し訳ありませんが、意味がわかりませんでした。
レビュー不能作品ということで、あしからず。
#140
世界は広がっている。
ということを感じさせてくれる作品。俳優たちの顔や、繊細な芝居がとても魅力的でした。低予算で撮られていると想像しますが、この監督が大作を撮ったらどうなるのだろうかと、次回作にも期待します。
アンテロープの光を音で感じる
目が不自由な養母のために、世界旅行を音で届ける。これに関連するシーンは、とてもよかった。養母の美鳥は、カセットテープから聞こえる音を耳だけではなく、失われた視覚も含めて五感全てで感じる。風吹ジュンの演技はそれを観客に伝えている。
風吹ジュンが登場しない大半のパートは、ノイズだらけで不快でしかない。じゃれあいなのか、プロレスごっこなのか、変形BLなのか、「理由なき肉体のぶつかり合い」に何度も付き合わされて、辟易を通り越して怒りすら感じる。
こんな作家性ならば、封印しておいて欲しい。
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