「観ていて辛かった」ディア・エヴァン・ハンセン 熱帯雨林さんの映画レビュー(感想・評価)
観ていて辛かった
友人の一人も居ない思春期の高校生が主人公。唯一の友人と思っていたのも片思いだったらしく、親同士が友人なだけと突き放される。で、自殺した友人の両親の勘違いから始まって、主人公の優しさからその両親に作り話をしてしまう。また周りにも期待されて、どんどん嘘が重なっていく。それにつれて、周りを巻き込みコトがどんどん大きくなっていく。このままでは抜き差しならないことになってしまうからもうそれ以上に作り上げた嘘話をするのは止めてくれ、あるいは、そんなはず無いと思いながらも、主人公やあの両親のためにもこのまま嘘がバレずにエンディングを迎えてくれ、と観ていて辛かった。高校1年の前半は友人が一人も居なかったのを苦しく思い出しながらの鑑賞で、久しぶりに主人公に自分を激しく投影。
ところで、それぞれの思いを歌にして表現するミュージカルなのだけれど、音楽にセリフを乗せてしまうと、せっかくの心情吐露が軽くなってしまうのではないか。心配事などこの世に無いわ、皆んな仲良し、鼻歌交じりに気分もハッピーというストーリーなら音楽に乗せてセリフを歌ってもらえれば、こちらもあら楽しや、気分上々となるのだけれど、割とシリアスな話の展開だし、ああいう歌仕立てのセリフはどうだろう。しかし、音楽提供者が共通するグレイテストショーマンも割とシリアスな話だが、あちらの歌はノリノリで気分良く観られたので、単に私の受け止め方が違っているだけなのかも。今回の映画は主人公への感情移入がすごく、ハラハラするばかりだったせいかしらん、音楽にノれなかったわ。ただ、歌仕立てのセリフも違和感まではなかったので、ミュージカルとしても出来は良かったのだと思う。
このまま進んで、どう始末をつけるのかと心配したが、最後も万歳三唱の無理やりなハッピーエンドでなく、ほろ苦さを残しながらのもので、ストーリーに似合ったエンディングで良かったな。星4つか5つで迷うところだが、鑑賞中が苦しかったのと、ミュージカル仕立てでなくてもと感じ、4つ。グレイテストショーマンと違って心に残る曲が無しだったのも残念。