「理想の自分」ディア・エヴァン・ハンセン ハムカツ太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
理想の自分
この物語を一言でまとめるなら、「エヴァン・ハンセン成長物語」かなと。
今作はコナーの死をきっかけに、エヴァンが成長していく物語に感じました。エヴァンがついてしまった嘘、私はありだと思います。確かに嘘をついた点についてはよくないことである、しかしこの嘘は、友達がいないというコナーと似た境遇にあったエヴァンであったから良かったと。これまでコナーの件で家族の関係は芳しくなかったが、嘘を聞くことで、コナーに対しての見方が少しづつ変わり、悪い思い出から、いい思い出に変わっていく、そのゆっくりと心が溶かされていくような描写がとても美しく思えました。
そして、スピーチのシーン。このスピーチの内容が作り話であっても、関係はないと思います。それによって、多くの人の心は動かされ、少なくともコナーを中心とする周りの見方は変わったと思います。それに、物語の内容も、エヴァン自身のなりたい自分像であり、あそこまで拡散されたのは、少なからず共感できる部分が多くあり、この感情は大切であると感じた人が多かったからだと。
そして、エヴァンの嘘によって、ゾーイら家族の心は溶かすことができたが、エヴァンの心はまだ癒やされてはいない。それを、母であるハディによって、溶かされていくシーンにはグッと来るものがありました。母は偉大、、、
そして、最初は自分の話すことに自信を持てなかったエヴァンが、終盤の記念園のシーンでは、ごく普通に話せるようになっている。エヴァン自身が、コナーとの問題に向き合えたことにより、成長を見せた。小さな手がかりから、コナーの歌を創作するシーンでは、なんだか真剣でありつつもどこか楽しそうに見えました。
そして、この映画のテーマは「誰しも悩みを抱えている」であると私は思います。それを隠すことが上手いが苦手かという違いだけで、人は悩みと戦い生きていくしかなく、それを補うため友人、家族と乗り越えていくものだと感じました。