「プラットの歌声とエヴァンの嘘に包まれて過ごす至福の2時間。」ディア・エヴァン・ハンセン きんぴらさんの映画レビュー(感想・評価)
プラットの歌声とエヴァンの嘘に包まれて過ごす至福の2時間。
予告映像に感動させられたため映画館へ足を運んだ。
ミュージカルとしては全米で社会現象にもなった名作とのことで、元々期待値は高かった。
ストーリーはシンプルでわかりやすい。友人では無かった人間が死に、その家族から親友と勘違いされて「親友だった」と嘘をつき、嘘は徐々に肥大して本人でも止めることができない領域に達する。その嘘をどう扱うかでいろんな作品が生まれるわけだが、本作は——。
心に病を持ち、コミュニケーションが苦手なエヴァンの孤独が序盤から心に刺さる。つきたく無かった嘘をつかざるを得ない状況に追い込まれたエヴァンに気の毒な感情を抱いていたが、徐々に嘘を当たり前のようにつき始めた時は少し心が痛かった。だけれど、終盤のエヴァンの行動は、明らかに彼の成長を証明していた。
本作で避けて通れないのは、歌だ。映画でもミュージカル調に仕上がっていて、とにかく歌が多い。突然歌い出すものだから映画としてではなく、ミュージカルとして鑑賞した方が違和感なく楽しめると思う。
特に主演のベン・プラットはミュージカルで初代エヴァン役を勤めた実力の持ち主。最初に歌うのが彼なのだが、「うっま」と声が出そうになった。しかしそれも束の間。数秒後には聴き入って心ここに在らずだった(いや、あったのだけれど、他のことを考えられなかった)。
終始、素晴らしい歌声を披露してくれる。
総じて素晴らしい出来だった。特にエンドロールの後に流れたメッセージがこの作品の本質であり伝えたいことなのだろうと、得心がいった。ぜひ最後まで座席に座っていて欲しい。