「私はいったい、何を観賞しているのか。 これじゃ、つぶやきシローじゃなくても呟きたくなるわ…。」私はいったい、何と闘っているのか たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
私はいったい、何を観賞しているのか。 これじゃ、つぶやきシローじゃなくても呟きたくなるわ…。
スーパーマーケットに勤務する万年主任、伊澤春男の日々の闘いが描かれたヒューマン・コメディ。
主人公である伊澤春男を演じるのは『猫の恩返し』『ビリギャル』の、「TEAM NACS」のサブリーダー、安田顕。
春男の妻、律子を演じるのは『20世紀少年』シリーズや『八日目の蝉』の、元グラビアアイドル小池栄子。
映画.com様のオンライン上映会に当選したので、一足早く観賞させていただきました!
映画.com様、ありがとうございます🙇♂️
しかし、レビューは正直に書かせていただきます。
まず、非常に気になった点。
春男は中小企業のスーパーマーケットで、万年主任という立場に甘んずる男。
大学生?と高校生の娘、そして小学生の息子、3人の子供のパパである。
中小企業の小売店、しかも主任。
こうなると当然給料はかなり厳しいものだと推測される。3人の子供と妻を養うため、少しでも待遇の良い店長になりたい。こういう心理が働くというのはすご〜くよくわかる。
しかし、春男の生活を見てみると、まず住宅は東京郊外とはいえ立派な一軒家。しかも新築。
そして家には18万円のソファ。
さらに水屋には1万円のブランデー。
…春男の待遇に比べ、生活水準高すぎへん?
伊澤家の収入と支出を推測すると、こんなに生活の水準が高いわけないと思うのです。
もちろん、春男の実家が凄い金持ちとか、そういう可能性はあるわけだが、作中にそういう描写がない以上その可能性は省いて考える。
スーパーの主任でこんだけ良い生活できるなんて、作品の舞台は日本じゃないのかな?
これ、重箱の隅をつつくような指摘だと思われるかも知れないが、実は凄〜く重要。
庶民の生活を描いた作品でありながら、庶民の生活にリアリティがない。
こういったジャンルの映画でリアリティがなくなると、ただのおままごとのような、弛緩した物語になってしまう。
はっきり言って、真面目に見てられないよこんな映画。
まぁ、リアリティが無くったってコメディとして大笑い出来ればそれはそれでオッケーなんだけど、まぁ本作は笑いどころがない。
本作は芸人・つぶやきシローが原作ということもあり、春男のキャラクター性もつぶやきシローに近く、終始彼のモノローグ(心の声)が挿入される。
この本作の構造上、何かおかしな展開、例えば店長がカラオケで「赤いスイートピー」を歌いまくるとか、そういったことが起こった時に、春男のツッコミがモノローグとして入ってしまう。
このツッコミはほとんどコント番組のそれであり、そりゃテレビのコントならそれでいいんだろうけど、全然映画的な笑いではない為、クスリとすることすら出来なかった。
映画における笑いに重要な「間」と「裏切り」がないんだよなぁ…。
あとは、物語の起伏のなさが致命的。
開始1時間は全く物語が動かないため、時計を見て絶望的な気持ちになれる。まだあと1時間もあるのかよ…。
中盤が過ぎたあたりから物語は動き出す。
春男と律子の秘密が明らかになる辺りは、「おおっ。そう来たか。」という驚きもあったんだけども、いかんせんそれまでが退屈すぎたのでいまいち乗り切れず…。
もっと沖縄パートの時間を伸ばして、物語を盛り上げることも出来たはずだと思うんだけど。
この沖縄パートが中途半端すぎて、ただただ撮影班が沖縄に行きたかっただけなんじゃないかと訝しんでしまった。
あと、本作のキーパーソンである金城正志。
この人に伊藤ふみおというミュージシャンをキャスティングしたのは、ちょっと上手くいってないんじゃないか?
金城さんが凄い色気のある人で、それに春男が気圧されてしまうというやり取りがあったんだけど、どう見ても普通のおじさんなんだよね。
例えば金城さんが竹野内豊だったり、反町隆史だったりしたら、たしかに春男の気持ちもわかるんだけど、どう見ても普通のおじさんなんだよね…。
他にも細かいところで文句つけたくなるところはあるんだけど(スターの例えがさまぁ〜ずって…。いやそりゃさまぁ〜ずは嫌いじゃないけどさ。スターっていうキャラクターでもないでしょう。そんなところで原作者の顔を思い出したくないんだよ。)、キリがないのでこの辺で。
良かった点。
小池栄子は相変わらず素晴らしい✨
ちょっと胸元が緩い服を着ていたりして、ムフフな気持ちになれる💕
ファーストサマーウイカが想像以上に良い!
というか、全くウイカだと気が付かなかった。スタッフロールで普通におどろいた。
バラエティのイメージが強い彼女だったけども、全然役者としてもいける👍
個性派女優としてブレイクする、かも?
春男の生活水準にはリアリティがないが、スーパーマーケットの人間関係、特にパートさんの感じはめっちゃリアル。
これだけリアルな職場が描けるのに、なぜ家庭描写は盛ってしまうのか。実に勿体ない。
総評としては、個人的に好きじゃないタイプの映画。
ヤスケンのファンだったら満足出来るだろうし、この手のコメディが好きな人は結構多いとは思うんだけどね。
…邦画って「血は繋がってないけど、俺たちKAZOKU👨👩👧」映画多すぎじゃない?😅
こういう映画作ると助成金でも貰えるのか?
生活水準の件、おっしゃる通りだと思います。
5,000万円の1/10にも満たないとか言ってたので、年収500万円以下。それであの余裕(自宅待機中もさほど経済的な切迫感が描かれてない)っぷり。
収入の金額的なことはともかく、スーパーの従業員との生活感の共感とか店長への昇格、すなわち給料アップへの渇望という部分に対するリアリティの欠如は、この映画の見せ方としては、ちょっと杜撰とも言えると思います。